新年早々、女優の遠野なぎこがテレビ番組で再婚を示唆。その後ニュースで報じられると本人自らブログで「誤報」と否定しましたが、番組では「婚前契約書」を作成していることを明かして話題になっていました。その内容は、「夫は妻が非常に嫉妬深いことを考慮して行動すること」「異性と2人きりで会わない」「異性と連絡先の交換をしない」などというもの。こんなことでは結婚なんて無理なんじゃ……とツッコミたくなりますが、気になるのが「婚前契約書」の実態。いったいどんな効果があるのでしょうか?
離婚式プランナーの寺井広樹さんに婚前契約書のメリットを、行政書士の多田ゆり子さんに婚前契約書の作り方を聞いてきました。
結婚前から「離婚の話」をするメリット
婚前契約やプレナップと呼ばれるこの契約、日本ではあまりポピュラーではありませんが、ハリウッドセレブをはじめ欧米諸国では多くの人が交わしているそうです。これは2人がもし離婚したときの取り決めを入籍前に決めておくというもの。
結婚する前から離婚の話をするなんて縁起が悪い! と思われそうですが、“離婚式”で円満離婚をしていった数々の夫婦を見届けている寺井さんは「幸せな結婚にこそ、婚前契約書は必要です」と言います。
「離婚する夫婦が何でモメるかというと、やはりお金の話。この部分を仲がいいうちに決めておくのが円満離婚の条件ですね」
結婚前だからこそ、冷静に離婚の条件を話し合えるというわけですね。
「それに、夫婦に子どもができたり共有財産が増えたりした際に契約内容を見直せば、初心を思い出すきっかけとなって結婚生活に緊張感が出るのではないでしょうか」
離婚だけでなく結婚生活にも役立つかも? という意見。長い結婚生活だと初心を忘れてしまいがち……たしかに良いかもしれません。
法的に強制力のある「婚前契約書」にするには
それでは実際にどうやって婚前契約書を作ればいいのでしょうか。行政書士の多田さんに聞きました
「婚前契約書は、結婚する2人だけで作成することもできますがそれは自分たちの約束事というだけで法的効力はありません」
法的効力がある婚前契約書にするには?
「契約項目を公証役場に提出し、公証人に公正証書を作成してもらいます。私たち行政書士が、法的に強制力のある公正証書の原案を作成し代理で提出することもできます」
素人だと、法律に基づいた書式を作成するのがハードルになりそうです。行政書士に依頼する場合、費用や期間はどれぐらいかかるのでしょうか?
「私の事務所の場合ですと5万円~7万円です。契約項目の内容をつめて、書類を作成し、公証役場に提出してから認証を受けるまで1週間から10日ほどかかるため、だいたい2~3週間は見ておくとよいと思います」
「相手を束縛」するような契約内容も可能なの?
契約にはどんな項目を入れるとよいのでしょうか。
「お金関係ですね。これは公的なものでないと意味がありません。男性の不貞行為で離婚となる場合もあります。女性の視点からですと、慰謝料とは別に生活費をもらえるように契約しておくと万が一離婚となっても金銭面の不安を取り除けます。でも、シビアな内容ですのでなかなか男性側の同意を得づらいのが現状です。ここは話し合うしかありません」
遠野なぎこさんのように、相手を束縛するような項目も可能ですか?
「うーん、あまり細かすぎる内容はオススメしません。『○時までに帰宅する』『メアドは教えない』のように具体的になればなるほど、不可能なことも出てきますし、例外ができやすくなります。メアドは教えないけどSNSでコンタクトを取るのはアリなのかとか……。せめて『無断外泊はしない』程度でしょうか」
ほかに入れておくべき項目はありますか?
「婚前契約は離婚の備えだけでなく、幸せな結婚のための取り決めも入れられます。『お互いに助け合い尊重しあうこと』や『記念日は必ず食事をする』『家事や育児は分担する』などですね」
やはり、婚前契約書は離婚するためのものではなく、2人が幸せな結婚生活を築くためのものなのですね。日本ではまだ婚前契約書という言葉が浸透していないせいで、相手側から拒否反応をもらう場合も多いそうですが、婚前契約の良い面がクローズアップされ、もっとポピュラーなものになると幸せな夫婦が増えるのではないでしょうか。