アラフィフ作家の迷走生活 第45回

女性たちがいそしむ、秘密の肉体改造

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「アラフィフ作家の迷走生活」
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小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回から、「秘部の実態」をテーマに前後編でお送りします。秘部の状態が気になって調べるうち、女性器形成手術の存在を知った森さん。森さんが”死ぬほど理解できた”という、手術を受ける女性たちの心理はどのようなものでしょうか?

*本記事は『cakes』の連載「アラフィフ作家の迷走性(生)活」にて2019年8月31日に公開されたものに一部小見出しなどを改稿し掲載しています

ここ数年、秘部に関する本を読みあさっていた。秘部。響きはとても甘美だが、アラフィフともなると甘美だけではすまされない。秘部とは陰部の意。女性器や女性器周辺だ。

「セックス寿命」が長くなってもらわないと困る

今回の主旨はズバリ女性器のゆるみ、衰えである。だからつまり「セックスにおける膣の具合とその変化」を検証したいのだ。人生100年、120年とうたわれている昨今、セックス寿命だって長くなっているはず。

いや、このエッセイでも再三語っているが、セックス寿命だって人生に比例して長くなってもらわなければ困る。特に挿入にはこだわらなくてもいいのだが、エロはパワーの源。高齢になってからの性事情のほうが重要なのである。

現在の私は尿もれもしてないし、湯上りに秘部からお湯がしたたることもない。表面上の老化現象はないとはいえ、顔や身体がたるんだりハリがなくなったりするのを考慮すれば、秘部もまた然りという危機感は人一倍ある。

秘部が原因で相手に幻滅されるなんて悲しくてたまらないし、もっと言えば一生現役でいるのが夢だ。「女性の秘部をジャッジする前に、男性側の秘部はどうなんだよ?」とお怒りになる女性陣もいるでしょう。でも、怒りつつもやりきれないですよね? 己の年齢を直視しつつも、可能な限り賞味期限を延ばしておきたいですよね。

あくなき探求心の私が、お手入れ方法を含めて秘部の本質(?)を調べるうちにたどりついたのが、女性器形成だ。え? 女性器ってつくれちゃうの? そう、今や顔面整形と同じように、美容整形外科で女性器をカスタマイズできるのである。マジ秘部の秘密手術。あんな狭い入口(時と場合により広くもなる)にチューブとか差し込んだり(プレイではない)、レーザーを照射したり薬剤を注入したりするのだろうか。

出産は未経験の私だが、婦人科の診察台に乗った経験は数回ある。検査でも痛いし、器具を挿入して出血するなんてめずらしくない。見えない部分だけに、謎要素もてんこ盛りなのだ。

整形外科の扉を叩く女心が、死ぬほど理解できる

それが女性器形成となると、さらに謎は深まるばかり。女性器形成の広告で謳われているのは、感じる秘部をつくる、または感じさせる秘部をつくる、である。私の好奇心と恐怖心を上回ったのが、切実な女性心理だ。女性器形成をしようとする女性の気持ちが知れないと思う人もいるかもしれないが、私にはそれ(女性器形成)をすべく不安を抱えながらも美容整形外科の扉を叩く女心が、死ぬほど理解できたのである。

人は誰しも快楽に弱い。特に男性は、いくらパートナーを愛しているからといって(愛していれば100%気持ちがいいというのは神話にすぎないのだし)、目の前の快楽にはかなわない時がある。頭と心と欲望は絶妙なバランスを保ちながら存在するのに、何らかの拍子で(お酒とかメンタルの弱りとか)欲望が突出し、目の前の快楽に耽溺するなんて、けっこうある。

でも、手近なところに彼専用の絶対的快楽があれば(パートナーが絶対的快楽を与えてくれる身体の持ち主であれば)、浮遊霊みたいに現れた快楽に手を出すなんてありえない、とまでは断言しないけれど、激減するんじゃないだろうか。私も絶対的快楽の持ち主、というのに憧れたのである。

要は、私だけを見てほしい、の裏返しが女性器形成手術であり、実際にバンジーする女心なのだ。中には風俗で客を取るため、という商売気質の女性もいると聞いたが、大半は男性をつなぎとめておきたい切ない心がそうさせる。

これはインターネットで検索した情報だが、海外の女性が自分自身の快楽を重視して手術を受けるのに対し、日本人女性は自分自身の快楽よりも相手方の快楽を重視して手術を選ぶらしい。日本人女性の奥ゆかしさよ、おもてなしの心よ(涙)。

某美容整形外科へ行ってみた

百聞は一見に如かず、私も某美容整形外科へ行ってみた。自分の秘部が現時点でどういう具合なのか、確認しておきたかった。当然触診あるよね、と覚悟していたが、なんと当日、私は生理になってしまった。カウンセリングの予約を取り消すのもめんどうだし、予定通り赴き男性医師と面談した。

年齢や独身か既婚か、出産経験の有無など、一般的な問診から、話はいよいよ核心に迫る。どういった目的でここを訪れたのか、どういう女性器を目指したいのか、手術を受けるのは自分のためか相手のためか、等々、ダイレクトに聞かれ(私も日本女性の端くれ、相手のためとこたえておきました)、まるでカタログショッピングのように女性器、いわゆる名器の種類を示される。数の子なんとか、とか、そういうのですね。なんと医師オリジナルの名器もあるようで……。

あえてここでは詳しく記しませんが、男性側の気持ちよさの種類って多種多様なんですよね。まあ、女性側もそうだけど。絶対的快楽を相手に差し出したいのなら、全種類を網羅せよ、という診断だ。まるでフルーツパフェの全部のせ、みたいなノリである。全部のせ、ってねぇ。私の秘部をそんな豪華7点盛り、みたいに作り上げてもねぇ。と、いささか失笑気味になったところで、いよいよ触診である。

「あ、すいません、私、今日生理になってしまって」と断わりを入れたのだが、かまわないとのこと(私がかまうんだよ)。医師の指示に背くわけにもいかず、診察台にライドオン。婦人科検診のように指を入れられること数秒。さて、私の秘部のランクはいかに。

(後編へ続く)
後編「某整形外科で秘部を診断してもらったら」は、12月19日(月)更新予定です

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