もっと知りたい、アンチエイジング vol.6

会社の中で「長生きする人」ってどんな人? 老化を加速させないポイントは?

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老いを“病気”ととらえ、適切な選択をすることで老化は新たなフェーズへ——。今、世界中で「長く健康に生きる」ための研究が行われています。

「健康長寿」を目指しながら、年齢を巻き戻す「エイジングケア3.0」という新しいフェーズを提案する「fracora(フラコラ)」は、運営するYouTube番組「生命科学アカデミー」で、最先端の生命科学の知識を紹介しています。

今回は「老化」の秘密に迫るため、近畿大学の客員教授で、日本抗加齢医学会理事長の山田秀和先生をお迎えし、アンチエイジングについてたっぷりと語っていただきました。

(左から)山田秀和先生とHIROCO学長

健康寿命の延長には運動が重要

──先生は、老化ケアには4つの要因があるとおっしゃっています。「運動」、「食事」、「心」、そして「環境」。この4つが大きな要因だということですが、中でも「運動」についてお話をうかがいたいです。

山田秀和先生(以下、山田):「運動」が大切だと広く知られるようになったのは、2000年度から2012年度まで行われていた「健康日本21」(21世紀における国民健康づくり運動)の影響が大きくあります。このとき、日本の厚生労働省は一生懸命「(健康寿命において)何が重要か」を調べました。その結果「運動をすることが健康寿命の延長にすごく重要」という結論がでたのです。

僕たちの立場としては、健康寿命を延ばすということは、老化を遅らせるということとイコール。なので、運動をしっかりしましょう、そのことが一番大事ですよ、とお伝えしています。加齢とともに、フレイルやロコモといった問題も起こりやすいですからね。

──「フレイル」「ロコモ」とはどういう意味ですか。

山田:「ロコモ」は、なってしまったあとの結果です。なってしまったものを戻すのはなかなか難しいんですよ。「フレイル」は、そこにいくまでの過程という概念。なので、フレイルには介入することができるというのが、いまの立場です。

いずれにしろ、筋肉から出るいろんな「サイトカイン」という化学物質が、体全体の免疫だとか、体全体をコントロールしていて、結果的に健康寿命にすごく影響しているということがわかってきました。

だから、運動がすごく重要なのです。「歳がいっても一万歩あるくことが必要かどうか」ということには議論があって、逆に膝関節を壊すこともあるので、まずは8000歩だとか、あるいは1日少なくとも1時間くらいは歩きましょうという説もあります。

同じ歳でも、健康状態は人によって違うので一概には言えませんが、最低限自分が行動できるものを維持していく。それはすごく重要だと思います。

──どの筋肉を動かすのが効率的かというのはありますか?

山田:太ももの筋肉は効率よくエネルギーを消費しやすいので、いま推奨されています。それから、骨盤底筋群などそういう部分ですね。つまり下腹部の筋肉を動かすことは、カロリー消費も比較的簡単に上がるので、便利だと考えられています。

◆まとめ
・老化を遅らせる4つのケア
 1.運動 2.食事 3.心 4.環境
・運動をすると、筋肉の細胞から「サイトカイン」が発生し、免疫をコントロールして健康寿命に影響を及ぼす

スイッチを入れる!「早寝」「早起き」「朝ごはん」

──先生は、老化のペースを遅らせるという意味で「心」も大切だとおっしゃっていますね。

山田:アトピー性皮膚炎などの治療をしていると、どうしても(患者さんに)心理的なストレスがかかります。そこで私たちは患者さんに「早寝」「早起き」「朝ごはん」と話すんです。この話には2つのポイントがあります。ひとつは、体のなかにある「体内時計」のことです。体内時計は大体1日が24時間、あるいはそれをちょっと前後するくらいで刻まれています。個々の細胞に落としていくと、細胞のなかには「クロックジーン」という時計の遺伝子があって、それが細胞のいろんなことを決めているとわかってきました。

