『在宅楽飯』ウエキトシヒロさんインタビュー後編

料理家・ウエキトシヒロ「在宅楽飯をこれからの時代のスタンダードにしたい」

料理家・ウエキトシヒロ「在宅楽飯をこれからの時代のスタンダードにしたい」

Instagram(インスタグラム)のフォロワー数は15.6万人*、12月8日放送の情報番組「首都圏ネットワーク」(NHK総合)に出演するなど、幅広いメディアで活躍する料理家、ウエキトシヒロさん。2020年9月には友人で料理家の・かおしさん、ぐっちさんとレシピを出し合った『在宅楽飯100 15分で最高のおうちごはん』(大和書房)が発売されました。

*2020年12月4日時点

同書では、定番の麺やパスタ、炒飯、のっけるだけ丼など、一皿だけで昼ごはんにも夜ごはんにもなる知恵と工夫が詰まった100のレシピが紹介されています。

後編では「在宅楽飯」という名前に込めた思いを語っていただきました。

ウエキトシヒロさん

ウエキトシヒロさん

『在宅楽飯』がジェンダー平等のきっかけになれば

——『在宅楽飯』はどのような経緯で出版が決まったのでしょうか?

ウエキトシヒロさん(以下、ウエキ):もともと、普段から仲良くしている2人の料理家、かおしさん、ぐっちさんとこのコロナ禍でも何か面白いことができたらいいよねということからはじまりました。ハッシュタグを作ってSNSで広げられたらいいよね、と。

——コロナ禍で?

ウエキ:はい。少し前から、僕は自分の仕事にもサステナビリティが必要だと考えるようになって、フードロスの問題も発信していきたいと考えていました。たとえば、ブロッコリーの芯までおいしく食べる方法とか、食材を上手に使い切って食材の廃棄量を削減できないかとか。だけど、このコロナ禍において、やっぱり男性も積極的に料理に参加して、これまで女性が中心だと考えられていた家庭での料理の概念を変えられないかなと思ったんです。

——SDGsの文脈で言うとそれがジェンダーフリーにあたると思ったわけですね。

ウエキ:はい。だから、Twitterでも

【在宅楽飯をこれからの時代のスタンダードにしたい】

コロナ後の世界はジェンダーフリーにより近づいてほしい。
「女性なんだから料理して当たり前」を変えたい。
「男性の家事ではなく趣味としての男の料理」を変えたい。

女性も男性も楽に楽しくご飯を作ろう。助け合いの在宅楽飯です」

と固定ツイート*で表明して。

ウエキさんのツイート

——在宅勤務が広がる中で、パートナーと暮らしていれば、食事の回数も平等に訪れるわけで。どちらが調理をしてもいいですよね。

ウエキ:在宅勤務で夫婦ともに家にいて、どちらも仕事をしているという状況下で、食事の時間になったら妻だけが料理を作らなきゃいけないというのは、やっぱりおかしいですよね。そういったところから変えなきゃいけないと思います。

僕は男性料理家としてさまざまなメディアに出ることがあるのですが、女性向けには「ラクに作る」とか「時短」といったテーマが求められることが多くて、一方男性向けには「贅沢に時間をかけて作る」というものが求められることが多いんですよ。いろんなニーズがあってもいいんですけど、そこに男女は関係ないんじゃないかと違和感を持つようになりました。だから、『在宅楽飯』がジェンダー平等のきっかけのひとつになれたらうれしいですね。

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「楽」に込めた思い

——たしかにそこに男女の役割は関係ないですね。

ウエキ:そのような経緯で「#在宅楽飯」をスタートしたところ、開始直後に共感してくれた人たちがハッシュタグを使った投稿をしてくれるようになりました。その様子を見た大和書房さんが書籍化を提案してくれて制作が始まったという感じです。

——「在宅楽飯」というタグになったのはどうしてですか?

ウエキ:3人で何か企画をやろうと話したときは仮で「在宅ごはん」だったのですが、ちょっとインパクトに欠けるなとも思って。もっと面白いタグにできないかと、みんなで案を出し合って、出てきたのが「在宅楽飯」でした。

「楽」というキーワードはぐっちくんが出してくれて。そこにかおしさんが「楽には、手軽さだけではなく楽しいという意味を含められるからいいのではないか」と、僕たちが込めたい思いを見出してくれて。このハッシュタグに決まりました。

——時短とか手抜きという流れで使われることもありますが、「楽しい」も大事な要素ですね。

ウエキ:はい。在宅で楽にご飯を作る。在宅で楽しくご飯を食べる。そんな願いもかけました。

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リモートでレシピ本を制作

——SNSでアップしていたレシピのほかにも、書籍用に作成したレシピも多いそうですね。

ウエキ:はい。未発表のレシピも多く収録されているので、ぜひ本も楽しんでいただければと思います。また、今回、コロナ禍ということもあって、リモートで制作したんですよ。僕は東京、かおしさんは岡山、ぐっちくんは兵庫とそれぞれの場所で執筆や撮影を行いました。

——え? リモートでレシピ本が作れるんですか???

ウエキ:はい。実は担当編集者さんと対面でお会いしたのも、本が完成してからなんです(笑)。

——新しい働き方がここにも……!

ウエキ:自分たちでスタイリングをして撮影もしてというのは大変ではありましたが、もともとインスタグラムに投稿しているので、普段していることの延長という感覚でできました。何より仲がいい人たちと一冊にまとめられたのは、いい経験になりましたね。

おうちごはんで気づけること

——本が出版されて、反響はいかがですか?

ウエキ:そうですね……出版前から「こういうタグを待っていた」という感想はいただいていて。一人暮らしの男性から「これなら僕でも作れそうです」というコメントをいただいたのは印象に残っています。

「楽」、「簡単」というキーワードは、普段料理を担当している人にとっては即戦力になるものだし、料理をしない人のハードルを下げることにもなります。僕らはその差を「在宅楽飯」で埋められたらいいなと思っています。

——外食も楽しいけど、自炊には自炊の良さもありますからね。

ウエキ:そうですね。おうちごはんのポイントは「自分が食べる料理」だということにあると思います。そこには、美味しいか美味しくないかだけではなくて、家計や健康への意識も関わってきますよね。自分に必要なものを自分で選んで、調理して食べる。それって、“意識の高い人”だけがすることじゃなくて、この先の時代、どんな人にも大切なことになると思います。

(取材・文:安次富陽子、撮影:大澤妹)

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