オダギリジョーさんが脚本・演出・編集を手がけ、自身も出演するドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)。前作の好評を受け、3週にわたって放送される、シーズン2が9月20日からスタートしました。
主人公である警察犬係・青葉一平を演じるのは、池松壮亮さん。前作から持ち越されたヤクザと半グレの抗争や、11年前に行方不明となった少女の謎に、引き続き迫っていきます。青葉を取り巻くほかの登場人物も、相変わらず個性豊かな面々ばかりです。

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ウートピでは池松さんと、少女の遺体を発見したスーパーボランティア・小西さんを演じた佐藤浩市さんにインタビュー。全3回連載の2回目となる今回は、お二人がオファーを受けるときの基準や、出会ったころの思い出を伺いました。
前回は…ふたりがオダギリジョーの描く世界観を面白いと話す理由
オファーを受ける基準は?
——第2回では、お二人がどんなふうに仕事と向き合ってきたのかを伺いたいと思っています。
佐藤浩市さん(以下、佐藤):僕は、人に背中を押されたらそっちのほうにしか進んでいないですけどね。
池松壮亮さん(以下、池松):何をおっしゃいますか(笑)。
——お二人には日々たくさんのオファーが来ると思います。依頼を受ける時、何か基準はありますか?
佐藤:(お金のジェスチャー)
池松:浩市さん、書かれますよ(笑)。
佐藤:(笑)。これは冗談として、ギャランティで選んだことは一度もありません。運よく「この仕事を受けなければ食えない」というシチュエーションもなかったので。やっぱり一緒にやる人間、作品、数年後の自分に何かが返ってくるかどうか、ですね。もしくは「返ってこなくてもいいから参加したい」と思えるもの。
——それは、お若いころからずっと変わらない基準ですか?
佐藤:そうだと思います。「これに出たらきっとすごいものが返ってくるぞ」と自分で感じたものが本当にすごくなったことって案外ないから、打算で選んでも仕方ないと思っているところもありますね。つまらない欲で仕事を選んでもしょうがないというか……あんまりにも偉そうに聞こえたら申し訳ないのですが。
——とんでもないです。池松さんはいかがでしょうか?
池松:僕は、いろんな作品を簡単に観られる時代に俳優をはじめたので、結構いろんなものから影響を受けていて、何回転もしてきた先に自分がいるような感覚があって……。どうしても「どうすればアップデートしたものを見せられるか」とか「いまの時代で何ができるか」といったことを考えてしまいます。そのなかで、世の中や自分自身の気分に合致する作品を、日々探しているように思います。ただ、そうやって考え込んでいると、浩市さんに「もっと遊べ」と言われているような気がしたりして。有難いことと、やりたいことと、やるべきことと、バランスはいつも難しいなと思います。
佐藤:壮亮は、いい意味でも悪い意味でも真面目だからね。僕らの世代にも当然そういう真面目な人はいたんだけど、時代の寛容さがいまとはちょっと違ったから。いまは、いろんなものを探したり遠回りしたりしながら進んでいくことが、僕らの時代よりもやりづらいだろうなと思います。だから、経験していないことを経験したように咀嚼する力も求められるし……本当、ご苦労様です(池松さんに向かって、深々とお辞儀)。
「縁の深い俳優さん」「キャッチボールが楽しい相手」
——あるテレビ番組で拝見したのですが、佐藤さんは以前、柄本時生さんに「複数の仕事を掛け持ちすると反射がうまくなるし、本数を絞ると思考が深まる」といったお話をされたそうですね。ライターや編集の仕事にも共通するなと思って、印象に残っていました。
佐藤:あの時は……。仕事がずっと続いていると、頭が動く前に身体が反応してくれるようになるけど、首から上は使わなくなる。でも、仕事の間隔があくと一本に集中できるから、首から上がものすごくよく働くけど、今度は首から下が鈍くなる……という話をしました。要はバランスなんですよね。たぶん、すべての仕事に共通する感覚なんじゃないかなと思います。
池松:僕は、ひとつのものに執着しすぎるところがあります。首から上に寄りがちで、バランスが悪くなりがちというか……結果として、体が鈍くなることもあって。浩市さんには昔から、たくさんのヒントや言葉を頂いてきましたが、そういうことを指摘されてきたような感覚もありますね。若いころに出会えて、縁の深い方だと思っています。
佐藤:初めて共演した時、俺が警察学校の教官で、壮亮は生徒役でした。壮亮は窓際の……うしろから3列目くらいに座ってて。なんか変な視線を感じるなと思ったら、必ず壮亮がこっちをじーっと見ていたんですよね。そのころから、俺もずっと気になってたよ。
池松:鬼教官である浩市さんに対して、自分たちがどう在れるかというような作品だったから、休憩中でも役柄のままでいようと思っていたんです。まだ二十歳超えたくらいで浩市さんと共演できることがうれしくてしょうがなくて、他のみんなは空き時間に浩市さんと話しに行くんですけど……「俺は一言も喋らない」と自分に課していて。そのまま作品が終わり、そのあと久しぶりに別の現場で会った時、浩市さんから「壮亮、険がとれたな」と言われました。見抜かれていたんだなと感じて、あれはすごく印象に残っていますね。
佐藤:「この子は何らかの形で残っていくだろうな。あとはどういう作品に巡り合うかだ」と思って見ていたから、そのとおりになってきてうれしいですよ。昔は変な話、どんな後輩でも接し方は一緒くただったけど、いまは個人を見る時代。同じ言葉を投げても受け取り方は違うし、だからこそコミュニケーションの方法を人それぞれ考えていかなきゃなと思っています。壮亮はいい距離感を持ちながら話せて、楽しいキャッチボールができるタイプの俳優だから、久しぶりに会うと面白いですね。
(ヘアメイク/池松さん:FUJIU JIMI、ヘアメイク/佐藤さん:及川久美、スタイリスト/佐藤さん:喜多尾祥之)(取材・文:菅原さくら、撮影:面川雄大、編集:安次富陽子)
ドラマ10 『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』 シーズン2

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■放送予定
第5話/27日(火)・第6話/10月4日(火)
午後10:00-10:45(NHK総合)
<再放送> 9月27(火)・10月4日(火)・11日(火) 午後3:10-3:55(NHK総合)
【脚本・演出・編集】オダギリジョー
【制作統括】柴田直之(NHK) 坂部康二(NHKエンタープライズ) 山本喜彦(MMJ)
【出演】池松壮亮、オダギリジョー、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー!(野性爆弾)/永山瑛太/川島鈴遥、佐藤緋美、浅川梨奈/染谷将太/仲野太賀/村上虹郎、佐久間由衣、寛一郎、千原せいじ(千原兄弟)、
河本準一(次長課長)/高良健吾/坂井真紀、葛山信吾、火野正平、竹内都子、
村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一/國村隼/細野晴臣、香椎由宇、
渋川清彦、我修院達也、宇野祥平/松たか子/黒木華/浜辺美波/濱田マリ、
シシド・カフカ、河合優実、佐藤玲/風吹ジュン/松田龍平、松田翔太/松重豊、
柄本明、橋爪功、佐藤浩市 ほか
*葛山信吾さんの「葛」の下の「人」は正式には「ヒ」です
*全エピソードをNHKプラスにて配信
*公式 Instagram アカウント:https://www.instagram.com/nhk_oliver/