その時計が変化するわけですが、バラバラで動き出すと調整が取れないわけですね。だから、1日のなかで「ここがゼロ」という特定の場所を決めてやることが重要なんですよ。

──リセットですね。

山田:そのリセットをするためにいい方法と言われていることが、いま2つあって、ひとつは「光を目から入れる」ということらしいんです。

──それは、朝の光ですよね。

山田:朝の光をしっかりと目に入れることがよいと言われていて、これがひとつめです。例えば、朝起きたらカーテンを開けて光を見ましょうとか、そういうことが重要なんですね。もうひとつ面白いことがわかっていて、実はそれ以外に「朝ごはんを食べて胃を動かす」が大切なんです。それこそ「腹時計」です。腹時計を動かす。その2つが、細胞の時計をよく動かすことができるとわかってきました。

──全身の細胞に、それで指令を出すわけですね。

山田:そうすると、「いまがスタートですよ」ということがわかるわけですね。最近は、食事の時間を16時間空けましょうとか、よく言われていますよね。ファスティングというものもあります。それらは確かに有効だけれども、一種のショック療法にあたります。それよりも、スタートの時間をいつにするかということが重要なんです。

一般的な、生物学的な特徴としては、朝、太陽があがってきたら起きて、そして光を見て、脳側から活性化の指令を送って、ひょっとするとACTHホルモン(副腎皮質刺激ホルモン)が影響しているかもしれません。そして、そのあとにご飯を食べて胃を動かすことによって、グレリン(食欲ホルモン)だとか、いくつかのホルモンが産生されて、それがいろんな時計たちに影響しているんじゃないか。こういう風に考えられています。

──これは「未病」に繋がるという話ですね。

山田:ですよね。だから、僕たちはそういう立場で、できるだけ疾患を起こさない。つまり、老化関連疾患を起こさないようにしようじゃないか、と。だから、「早寝」「早起き」「朝ごはん」によって、クロックジーンそのものをレギュレーションしていく。そういう立場でいます。

──あまり夜更かしはしないほうがいいとか、どれくらい寝たらいいかという質問をされることもあるかと思いますが。

山田:一般的には7時間から8時間くらいというデータで寿命延長が起こっている。寿命の長い方の場合のデータで出ていますので、まあその辺がひとつの基準です。ただ、それはその個体、その個体によってそれぞれ違うということもわかってきているので、一概にそう簡単にはいかないです。最近は、腕時計などでレム睡眠、ノンレム睡眠などが見られるようになったので、僕も愛用しています。ただ、いまはそれで確かな答えが言えるというところまではいっていないと思います。若々しい肌でいるためには、適切な睡眠時間を十分にとらなければいけないとか、そういうことはもうだいぶ出てきていると思いますが。

──十分な睡眠をとることは、どんな美容液よりもいい効果があるという研究があったりもするくらいですからね。日頃から、自分の健康のためにも美のためにも、24時間のなかで自然に合わせてしっかりとスイッチを入れていってあげるということが大事なわけですね。

老化を遅らせるために考えたい「環境」について

──老化を遅らせる4つのポイントをうかがってきましたが、先生のなかではあと2つ追加したいポイントがあるということですよね。そこをうかがっていきたいと思います。

山田:「環境」という領域はすごく大きくて、「何が環境なのか?」という話になります。「遺伝子か、環境か」という意味で使っている場合には、DNAと外部環境の話になります。そういうもの(外部環境)を「エクスポソーム」という概念で呼びます。外部環境の積数などと言いますが、いままで蓄積してきた全体像を見るわけです。今度は、その「環境」の中身を詳しく言います。例えば、空気や温度、湿度、光、それに人間関係なども環境にあたりますね。それから、面白いことがわかっていて、「教育レベル」や「収入」も老化寿命と関係しているということが研究で出てきているんです。

──これは、聞いたことがない方が多いんじゃないですか。教育と収入ですか。

山田:これは社会学的なグループで問題になっています。G20とかG7というところに議論が出てくるものとして、我々としては「老化関連」という概念を、老化はすごく重要な疾患の一部だと言っています。ただ、いわゆる経済的な問題だとか、そういうことは確かに影響しています。例えば日本が鎖国をしている時代の、日本の平均寿命や身長などの問題と、それから開国したあとの平均寿命は明らかに差が出ています。それは、寿命が日本の経済力とも関係しているし、さらに平均身長とも関係するからです。

