アラサー独身のパリジェンヌOLの日常を描いた『ジョゼフィーヌ! (アラサーフレンチガールのさえない毎日)』(DU BOOKS)。フランスでは30万部を売り上げた人気のコミックだが、その和訳版が11月7日に発売されました。
発売と同じタイミングで、作者のペネロープ・ バジューさんが、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本主催の文学とBDのフェスティバル『読書の秋2014』に招聘され来日。“アムール(愛)の国”と言われるフランスでのアラサー女子の生態、そして恋愛観とは? 著者で自身もジョゼフィーヌと同年代のペネロープ・バジューさんに訊ねました。
パリでもアラサー世代は恋愛よりも仕事が大事
――アラサーの独身パリジェンヌの恋愛や日常を描いた『ジョゼフィーヌ!』はフランスで大ヒットし、ここ日本でも和訳版が発売されましたが、まず、現代のパリジェンヌの恋愛事情について教えて下さい。
ペネロープ・バジュー(以下バジュー):一般的には、30歳以上で独身、かつフリーの男性は少なくなってくるわけですが、私の見る限り、現代のアラサーの女性は恋愛対象としての男性への条件を下げていないという印象があります。もっと前の世代であれば、30歳を過ぎたらとにかく恋人を作るか結婚をしなくては、という空気があったと思いますが、いまは女性たち自身がそれほど恋愛に執着していないのではないでしょうか。
週末のパーティーでの新しい出会いには期待できるかもしれませんが、そういった場所でもそれほどガツガツしていないし、「Tinder」というアプリ(もともとはアメリカ発祥のマッチングアプリ)もあるとはいえ、こういったアプリにハマるのはもっと若い世代なんです。総じて、パリのアラサー女性は、決して年齢を引け目に感じたり、絶望しているようなことはありませんね。
――それは意外ですね。「フランスといえば恋愛」というイメージを持つ人も多いと思います。
バジュー:現在、20~30歳のフランス女性にとって何が一番大事なのかというと、実は「仕事」なんです。学校を卒業し、職場である程度の成果を出して次へとつなげる時期なので、私の周りの友人たちもすごく忙しく働いています。なかなか恋愛に力を注ぐ余裕がない分、時々楽しむ程度で、結婚につながるような真面目な恋愛はしにくい状況だと思います。フリーの女性が腰を据えて真剣な相手を見つけなくては、となってくるのは、出産のリミットが見え始める35歳くらいでしょうね。
パリの事実婚制度、PACSにはメリットがない
――日本のアラサー女性たちも大体似た状況にあると思いますが、フランスにはPACS(Pacte civil de solidaritの略で、結婚したカップルと同等の法的権利を認めるフランスの事実婚制度)というシステムがありますよね。30代の女性として、PACSという制度についてはどう考えていますか?
バジュー:フランスでは一般的に、付き合うようになったカップルはお互いの友達に紹介し合ったり、Facebookのステータスを「交際中」としたり、その次のステップとして一緒に暮らすようになるケースが多いのですが、仕事で忙しいから、という理由でPACSを選択するというより、一緒になるための一つの選択肢として存在しています。
フランスには20年、30年経っても結婚しないカップルもたくさんいますし、PACSを結んでもメリットがないように感じている人も多いようです。私たちの世代も結婚にはとらわれていません。というのは、パリでは3分の1の夫婦は離婚すると言われていて、親の世代がきちんとした結婚生活を見せてくれていないんです。結婚式に出席する機会もなかなかありませんしね。
パリでもアラサー世代は、結婚より仕事が優先のようだ。日本の働く女性も大いに共感できる『ジョゼフィーヌ! アラサーフレンチガールのさえない毎日』で、リアルなパリジェンヌが奮闘する毎日を覗いてみてはいかがだろうか。
(松江未生)