オダギリジョーさんが脚本・演出・編集を手がけ、自身も出演するドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)。前作の好評を受け、9月20日から3週にわたって、シーズン2が放送されることになりました。

作中より/©NHK
主人公である警察犬係・青葉一平を演じるのは、池松壮亮さん。前作から持ち越されたヤクザと半グレの抗争や、11年前に行方不明となった少女の謎に、引き続き迫っていきます。青葉を取り巻くほかの登場人物も、相変わらず個性豊かな面々ばかりです。
ウートピでは池松さんと、少女の遺体を発見したスーパーボランティア・小西さんを演じた佐藤浩市さんにインタビュー。全3回連載の初回となる今回は、オダギリさんとのお仕事について印象を伺いました。
“おかしみ”は、苦しい時期に人の背中を押す
——まずは『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』シーズン1に引き続き、オダギリ監督とのお仕事はいかがでしたか?
池松壮亮さん(以下、池松):一年ぶりの続編となりましたが、今回も面白かったです。すごく。オダギリさんの初監督映画『ある船頭の話』とは全然違うことをやろうとする気概を感じますし、コロナ禍を経て、オダギリさんらしいひとつの答えを出している作品だと感じます。
“おかしみ”っていうのは、時に人生においての大きな支えとなる力があります……困難に打ち勝つための力を秘めていて、パンクな要素があります。コロナという困難に向かい合った時、何をやるべきか考え、自分が監督をして好きな人たちを集めてこの作品を生み出すという道を選んだオダギリさんが、そこに僕を混ぜてくれて、とても楽しかったです。
——池松さん自身も青葉一平を演じながら、背中を押される気持ちになったりしたのでしょうか。
池松:シーズン1は特にそうでした。誰もが仕事が止まっているような時期に、あのような挑戦的な脚本が上がってきて、みんなで久しぶりの現場やモノづくりを喜べて。そういう空気がこの作品にはやっぱり必要でした。
——そうした喜びが反映された、フェスティバルのような空気感の作品ですよね。
池松:野球でいうオールスターゲームみたいな感じですよね。勝ち負けとかそういうことでもない、本当にフェスティバルな作品でした。
——佐藤さんは、オダギリさんの現場をどのように楽しまれましたか?
佐藤浩市さん(以下、佐藤):その前に……(取材チームに向かって)寒くない? 二人とも。大丈夫?
——大丈夫です! ありがとうございます!
佐藤:そう、よかった。(スタジオの)冷房が強いから寒そうだなと思って。……オダギリはね、僕とはまったく違う世界観の持ち主なんです。でも、だからこそ分かる、みたいなこともあって。不思議なもので、どこか似ていたり、同じ方向を見ていると思っていたりする相手ほど、一緒にものづくりをしたときに「意外と違うんだな」という発見がある。変な例えだけど、恋愛だってそうじゃない?(笑)オダギリジョーという人が僕とも池松とも違うからこそ、今作ではオダギリの世界観の輪郭が明確に見えたし、面白かったです。
——違った世界観のオダギリさんと仕事をすることで、何か発見はありましたか?
佐藤:やっぱり「へぇ、そういう見方や感じ方があるんだ」「ちょっとやってみよう」「なるほど、こうなるんだ」と思う場面がありましたね。若いころは僕もかたくなだったから、自分の小さな世界観を守ろうとしていたけれど、芸歴を重ねたいまは「なるほどね、やってみよう」と柔軟にも受け止められるようになりました。そのうえで、オダギリの提示する世界観をキープしつつ、どれだけ遊べるか。オダギリが求めることに応えつつ、自分でも膨らませて、いい意味ではみ出す“プロの仕事”ができました。シーズン2では、そういう感覚がより強くなったように感じています。
あれもオダギリ、これもオダギリ
——お二人にとって、オダギリさんは昔からの仕事仲間です。でも今回は俳優同士ではなく、監督・脚本と俳優という、これまでとは違った役割でコミュニケーションを取ることになりました。何か発見はありましたか?
佐藤:オダギリの可能性を、いままで以上に感じましたよね。『ある船頭の話』と『オリバー』がまったく違う世界観の産物だったから、驚きもしたし。でも「あれもオダギリ、これもオダギリ」と、どこかすんなり受け入れることができました。
池松:オダギリさんって、ものすごく不思議な人なんですよね。多くの俳優たちのなかでも……なにかこう、幅が広いというか、どこか乖離しているというか。まったく違うさまざまな方向性の感性を併せ持っているように思います。でも、僕から見ると浩市さんもそう。そういう乖離をむしろ楽しんでいて、それすらエンターテインメントだと思っている方々だと感じています。人が驚いたり、楽しんだりすることに敏感で、表現に、すごく愛情のある方たちです。
佐藤:え、私がですか? 私はわかりません(笑)。
池松:何をおっしゃいますか(笑)。
佐藤:それより、池松の今回の役は難しかったよね。あまりにあまりなキャラクターがあれだけ出てくるなかで、それを全部受けつつ、きちんと主役の彼が存在していることを見せなきゃいけない。その計算がしっかりできていないと、強烈なキャラクターたちに流されるだけになっちゃうから。オダギリはそこを分かって描いているし、池松もちゃんと意思疎通していたなと感じました。
インタビュー第2回へ続く:池松壮亮と佐藤浩市の「つかず離れず」な関係性
(ヘアメイク/池松さん:FUJIU JIMI、ヘアメイク/佐藤さん:及川久美、スタイリスト/佐藤さん:喜多尾祥之)(取材・文:菅原さくら、撮影:面川雄大、編集:安次富陽子)
ドラマ10 『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』 シーズン2

©NHK
■放送予定
第4話/9月20日(火)・第5話/27日(火)・第6話/10月4日(火)
午後10:00-10:45(NHK総合)
<再放送> 9月27(火)・10月4日(火)・11日(火) 午後3:10-3:55(NHK総合)
【脚本・演出・編集】オダギリジョー
【制作統括】柴田直之(NHK) 坂部康二(NHKエンタープライズ) 山本喜彦(MMJ)
【出演】池松壮亮、オダギリジョー、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー!(野性爆弾)/永山瑛太/川島鈴遥、佐藤緋美、浅川梨奈/染谷将太/仲野太賀/村上虹郎、佐久間由衣、寛一郎、千原せいじ(千原兄弟)、
河本準一(次長課長)/高良健吾/坂井真紀、葛山信吾、火野正平、竹内都子、
村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一/國村隼/細野晴臣、香椎由宇、
渋川清彦、我修院達也、宇野祥平/松たか子/黒木華/浜辺美波/濱田マリ、
シシド・カフカ、河合優実、佐藤玲/風吹ジュン/松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市 ほか
*葛山信吾さんの「葛」の下の「人」は正式には「ヒ」です
*全エピソードをNHKプラスにて配信
*公式 Instagram アカウント:https://www.instagram.com/nhk_oliver/