例えば、いま、イタリア人の平均身長が止まったり、日本も平均身長のピークが下がりだしたりしているんですよ。これは、国家の経済活動度と関係しているというデータが出はじめているので、我々はすごく心配しています。

──なんと、経済成長に身長が関わっている! これは、健康長寿もそうですが、成長と言うか、人間の生命そのものに関わっているということですか。

山田:身長は栄養と関係しますので、栄養と身長の初期の加速の部分の影響が大きいのではないかと思われます。そこがへばると、基本的にはその先も当然へばっていくので、全体像に影響するのではないかと思っています。問題が起こってくるのは50年後の世界ですけれども、そういう問題が起こってくる可能性が高いと考えて、心配しています。

──老化はすごく奥が深いですね……。単純に、食事と睡眠と運動をバランスよくやっていればいいということでもなくて、もう経済など全体を含めてなんだということがわかってきているのですね。

山田:だから、以前お話しした「0歳からのアンチエイジング」というのはそういう意味なわけですよね。適切な出生環境があって、例えば女性が適切に守られているとか、そういうことがすごく重要なのです。そのときの、(母親の)ストレスや生活環境、収入、栄養、そういうこと全部。それが結局、受精卵が生物として、こどもとして生まれて、そのこどもをどう育てるか、そのこどもたちが大きく成長したあとで老化にどう対応していくか、ということに影響する。そして、最終的な寿命が決定しているのではないか。どうやら、そういうことのようです。

◆まとめ
・経済成長、さらに平均身長が健康寿命に関係している

会社の組織の中で長生きする人は……「エグゼクティブ」!!

──会社の組織のなかでは、どういう人が長生きするのですか。

山田:これはなかなか厳しい話になりますが、人間ドックのデータが出ています。エグゼクティブと普通の社員を比べると、エグゼクティブのほうが、一般的にデータの内容がいいんです。彼らの唯一のものすごく悪いデータは、ストレスデータです。エグゼクティブはストレス値がものすごく悪い。ところが面白い研究があって、いわゆる決定権がある人のほうが、決定権がない人よりも寿命延長に影響するというデータがあります。だから、大きな会社に勤めるよりも、個人で働いて決定権を持つほうが、自由度が高いのではないかと考えられています。

──あとは、先生は常にどんな環境においてもポジティブシンキングであることが大切とおっしゃっていますよね。

山田:それはすごく重要で、物事を前向きにとらえていくことが結果的には幸福であるという話になります。幸福に生きていくことが、結果的に健康寿命になって、PPK(ピンピンコロリ)を目指すことになるのではないでしょうか。そういうのを目指すのが、一番いいと思います。

笑うと免疫が上がる!口角が上がると脳のストレスが下がる

──あとは、笑うことがすごくいいと先生はおっしゃっていますね。

山田:これはいくつかの有名な仕事(研究)がありますが、笑うと「ナチュラルキラー活性」が起きて免疫に影響します。だから、ガンなどが起こりにくくていいんだ、という話ですね。

同時に、私たちは「アハハ」と笑うと口角が上がるんです。口角が上がると、脳の中枢のストレスが下がるというデータがあります。そうすると、いわゆるうつ病だとかが起こりにくい。だから、僕たちは疾患がある方は笑って帰そうと。「早寝・早起き・朝ごはん、笑って帰そうアトピー外来」とスローガンを言って、仕事をスタートさせるときもありました。患者さんのもとに医者が行くときは「笑って帰そうね」と言い合って。そういうことが治療法とまで言えるかわかりませんが、ひとつの対応かなと考えています。

──表情筋を常に動かしていると、脳にもいいのでしょうか。

山田:基本的には、表情筋は深部筋と言われていて、直接脳の中枢神経系に働いているので、非常にダイレクトに脳に働くと考えられています。

◆まとめ
・早寝・早起き・朝ごはん、「笑い」が重要!
 ポジティブシンキングは健康寿命を延伸させる
・「笑い」は免疫に影響する。口角を挙げるだけでも脳の中枢のストレスが下がる

■動画で見る方はこちら

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