2011年にパリでスタートした、My Little Box。月ごとに異なるテーマでセレクトされたコスメやアクセサリーを詰め込んだボックスが届くサービスは、瞬く間に多くのパリジェンヌたちを魅了。日本には昨年の秋に上陸し、サービス開始から1年で登録者は1万人を突破している。30歳で起業し、昨年には「フランスで最も影響力のある女性100人」に選ばれたという創業者のファニー・ペショダ氏に話を聞いた。
贈り物を受け取る時のワクワクした気持ちを届けたい
――My Little Boxを始める前に、ファニーさんはどんな仕事をしていたのか、それがMy Little Boxにどう繋がったのかを教えてください。
ファニー・ペショダ氏(以下、ペショダ):以前は大手のコスメ会社で働いていました。絶え間なく1,000個以上の新作が出る中で、女性たちがすべての製品を試してみるのは難しいですよね。そこで私自身がベストだと思うものをセレクトして皆さんにおすすめしたいと思ったのが、My Little Boxの始まりです。
――それはセレクトショップや雑誌と同じ考え方ですが、そこからさらに踏み込んで、セレクトしたアイテムを実際にポストまで届けるサービスを始めたのはなぜでしょうか?
ペショダ:私自身、アマゾンでよく買い物をしますが、自分で注文しているので何が届くのかわかるし、いつもあの茶色の箱で送られてくるのが少し残念で。小さい頃におばあちゃんから贈り物が届いた時のような、気持ちがこもったものを楽しみながら開ける、そのワクワクも届けたい、というのがサービスを開始した理由です。
――2008年に前身であるMy Little Parisというメールマガジンがスタート、2011年にMy Little Boxが誕生し、日本にサービスが広がるまでのスパンが短いのが驚きです。
ペショダ:アイデアを思いついた翌日にはメールマガジンをスタートしていました。ウェブだからこそ、早く実現できたのだと思います。コスメ業界で働いていた頃には、構想から製品ができるまでには2年くらいはかかっていました。その反動ではありませんが、My Little Parisではいいと思うアイデアはすぐにトライして、結果を見ながら微調整していく、というのを繰り返しています。だからこそ、いろいろなプロジェクトをスピーディーに進めてこれたのではないかと考えています。
――My Little Parisによって、ご自身にも変化はありましたか?
ペショダ:私の人生で一番大きな変化は、趣味としてニュースレターを始めて6か月で1万人の会員を獲得できたこと。それまでは、起業するには時間もお金もかかるのではないかとも思っていましたが、自分のベッドルームでPCとWi-Fiさえあればいいことがわかって、一気に考え方が変わりました。インターネットのパワーを知って視野が広がり、できることが無限にあるのだと実感したんです。
大きなビジネスでも、目線はパーソナルなコミュニケーション
――独立する際、ビジネスとして勝算があったのでしょうか?
ペショダ:始めてから半年間は前の会社に在籍していましたが、会員が1万人もいるとわかった段階で辞めました。もちろん不安もありましたが、私にとっては仕事を失うことよりも、目の前のチャンスに挑戦しないことのほうが大きなリスクでした。もしうまくいかなくても、いつでもコスメ業界には戻れると思ったし、自分のやりたいことを実現できそうなのに追い求めないという選択肢はありませんでしたね。
――最新のBoxでは、ファッションデザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグとコラボレーションしていますね。
ペショダ:私はダイアンのことをとても尊敬しています。彼女は500万枚売れた「ラップドレス」で有名になりましたが、セクシーすぎず、カジュアルすぎないドレスで、フランスでもとても人気があります。それから、彼女の「なりたい女性になろう」というフィロソフィーにも共感していました。ダイアンのドレスを着ると、なりたい自分になれるような不思議なパワーをもらえます。ダイアンにMy Little Boxのプレゼンテーションをしたところ、女性が作った会社がここまで大きくなったことに共感してもらえて、一緒にボックスを作ることになりました。
――ダイアンさんもパワフルで時代を作った女性ですが、ファニーさんも昨年、「フランスで影響力のある女性100人」に選ばれたそうですね。ご自身としてはなぜ選出されたのだと思いますか?
ペショダ:私自身というよりも、My Little Parisの影響力が強いのではないかと。現在、メルマガの会員は150万人ほどにもなり、たとえばMy Little Parisで本を紹介すると、アマゾンのランキングのトップ10に入るなど、製品や情報への反響も大きいんです。
――My Little Boxのウェブサイトも拝見したのですが、軽やかで楽しい雰囲気にあふれていますね。
ペショダ:ずいぶん規模が大きくなったとはいえ、パーソナルなコミュニケーションを心がけ、読者から届くたくさんのメールにはひとつひとつ返事をしています。それからパリでは毎日、My Little Boxの登録者の中から抽選で1名に花を贈っています。また、「仕事を辞めるので解約します」という方には、My Little “GOOD LUCK” Boxを作って送ったり。ただオンラインで注文してもらって届けて終わり、ではなくて、感情を乗せたものを送るのがMy Little Boxのビジネスなんです。そして、「サプライズ」がMy Little Boxのフィロソフィーでもあるので、ボックスを開いた時に驚きや新しい発見を感じてもらえるよう心がけています。
――ファニーさんはドラマティックな30代を過ごされていますが、同じく30代で岐路に立っている女性に何かアドバイスをいただけますか?
ペショダ:過去にとらわれずに、「これから何をしたいか」という視点を持つことが大切だと思います。私が会社で面接をする時には、応募者の経歴よりも、これから何をしたいのかを重視しています。パリのオフィスには元・オペラ座のバレエダンサー、コメディアンや裁判所で働いていた人など、さまざまなバックグラウンドを持ったスタッフがいて、みんなでMy Little Parisを作り上げています。過去が自分の選択のバリアにならないよう、自分がこれから何をしたいのかを考えて人生を歩んでいただきたいですね。
取材協力:My Little Box Japan
(松江未生)