誰かと「ふれあうこと」の威力…ブラジリアン柔術の魅力

誰かと「ふれあうこと」の威力…ブラジリアン柔術の魅力

「なーに考えてるの?」
の連載一覧を見る >>

コラムニストの桐谷ヨウさんによる連載「なーに考えてるの?」。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第36回目のテーマは「J=Jiu-jitsu(柔術)」です。

ブラジリアン柔術って知ってる?

今回から2回にわたって「老若男女だれにでもオススメできる格闘技2つ」を紹介していきます。

ひとつ目は「ブラジリアン柔術(Jiu-jitsu)」です。

これを読んでいる人の多くは「うわー、まったく興味を持てない!」と思うことでしょう。俺も数ヶ月までまったく同じ感想でした。

ですが、ブラジリアン柔術は派手なムーブメントこそないですが、着実に、密やかに、老若男女だれでもできる格闘技系スポーツとして、認知と実践者をどんどん増やしているのです。それはなぜでしょうか?

理由は「相手を締め上げれば勝ち」という一見シンプルに見えるゴールに到達するために、腕力ではない技術の向上と、駆け引きの応酬がなされていて、そのすべてが奥深くて、面白いからです。その性質から「ヒューマン・チェス」という別称が生まれているほどです。

そもそも柔術というのは寝技だと思ってください。殴ったり蹴ったりするのではなく、相手を地面に投げ飛ばすのでもなく、お互いあるいはどちらかが床に寝転がってるところから技の応酬をするとイメージしてみてください(厳密にはちょっとちがうのですが)

簡単に言うと、相手の首を絞めるか、腕(肘)を極めれば、問答無用の「一本」です。ただし、相手だってシロウトじゃないので、簡単にはかけさせてくれません。そして有利な身体のポジションの奪い合いをしていかなくては、簡単に逃げられてしまいます。自分に有利な姿勢をつくり、相手の動きを封じ、最終的に狙っていた技をかけられる体勢を少しずつつくっていく。それが出来たら体格差を吹っ飛ばして相手をギブアップさせられる。そういうゲームです。

ちょっと面白そうじゃないですか? よくマウントポジションという言葉を聞いたことがあると思いますが、ただの馬乗りじゃなくてあれも技術なんです。自分よりも20kgほど体重が軽い女性の先生に上を取られたことがありますが、まったく動くことができませんでした。習熟すれば、そんなことだって可能になるんですよ。

ブラジリアン柔術の魅力

ここからは僕が考える「ブラジリアン柔術」の良さを伝えていきます。

なんというか和やかなんです、参加者全体を取り巻く雰囲気が。これはキックボクシングのクラスと対比すると一目瞭然で分かります。打撃系のスポーツはさわられること=破壊されることに直結します。しかし、寝技系のスポーツはふれあうことが前提にあります。そう、ふれあってからがすべての始まりなので、ピリピリしていないんですよ。これは経験者ならみんな言うと思います。

この「ふれあうこと」の威力は大きいことだと思います。いまは他人とのコンタクトを積極的に取りたい時期ではないですが、マスクをつけていればそれほど神経質になることはないでしょう。こんなにも他人と物理的に接触しまくるスポーツは少ないのではないでしょうか。僕の場合は大抵オッサン同士でふれあうわけですが、それでもなんともいえない充実感に包まれてクラスを終えます。

そして先ほどふれた技術の修練という側面です。打撃というのは、やはり身体が大きいほうが有利です。そもそもの骨格がデカい人は力が強いし、リーチだって長いわけじゃないですか。どうしたって努力よりも生まれもった体格差で決まってしまう側面が大きいのです。

しかし、柔術は体格に劣る存在が、圧倒的な体格の相手に勝てる可能性があるものなんですよね。というのも、寝技は「やったことがある人は回避方法がわかるが、ど素人はまったく手に負えない」というシロモノなんですね。なので、寝技を使えるシチュエーションに持ち込めたら…という条件付きですが、女性や子供が、圧倒的な体格差の男性を圧倒することができる可能性があるんです。一瞬で。

その証拠に、総合格闘技の黎明期はグレイシー柔術というブラジリアン柔術の一派が、圧倒的な強さで勝ちまくりました。先にボコれば勝ちだという異種格闘技をしに来ている連中を横目に、誰も対応できないグラウンド技術(ざっくりと身体がマットに倒れてから、倒してからの格闘技術と思ってください)の圧倒的戦闘力格差で、無双状態を誇ったわけですね。こういうロマンが柔術にはあるような気がします。

最後に、ファミリー全員で楽しめる可能性があるということです。実際に僕が通っているジムには、そういうファミリーがいるんですよね。お父さんと、お母さんと、お子さんが同じクラスで、道着を着て、楽しみながら一緒にやっている。そして三頭身くらいのキッズが道着を着ている姿は、たいして小さい子供が好きではない俺から見たって、信じられないくらいに可愛い! なかなかこんなスポーツも珍しいんじゃないでしょうか。

老若男女だれにでもオススメできる格闘技、ひとつめは「ブラジリアン柔術(Jiu-jitsu)」です。なにかで見かけた際には、思い出してみてもらえると嬉しいです。

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この連載をもっと見る

なーに考えてるの?

コラムニストの桐谷ヨウさんによる新連載「なーに考えてるの?」がスタートしました。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

誰かと「ふれあうこと」の威力…ブラジリアン柔術の魅力

関連する記事

編集部オススメ

2022年は3年ぶりの行動制限のない年末。久しぶりに親や家族に会ったときにふと「親の介護」が頭をよぎる人もいるのでは? たとえ介護が終わっても、私たちの日常は続くから--。介護について考えることは親と自分との関係性や距離感についても考えること。人生100年時代と言われる今だからこそ、介護について考えてみませんか? これまでウートピで掲載した介護に関する記事も特集します。

記事ランキング