リモートワークで全身がこる…という読者の悩みにお答えし、「さとう式リンパケア」(歯科医の佐藤青児氏考案のメソッド)のインストラクターで江上歯科(大阪市北区)・口腔ケア研究室室長の江上浩子さんにケア法を連載で尋ねています。
今回・第9回は、上半身のこわばりを緩めて、寝つきをよくするリンパケアを教えてもらいましょう。なお、これまでご紹介した、肩やあご、腰、姿勢、二重あごなどのリンパケア法は文末の記事一覧のリンク先を参照してください。
上半身のこりほぐしで寝つきも改善
肩やあごまわり、わき、腕のこりがつらいときは、どうにも寝つきが悪いように思います。江上さんは、上半身のこりと寝つきについてこう話します。
「あごや肩、わき、背中、腕がこっているとき、痛いだけではなくて、寝つきまで悪くなることがあります。また、不安や考えごとがあって頭がさえて眠りにくいときは、あごから腕まで、上半身がこわばってリンパ液やリンパ間質液(組織液のこと。リンパ液のもととなる。第1回参照)の流れが滞っている可能性もあります。
そこで、それらのリンパの流れを促すために、深呼吸をしながら上半身の筋肉を緩めて呼吸を楽にしていきましょう。自律神経のうち、緊張モードのときに働く交感神経が優位な状態から、リラックス時に働く副交感神経が優位な状態になり、眠りやすくなるでしょう」
「片手ばんざいリンパケア」実践法
(1)あご周りのこりを緩める
あお向けになり、まず、左の手のひらを反対側の右あごから頬(ほお)の「咬筋(あごの周囲にある、噛むときに使う筋肉)の場所」に、薬指と小指で右耳を挟むようにして、そっとあてます。その状態のまま、右の腕を「バンザイ」するようにぐっと伸ばしましょう。手のひらは内側に向けておきます。
その姿勢で、鼻から息を吸い、口から息をゆっくりと吐く深呼吸を3回くり返しましょう。息を吐くときに筋肉は緩むので、吐くと同時に力を抜いて気持ちも緩めましょう。
(2)首のこりを緩める
(1)の姿勢のまま、左の手を下げて右の首筋に手のひらをあて、深呼吸を3回くり返しましょう。首に手が入りにくい場合は、バンザイしている手を下げて左手を首にあててから、再度右手を上げてください。首筋の筋肉(広頚筋・こうけいきん)を緩めています。
(3)胸のこりを緩める
まず、左の手のひらを右の鎖骨(さこつ)の下あたりにそっとあてます。上げていた右の腕を床につけたまま滑らすようにして、肘(ひじ)を直角に曲げた状態にします。手のひらは内側に向けておきます。もし内側に向きにくいときは無理をせず、自然の状態でOKです。これで胸の筋肉(大胸筋・だいきょうきん)が開き、緩みやすくなります。
そして、深呼吸を3回くり返しましょう。この状態のまま、手首を軽く揺らしたり、グーパーと手を軽く握る・開くをくり返すと、その動きで大胸筋がより緩みやすくなります。
(4)左右の腕を入れ変えて、反対側も同様に行います。1セット3分ほどでできるでしょう。2~3セットを続けるとさらに緩んで楽になります。
「この片手ばんざいリンパケアは、第2回で紹介した『耳たぶ回しリンパケア』と同様に、基本の方法です。『耳たぶ回し』を行ってからこの『片手ばんざいリンパケア』を行うと、さらにあごや肩のこりは改善するでしょう」と江上さん。
最後に、「片手ばんざいリンパケア」を実践するタイミングや回数について、江上さんはこうアドバイスを加えます。
「寝つきを良くしたい場合は、寝る前に布団の中で毎晩行ってください。また起床時に行うと、就寝中の食いしばりなどによる咬筋のこわばりをほぐすことができるでしょう。ただし、リンパケアはできるときにいつ行ってもかまいません。回数も思いつくままでOKです。
デスクワーク中に肩やあご、わき、背中、腕に疲れを感じたらすぐに椅子の背もたれにもたれて行うのも有用です。上半身を緩めて、リンパの流れを促すことを意識しましょう」
聞き手によるまとめ
さっそく寝る前に布団の中で行ってみると、深呼吸をくり返すたびに、体も気分もだらんと緩んでくることを実感しました。(3)の前に眠気がやってきて、そのまま寝落ちたこともあります。デスクワーク中でも椅子に座ってできるので、とくにパソコン操作が長く続くときには、休憩タイムのこりケア法として日常的に取り入れたいものです。
次回・第10回は、「リンパケアで足先から温める… デスクでできる冷え対策」をご紹介します。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)