横浜流星さんが主演を務める映画『嘘喰い』(中田秀夫監督)が2月11日(金)に全国公開されました。また、同日、映像配信サービス「dTV」でオリジナルドラマ『嘘喰い 鞍馬蘭子篇/梶隆臣篇』も独占配信スタート。本作で主人公・斑目貘(まだらめ ばく)の相棒、梶隆臣(かじ たかおみ)を演じる、佐野勇斗さんにお話を伺いました。
原作を大切に、自分なりの梶も目指した
——映画『嘘喰い』は迫稔雄作さんの漫画が原作です。オファーを受ける前から作品をご存知でしたか?
佐野勇斗さん(以下、佐野):いえ、オファーを受けてから原作を読ませてもらいました。もともと、ずるい人が懲らしめられるような逆転劇が好きなので、面白かったです。
——スリリングな心理戦にドキドキしますよね。実写化のプレッシャーはありましたか?
佐野:そうですね。漫画が原作の作品は「ちはやふる ―結び―」や「青夏 きみに恋した30日」(ともに2018年公開)など、何度か出させてもらっていますが、僕も漫画が好きで、実写化を知って不安になる気持ちがわかるから、イメージのギャップがないようにしたいと毎回強く思います。どうしたって、頭の中でその人なりのイメージができるじゃないですか。
——そうですね。
佐野:だけど、一方では完全に忠実に演じようとも思っていなくて。今作では、より感情を伝えるために、原作の雰囲気を大事にしつつも、自分なりの梶を表現できるように工夫をしました。用意したプランを、監督が「いいと思う」とおっしゃってくださったのでありがたかったです。
優先したのは、作品全体のバランス
——今回は、梶のスピンオフも「dTV」で、オリジナルドラマ『嘘喰い 鞍馬蘭子篇/梶隆臣篇』として配信されています。映画とドラマ、両方あることで何か相乗効果はありましたか?
佐野:ドラマのプロットや企画書を読んで、梶について深く知ることができたのは良かったです。でも実は、あまりそのことを映画には取り入れませんでした。僕としては10あるうちの4.5くらい、梶の複雑なバックボーンを表現したほうがいいのかなと思ったのですが、リハーサルで監督に相談したときに、「意識としてあってもいいけれど、生い立ちについてはドラマで明らかになることだから」と。なので、感覚的には1くらいに抑えました。
——かなり控えめに。
佐野:はい。監督のおっしゃる通り、出しすぎると映画を観たときに「この子はなんでこんなに暗い子なんだろう」というのが気になってしまうというか。作品全体のバランスを考えたときに、梶が暗くなってしまうと、暗い話に見えてしまうんです。それよりも、貘とふたりでバカなことをやっているな、仲がいいな、という印象を持ってもらうことが大事だと思いました。
信じているのは「M!LKのメンバー」
——主演の横浜流星さんと、よくコミュニケーションをとっていたと聞きました。横浜さんとの共演で印象に残っていることは?
佐野:カリスマ性がすごかったです。みなさんもご存知の通り、まずルックスがすごくかっこいい。特に、憂いのある表情の演技がすごいんです。あそこまで憂いの表情が出せる、若い世代の俳優の方ってあんまりいないんじゃないかと、僕は勝手に思っています。大人っぽいエモい表情ができるのに、少年っぽさもある。そういうところもいいギャップだなと思いました。それから、役や自分がやり遂げると決めたことに対しての向き合い方がめちゃくちゃストイック。そういうところにカリスマ性を感じました。
——梶も貘に惹かれて、相棒になりますよね。映画では、なぜ貘を信じることに決めたのか梶が自分自身と向き合う場面が出てきます。そこがすごく印象的だったのですが、佐野さんにとって信じられる人はいますか? 信じるってどういうことだと思います?
佐野:えっ! めっちゃ難しい質問ですね(苦笑)。ちょっと待ってください。あまり考えたり、言葉にしたことがなかったから……。でも、今僕が信じていると言えるのは、M!LKのメンバーたちです。だけど、それってどういうことかと言われると……。ちょっとこれ、ずっと考えちゃって夜眠れなくなる質問ですね。
——すみません(笑)。M!LKの活動が2014年からなので、今年で8年目。この8年で信頼関係が強くなった感じがします?
佐野:そうですね。この5人(佐野勇斗・塩﨑太智・曽野舜太・山中柔太朗・吉田仁人)で絶対有名になるって決めたし、今、本当に全員で同じ方向を向いていると思えるんですよね。
——俳優業との両立は大変なことも多いのでは?
佐野:うーん。M!LKだけ、俳優の仕事だけ、という期間がなくて常に両方なので大変なことなのかどうか……。ただ、僕は自分がやると決めたことには絶対に手を抜きたくないんです。だから両方やり遂げたいと思っています。
「可能性はまだある」と思ってもらえたら
——最後に、今回『嘘喰い』に映画とドラマで参加されて、佐野さんがどんなことを感じたか教えてください。
佐野:梶は「どうせ俺なんて」と自分の人生を諦めていた人物です。だけど、それって物語の中だけではなくて、リアルに生きる同世代の人たちの中にもいるんじゃないかと感じました。自分の立ち位置を勝手に自分で決めてしまって、「もうここでいいや」って。だけど、僕はそんなことないんじゃない?って思うんですよね。自分のできることを全てやり切る前に諦めてしまうのはもったいないことだなって。
貘は「ド直球」でそういうメッセージを言うことはないけれど、梶に違う世界もあるってことを背中で見せてくれます。「可能性はまだあるんだから、諦めんなよ」って。僕はそんな思いをこの作品から受け取りました。だから、観てくれた人が「自分もちょっと頑張ってみようかな」って思えるような作品にできればと、自分の中の裏テーマとして持ちながら撮影に臨みました。ぜひ楽しみに観ていただきたいです。
(取材・文:安次富陽子、撮影:宇高尚弘)
■作品情報
映画『嘘喰い』
公開日:2022年2月11日(金)
出演:横浜流星、佐野勇斗、白石麻衣、本郷奏多、櫻井海音、村上弘明、三浦翔平
監督:中田秀夫
原作:迫稔雄『嘘喰い』集英社ヤングジャンプコミックス刊
配給:ワーナー・ブラザース映画
dTVオリジナルドラマ『嘘喰い -鞍馬蘭子篇/梶隆臣篇-』
エピソード数:全4話
配信開始日:2022年2月11日(金)21:00(毎週金曜更新)
出演/
【鞍馬蘭子篇】白石麻衣 佐野勇斗 西村和彦 森崎ウィン 山本千尋 猪塚健太 木月あかり 佐藤友祐 村上弘明
【梶隆臣篇】 佐野勇斗 白石麻衣 忍成修吾 赤星昇一郎 工藤美桜 しゅはまはるみ 荒井レイラ 村上弘明
公式サイト/https://video.dmkt-sp.jp/ft/p0007960
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