人間が一生の間に約20万回利用するともいわれる空間「トイレ」。そんなトイレについて考えるシンポジウムが開催され、グッドトイレ賞なども選出される日として1986年に制定されたのが、本日「いい(11月)トイレ(10日)の日」です。
当たり前過ぎて重要性を見つめ直す機会が少ないトイレですが、私たちの生活に欠かせないことは誰しもが理解しているところでしょう。そんなトイレを愛してやまず、全国各地のトイレを取材する「トイレハンター」として活躍しているのが、グラフィックデザイナーやウェブディレクター、ライターといった多彩な顔を持つマリトモさん。昨年、10年以上にわたって集めたトイレの写真を載せた『ニッポンのトイレほか』を発売し、テレビや雑誌などでも注目されています。そんなマリトモさんにトイレの魅力について伺いました。
自然に囲まれており、誰かに見られているようなスリル感が味わえるトイレ
――今までみたトイレのなかで一番インパクトがあったのはどんなトイレですか?
マリトモさん(以下マリトモ):千葉県の房総半島に飯給(いたぶ)駅という無人駅があるのですが、駅を出たところにある公衆トイレがかなり強烈な造りです。広さが約200平米ある女性用トイレなのですが、柵に覆われている敷地の中にガラスに囲まれたトイレがポツンとあるんですね。卒倒してしまうようなロケーションで、空や山といった自然に囲まれており、誰かに見られているようなスリル感が味わえます。
色々なトイレを体験してきた私でも、躊躇して用を足すのに5分以上かかってしまいました。カーテンが設置されているので、閉めて利用されることも可能ですが、是非カーテンなしで自然を肌で感じながら用を足していただきたいです。
日本のトイレは清潔さや快適さも間違いなく世界一
――トイレのどんなところに惹かれますか?
マリトモ:便器よりも、トイレの空間に興味があるんです。会社でもお店でもトイレにすべてが表れていると思っているので、空間作りや機能性など、どんなところに気を配っているのかを知りたいですね。小さい頃から見知らぬ家や店の窓から漏れる灯りや外灯を写真に撮ったりするのが好きだったので、「人が何気なく生活する空間」そのものに興味があるのかもしれません。
――日本は温水洗浄便座や「音姫」をはじめ、トイレの技術が進んでいるといわれています。実際のところいかがでしょうか?
マリトモ:日本のトイレは世界に誇れる最新技術の結晶で、清潔さや快適さも間違いなく世界一だと思いますね。温水洗浄便座は日本発祥のものではありませんが、改良のレベルがすごいんです。例えばTOTOの「ウォシュレット」は、日本人のおしりに水があたるベストな角度を研究し、43度という黄金角度を見つけ出しました。
「音姫」にいたっては最近出てきたように思われますが、排泄音が気になるという日本人の中でも女性ならではのはじらいは、平安時代にまでさかのぼるんです。当時貴族のお姫様が用を足すときはお付きの人が杓子に水をすくって落とすというような、音消しの習慣があったそうです。こうしたところに日本人ならではの奥ゆかしくて綺麗好きな精神性が表れているなと思います。