アラフィフ作家の迷走生活 第46回

某整形外科で秘部を診断してもらったら

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小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。前回、自分の秘部の状態が気になり、美容整形外科を尋ねた森さん。医師に告げられた診断は、ショッキングなものでした。

*本記事は『cakes』の連載「アラフィフ作家の迷走性(生)活」にて2019年9月14日に公開されたものに一部小見出しなどを改稿し掲載しています

前回、自分の秘部がどういう具合なのか確認するために某美容整形外科を訪れた。診察台で、婦人科検診のように指を入れられること数秒。さて、私の秘部のランクはいかに。

私、貧乏でもなければお金持ちでもないけれど

「年齢相応といえば相応ですけど、男性側はやっとイケるレベルですかね」

私、これにはショックが隠せませんでした。「年相応? 本当に年相応ですか?」と、くやしまぎれに突っ込みを入れてしまい、医師も少々ビビったのか「まあ、皆さんこんなものですよ」と言うではないか。

で、私の秘部で男性が心置きなくイケるようになるには、あれとこれとそれの手術が必要で(ここで医師が電卓で計算)、「100万円ですね」と一言。100万円。私、貧乏でもなければお金持ちでもない。出せなくもない金額だけど、ひょいと出せる金額でもない。

医師は引き続き「どうしますか。今すぐにでも手術できますよ」と診察台を指差し、私もつられて今しがた私がライドオンしていた診察台を見入る。100万円払えば絶対的快楽を提供できる。ちなみに100万円だと効果は約6年だという。半永久的な効果を望むなら、もっと値がはる。おそらく1000万円単位になるのではないか。

正直に告白しよう、100万円で望む身体が手に入るなら、と心が動いたのは事実だ。しかし「私、今、生理なんですよ。今すぐに手術って無理じゃないですか」と問うた。すると医師は「手術でどうせ出血するので、ちょうどいいんですよ。あえて生理時期を選んでいらっしゃる患者様もいます」としれッと言うではないか。

生理時期に手術? 衛生面は? 普通の部屋に診察台がぽつんと一台置いてあるような環境で、衛生面って大丈夫なの? と訝んだが、相手は医師だ。プロである。引き続き話を聞いてみると、「風俗でお仕事している方や遠方から来る方など、それなりの事情を抱えた方もいる」とか「早く手術の効果を試してみたいので、あえて生理時期を選ぶ方もいる」といった話をしてくれた。

妙な威圧感で迫ってくる医師

なるほど、手術すれば出血や腫れは必須だし、数日間~10日くらいは行為に及べない。だったら生理時期を選べば一石二鳥、みたいな感じだろうか。「手術をしてパートナーの浮気がおさまったとか、セックスレスが解消した方もたくさんいます。婚活の一環として受けられる方もいます」と医師。あなたもどうですか? さあ! といった妙な威圧感に圧されそうになったが、私は踏みとどまった。「とりあえず、持ち帰らせてください」と。

大好きな相手に絶対的快楽を与えられたら、きっとその人は私から(私の身体から)目をそらさずにいてくれる。そんな悲しくも切実な女心が名器を求めるのかもしれない。

でも、私にはいくつか疑問がわいたのだ。初対面の医師と、しかも数分話しただけの相手にいきなり指を入れられて、女性側は反応するだろうか。女性の秘部ってもっと複雑にできているのではないだろうか。好きな相手、やりたい相手だからこその反応ってあると思うのだ。とはいえ、診察してくれたのは医師、しつこいようだが彼は彼でプロである。かなりの女性や女性器を見て、触診しているに違いない。だからこそ、私はショックをうけた。まあ、年相応ならいいじゃないか、という意見もあるだろうが、人は誰しも「自分はもっとイケているはずだ」と思うもの(私だけ?)。

なんとなくおさまりがつかず、私はさらにいろいろと調べてみた。すると興味深いデータを発見したのである。やはり某整形外科のカウンセリングで20代前半の女の子達が「出産を重ねたレベル」と言われたり、「ちょっと心配なレベル」と言われたりしていたのだ。20代前半で? 私のようにアラフィフならまだしも、20代前半なら伸びきってもすぐに縮むような気がするのだが。

恥を忍んで、知人男性に一連の出来事を説明したら

どうにもこうにもモヤモヤした私は、絶対的信頼のおける知人男性にアポを取った。恥を忍んで一連の出来事を説明し、秘部を確かめてもらったのだ。知人男性は開口一番「いや、森さんはまったく問題のない秘部だよ」と一笑に付した。「むしろ10歳くらい若いと思うけど」とうれしいリップサービスまでつけてくれた。

秘部を見せられる(いじられる)絶対的信頼のおける知人男性ってどういう関係? という質問には笑顔でスルーさせていただきたい。知人男性は私をなぐさめるでもなく、「森さんにはそんな手術、まったく必要ないでしょ。やらないで本当によかった」と、さも当然というように断言した。これには私も、思わず泣きそうになった。

さらに、知人男性は私と同じように失笑半分憤慨したのだ。女性器形成そのものは否定しないが、察するに必要性のない女性も手術しているのではないか、というのが彼の弁である。

だって、私だって心が動いたくらいだもの。モヤりつつも100万円~支払ってしまう女性は確実にいるだろう。

私はその知人男性にもうひとつの疑問をぶつけてみた。「もし私が手術をして、20代くらいのむっちむちでぎゅうぎゅうの秘部を手に入れたとして、男性側ははたして気持ちいいものですか」。

そう、私が20代だったらおそらく20代の男性を相手にするから、むっちむちのぎゅうぎゅうの秘部でもいいのだが(相手もそれなりだろうし)、私はアラフィフだ。もし相手を選ぶのなら(旦那さんは9歳年上だし)、やはりそれなりの年齢になるだろう。そうなると、男性だって四六時中ギンギンってわけにもいかないし(そういう人もいるだろうけど)、お薬を使っている人もいそうだから、むっちむちのぎゅうぎゅうだとかえって支障がでるのではないか。

知人男性もやはり適材適所というか、誰にでもむっちむちのぎゅうぎゅうが120%絶対的快楽! じゃないと笑っていた。それこそ、年齢を重ねたら欲望を愛でカバーというシーンも出てくるだろう。

私の秘部をめぐる旅はここで終わるのだが、無駄な旅ではない。ただ、秘部はやはり秘部。奥が深くて誰にもジャッジできない、と悟っただけである。

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