「生命科学アカデミー」長崎大学・北先生に聞く1

その昔、酸素は生き物にとって有害だった。思わずすごいと言いたくなる「ミトコンドリア」の働き

その昔、酸素は生き物にとって有害だった。思わずすごいと言いたくなる「ミトコンドリア」の働き

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近年、健康・美容・活力をサポートする成分として注目を集めている「5-ALA(5-Aminolevulinic Acid:ファイブアラ)」。この5-ALAを長年研究してきた長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科長の北潔(きた・きよし)先生に、その効能や可能性について教えていただきます。

第1回目は、北先生の研究内容や、5-ALAを作り出すミトコンドリアの働きについて教えていただきます。聞き手は、番組のホストを務めるHIROCO学長です。

北先生(左)とHIROCO学長

「5-ALA」は太古から存在する天然のアミノ酸

HIROCO学長(以下、——)まずは、北先生の専門領域や研究内容について教えてください。

北潔先生(以下、北):私の専門は、生物を化学で理解する「生化学」です。感染症の病原体の代謝やそれをターゲットにした創薬の研究をしています。

元は薬学部出身で、大腸菌の研究をしていたところ寄生虫のおもしろさに気づき、30歳頃から寄生虫の研究をスタートしました。あるとき、国際医療の共同研究のリーダーとして1年半ほどパラグアイに滞在する機会があり、薬が開発されていない寄生虫の病気がたくさんあることを知りました。

現在は、基礎研究と応用研究の両方、国際保険学やグローバルヘルスといった観点で研究を進めています。

——先生は、天然のアミノ酸「5-ALA(5-Aminolevulinic Acid:ファイブアラ)」の研究もされていますよね。5-ALAは、地球が生まれた頃からある成分で、感染症の治療に役立ったり、生き物にいい影響を及ぼしたりすることがわかっているとか。

北:5-ALAは非常にシンプルなアミノ酸で、太古から存在していたことは間違いありません。アミノ酸=タンパク質の構成成分と考える人が多いかもしれませんが、5-ALAは、タンパク質の構成成分ではないんです。

——5-ALAは私たちの体内で生成されるのでしょうか?

北:毎日、ミトコンドリアというところで作られています。ミトコンドリアと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、ピーナッツのような縦長の形状だと思いますが、実際の形は異なります。

どういうことかというと、ミトコンドリアは非常に速いスピードでくっついたり離れたりするんですね。専門用語で「フュージョン」「フィッション」などと言い、この動きが実は大事。このプロセスに関わる遺伝子に変異が起こると、病気になることがわかってきています。

生命維持に欠かせないミトコンドリアの働き

——ミトコンドリアは「細胞のエネルギー生産工場」とも呼ばれていますよね。なぜ、細胞内でエネルギーを生み出す役割が必要だったのでしょうか。

北:生物の進化の話になってしまいますが、太古の地球には酸素がなく、最初の生物は酸素に頼らず生きていました。

なので酸素は、生物にとって有害なものだったのですが、太陽の光と水から酸素を作り出す「光合成細菌」が生まれ、地球上に酸素が充満しました。このとき、生物は生き残るために、有害な酸素を無毒化するシステムを体内に作る必要があったんです。

やがて生物は、酸素を無毒化するシステムを作り上げるだけでなく、酸素からエネルギーを作り出す生物を体内に取り込み、生き残ることに成功しました。この“酸素を無毒化してエネルギーを作り出す生物”こそ、ミトコンドリアなんです。

——私たちが地球で生きるためには、ミトコンドリアが欠かせないということですね。太古の生物にとって酸素は有害だったようですが、現在は有害ではないのでしょうか?

北:いいところに気がつきましたね。酸素は、人間によって毒にもなり得ます。そのため、私たちの体内には、酸素を解毒するシステムが備わっています。

実は、この解毒システムの一部にも、5-ALAが関わっているんですよ。簡単に説明すると、5-ALAが8つ集まった「プロトポルフィリンⅨ」という物質に鉄(Fe)が入ることで合成される「ヘム」が、DNAや脂質損傷に関わる有害な酸化ストレスを速やかに解消するために働きます。

5-ALAのより詳しい仕組みや働きについては、次回お話ししましょう。

(第2回へ続く)

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