アラフィフ作家の迷走生活 第14回

他人に身体をさわられるということ

他人に身体をさわられるということ

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小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は年を重ねてからの「肌の触れあい」についてです。年齢を経るごとにセックスの回数は減っていくものですが、意外な場所で女性性を高めている人もいるようです。

*本記事は『cakes』の連載「アラフィフ作家の迷走性(生)活」にて2018年5月26日に公開されたものに、一部小見出しなどを改稿し掲載しています。

私の愛読する漫画のひとつに、「黄昏流星群」がある。弘兼憲史氏の名著で、人生の黄昏時を迎えた人々の恋愛物語だ。漫画とはいえ変に華美にせず、老体のしわやたるみがリアルに描写されている。ビジュアル的には美しいといえない身体と、身体のからみを、弘兼憲史氏は大胆に描いているのだ。

まだ枯れてはいない欲を、これでもかと言わんばかりに読者に見せつける。むきだしの身体よりも、むきだしの欲が美しいのだと私は感じ入り落涙し、流石だ、と唸ったり、恍惚のため息をついたりする。私も年をとったものよのう。

年を重ねるごとにセックスの回数は減ってくる

巣鴨のラブホテルで流れているのは老人同士のAVらしいのだが(それ以外もあるだろうけれど)、一般的に、年を重ねるごとにセックスの回数は減ってくる。老人と言わずとも、「もうさ、手をつなぐくらいでお腹いっぱい」という30代や40代だっている。その背景には「仕事や子育てで疲れて、セックスするのが面倒」という疲労系と、「わざわざ結合しなくても、添い寝とか、くっついているだけで和む」という悟り系がいる。

昨今は、決してセックス嫌いではないのだが、別に性器をこすり合わせなくても手と手だけで愛情確認はできるじゃん、という悟り系というか近未来系、テレパシーで感じるよね、みたいな「セックスだってスピリチュアルがオシャレ」な人々が増えているように思う。

以前も書かせていただいたが、やはりふれあいや肌と肌の相性というのは大切だ。それがセックスに結びつかなくても、例えば美容院などで、異性の美容師の指が首筋に軽くふれただけでキュンとしたり、あるいはゾッとしたりする経験は誰しもがあるだろう。なので、とりわけ女性は、好みの男性によりそい、いつでもふれたりふれられたりの距離を保つのが最高のアンチエイジングなのではないか。まあ、犬とか猫とかペットでもいいけれど、性的高揚とは別物なので今回は却下する。

整体院で裸になる人

いつだったか私は、知人の整体師に「施術前に裸になる女性がいる」と聞いたことがある。知人は私と同世代の、男性だ。彼はベテランの域に達していて、ひとりで整体院を切り盛りしている。つまり、整体師と患者、一対一の環境だ。私は「裸? ブラとショーツもなし? なぜ」と問うた。知人は「裸のほうが効くから、っていつも言うんですよ」と戸惑いながらこたえる。効く、って、どこに効くんだよ? と鼻息が荒くなった。それ、完全に誘っているだろう。

しかし、よくよく突っ込んでみると、誘われているわけでもないらしい。ちなみに女性はゆらぎ世代を越えた傾き世代で、「黄昏流星群」のヒロイン候補だ。いわば、第二の人生(人性)スタート! なお年頃である。

察するに彼女は、施術中の1時間~2時間、知人の指と感触で女性性を高めているのではないだろうか。あるいは、知人のあたふたしている姿を見て、自分の女性性を再確認しているとか。

指でくどかれたんだろうな……

かく言う私も、ものすごく巧い整体師やエステティシャンに会うと、「やばい。一度お手合わせ願いますか、と言いたい。言いたくなる」なんて、節操が無くなりそうになる。それがたとえ女性エステティシャンでも、だ。

または「この人の彼女や奥さん(彼氏や旦那さん)って、どんな人だろう。顔や金じゃなく、指でくどかれたんだろうな。ていうか、指でくどくってすごい」など、妄想の暴走が止まらなくなる。

今までに二度、私は自作の小説に整体師を登場させた。ひとり目のモデルはオダギリジョー氏、二人目はリリー・フランキー氏だ。オダギリ整体師には二股をかけさせ、リリー整体師には不倫をさせてみた。特にリリー整体師は最低なのだが、執筆中も私は、「でもゴールドフィンガー持っている人なら、何をしても、されてもいいよね」などと納得していた。

男性は(時として女性も)、女性に極上の妄想を抱かせたら、もう何をしても許されると思うのだ。

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