「生命科学アカデミー」吉森先生に聞く 第1回

生命の基本単位「細胞」とは何か? 吉森保先生に聞く

生命の基本単位「細胞」とは何か? 吉森保先生に聞く

「fracora(フラコラ)」は、Youtubeチャンネル「生命科学アカデミー」に大阪大学大学院生命機能研究科教授/医学系研究科教授の吉森保先生をお招きし、「オートファジーの「秘密」とは?」ほか、全6回を公開しました。

細胞一つ一つが元気になることで、病気や老化を防ぐことができるということが昨今の最先端研究により分かってきました。話題の「オートファジー」研究のスペシャリスト、吉森先生に今知っておきたい「細胞」と「オートファジー」の話を聞きました。

※本記事はYouTubeチャンネル「生命科学アカデミー」で配信された内容を、ウートピ編集部で再編集したものです。

人間は約37兆個の細胞からできている

私は細胞生物学者なのですが、「オートファジー」という“細胞の中の仕組み”を研究している中で、オートファジーが我々の健康にとってすごく重要だということがわかってきました。私の師匠の大隅良典先生は、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞されています。

今回は、まずは細胞とはなにか、という話をして、それからオートファジーの話をしたいと思います。

我々人間に限らず、すべての生物は細胞からできています。細胞というのは生命の基本単位です。

人間の場合は約37兆個の細胞からできているんですけど、その細胞一個一個の中に、人間ひとりをつくるのに必要な遺伝情報が全部入っている。

私が医学部の学生にいつも言うのは、「元気になるのも病気になるのも細胞だ」。健康であるなら細胞が健康ということだし、病気になるなら細胞のどこかの具合が悪いということなんですね。

『はたらく細胞』(清水茜・講談社)という漫画を読んだことがある人は想像しやすいと思いますが、細胞にはそれぞれ役割があって、それらが協力しあって社会のようなものをつくり、人間ひとりを形作っています

その細胞どうしの社会を研究しているグループもありますが、実は、細胞一個一個の中にも社会があるんですね。私の専門はその“細胞の中の社会”です。詳しく説明しましょう。

細胞の中には社会がある

細胞というのは目に見えないくらい小さいわけですけど、その中には、人間の社会によく似た仕組みがあります。

たとえば人間の社会の中には、発電所や病院や警察署などいろいろな建物がありますが、それに相当するものが細胞の中にもあります。そして、そこで働く人々に相当するのがタンパク質です。

人間の社会に職業がたくさんあるように、タンパク質にもたくさんの種類があります。数万種類ものタンパク質が、自らの役割をもって細胞の中で忙しく働いているんですね。

また、人間の社会の場合は、人間を運ぶため、ものを運ぶための交通網があるでしょう? それに相当するものが細胞の中にもあるんです。タンパク質だけでなく、核酸や脂質、そういったものを運ぶための交通網があって、私はその交通網を研究する専門家です。

もう40年ほどこの交通網の研究をしてきたのですが、特にこの25年は交通網の一部であるオートファジーの研究に専念しています。

オートファジーのイメージは「リサイクル」

オートファジーは簡単に言うと、細胞の中にあるものを回収して工場に運び、分解して新しいものをつくるのに使うという、リサイクルに似た仕組みのことです。

どうやって運ぶかというと、膜でできた(アーケードゲームの)パックマンみたいなもの(専門的な言葉でいうと「オートファゴソーム」)がパクっとものを包み込む。パックマンが包み込むものは古いものに限りません。適当にそこらへんにあるものを包み込んで、「リソソーム」という工場に持っていきます。

リソソームは袋状の膜で中に消化酵素が入っており、それを使ってパックマンが持ってきたものを分解します。たとえば、パックマンがタンパク質を持ってきたら分解してアミノ酸にし、それをエネルギーに使ったり、新しいタンパク質の材料に使ったりするんです。

オートファジーが低下すると…

この仕組みが、細胞の中の社会をよい状態でうまく機能させ続けるメンテナンスのような役割を担っているんですね。専門用語で「恒常性(ホメオスタシス)」と言うんですが、細胞の中には細胞の社会をよい状態で維持するための仕組みがいくつもあって、オートファジーはその中でも重要な仕組みであることが、ここ15年くらいの研究でわかってきました

パックマンがそこらへんのものを適当に包み込んでリソソームに運び、新しい材料をつくることをやめちゃったら、つまりオートファジーが低下するどうなるか。

ネズミで実験した例がたくさんありますが、病気になります。肝臓の細胞でこの仕組みがうまく機能しなくなれば肝臓の病気になるし、脳の神経細胞であればアルツハイマー病などになる。さまざまな病気になることがわかっています。

(第2回に続く)

■動画で見る方はこちら

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