「女も強く輝け」というプレッシャー パンテーンのCMにネットで賛否両論

「女も強く輝け」というプレッシャー パンテーンのCMにネットで賛否両論

11月9日に YouTube にアップロードされた動画が注目を集めている。日本でもおなじみP&Gの「パンテーン」がフィリピンで出したCM動画で、再生数は11月26日時点でなんと1,700万回を超えている。

 

 

「Labels Against Women」(女性に対するレッテル)と題されたこのCMは、同じことをしていても男性と女性で周囲からの捉えられ方が違うという、一種の性差別を表した内容となっており、物議をかもしている。

まずは動画の内容を紹介しよう。

廊下を颯爽と歩く女性

ビルの廊下を颯爽と歩く女性の姿からシーンが始まる。すると、その女性と同じように歩く男性の姿も。二人とも、高いキャリアを持つビジネスパーソンのようだ。続いて動画は二人が働く様子を代わる代わる映して行く。そしてそれぞれの場面で、周囲が二人をどう思っているかを表す言葉が浮かんでくる。

人に指示を出す男女

【シーン1】:人に指示を出す男女
●男性=BOSS(上司) ●女性=BOSSY(上司気取りで、偉そうに振る舞っている)

演台の前を熱弁を振る男女

【シーン2】:演台の前を熱弁を振る男女
●男性=PERSUASIVE」(説得力がある) ●女性=PUSHY(強引で厚かましい)

夜中までひとりで働く男女

【シーン3】:夜中までひとりで働く男女
●男性=DEDICATED(熱心) ●女性=SELFISH(自己中心的)

顏を洗う男女

【シーン4】:顔を洗う男女
●男性=NEAT(こぎれい) ●女性=VAIN(うぬぼれ)

オシャレな服を着て横断歩道を渡る男女

【シーン5】:オシャレな服を着て横断歩道を渡る男女
●男性=SMOOTH(洗練された) ●女性=SHOW-OFF(目立ちたがり屋)

パンテーンCM_cap6

そしてCMはこのメッセージで終わる。
「DON’T LET LABELS HOLD YOU BACK. BE STRONG AND SHINE.」
——世の中の決め付けに負けないで。強く輝く人になろう。

あえてダブルスタンダードを打ち出したパンテーンに賛否両論

「同じことをしていても、男なら許されるのに」そんな思いを抱いたことのある読者も多いだろう。このように、女と男で同じことをしていても評価を変えるような考え方を、「二重規範」(ダブルスタンダード)と呼ぶ。今回のCMは、そんな二重規範の中で生きる女性たちへの励ましのメッセージなのである。

動画のコメント欄には、以下のようにさまざまな意見が並んだ。

・力強いメッセージだ
・私はフェミニストじゃないかもしれないけど、このメッセージは素晴らしいと思う
・性別を理由にレッテルを貼られてるのは女性だけじゃなく男性もだってこと、
みんな忘れがちじゃないかな
・20年前はな。成長しろよお前ら。永遠に被害者気取りはできないぜ

「強い女になれ」という見えないプレッシャー

一方、当のフィリピン女性たちはこのCMを観てどのように感じたのだろう? パンテーンとRapplerというニュースメディアがフィリピンで開催したイベントの動画の中に、興味深いコメントが見つかった。

 

 

・ガラスの天井(性差別は無くなったかのように見えるが、女性が高い社会的立場に上り詰めようとすると見えない障壁にぶち当たるということを表す言葉)はもちろん問題だが、多くの女性は天井じゃなくて周囲の壁を壊すために必死なのだ
・メッセージはいいが、女性の多様性、特に階級の多様性が描かれていない。性差別について最も情報を必要としている人たちを置いてきぼりにして、教育を受けている女性のことだけを考えていたらエリート主義に見えてしまう

これらフィリピン女性たちの声は、現代の日本女性たちの境遇にも通じるものがある。

パンテーンがターゲットにしたのは、かっこいい「新しい女性像」にあこがれる女性たち。しかし、世界的に見ても働く女性の多くは管理職でも正社員でもない。パートや派遣、アルバイト、無償労働など不安定な仕事をしている人が大多数だ。

そんな女性たちにとって、このCMはある種のプレッシャーとして映るかもしれない。一部の女性の社会進出が進み、生き方が多様化している現代、性差別とともに”女女格差”についても今後考えていかなければいけないだろう。

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