『在宅楽飯』ウエキトシヒロさんインタビュー前編

料理を通じて「自分にしかできないこと」を探していきたい【在宅楽飯】

料理を通じて「自分にしかできないこと」を探していきたい【在宅楽飯】

Instagram(インスタグラム)のフォロワー数は15.6万人*、12月8日放送の情報番組「首都圏ネットワーク」(NHK総合)に出演するなど、幅広いメディアで活躍する料理家、ウエキトシヒロさん。2020年9月には友人の料理家・かおしさん、ぐっちさんとレシピを出し合った『在宅楽飯100 15分で最高のおうちごはん』(大和書房)が発売されました。

*2020年12月4日時点

同書では、定番の麺やパスタ、炒飯、のっけるだけ丼など、一皿だけで昼ごはんにも夜ごはんにもなる知恵と工夫が詰まった100のレシピが紹介されています。

「在宅勤務で料理の回数が増えた今だからこそ女性も男性も手にとってほしい」と話す、ウエキさんにお話を聞きました。前後編でお届けします。

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フォロワーが15万人になるまで

——『在宅楽飯』、うちでも何品か作ってみました。普段は自炊をしないんですけど、パッと作れておいしかったです。

ウエキトシヒロさん(以下、ウエキ):ありがとうございます。このコロナ禍で家にいる時間が増えて、毎日のご飯作りを担当している人、自炊をはじめたいと思っている人たちの助けになればと思って作ったのでうれしいです。

——ウエキさんは料理家・フードスタイリストとして活躍されていて、インスタグラムのフォロワーは15万人を超えています。料理はいつ頃から?

ウエキ:インスタグラムをはじめたのは、5、6年前です。もともとグラフィックデザインの仕事をしていて、料理は趣味程度だったのですが、2011年の東日本大震災をきっかけに、完全に自炊に切り替えました。趣味から日々のご飯作りになったときに、続けるにはモチベーションを保つ工夫が必要だと思い、ブログをはじめて。その後、インスタグラムに移ったというかたちです。

——フォロワーの増加にはどんなきっかけが……?

ウエキ:僕の場合、バズって爆発的に増えたというよりも、長く続けているうちに徐々にフォロワーが増えたという感じです。最初のころは「ワンプレートで見栄え良く」という点を意識していたので、雑誌の盛り付け特集などで声をかけてもらえるようになって。目の前の依頼をひとつひとつ完遂させるうちに、フードスタイリスト・料理家としての仕事が増えたという感じです。おかげさまで現在は、ほぼ料理の仕事ですね。

——グラフィックデザイナーから、料理家とは思い切ったキャリアチェンジです。

ウエキ:料理の仕事の比重は多いですが、まだグラフィックデザインの仕事も受けていますし、インテリア関係の仕事をしている妻とECサイトを運営したり……ということもしているんです。

——完全に切り替えたのではなく、ゆるやかに幅を広げていらしたのですね。

ウエキ:そうですね。ただ、いろいろとやる中で、料理の仕事が僕の性格に合っていると感じることが多いです。

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自分の強みを活かして今と向き合う

——どんなところが?

ウエキ:グラフィックデザインの仕事がメインのときは、拘束時間の長さや急な修正対応など、なかなか自分のペースで仕事ができないことが悩みでした。長い将来を考えたとき、僕はずっとこの繰り返しがしたいのか、できるのかと自分に問いかけたら答えは「NO」でした。それに、「自分にしかできないこと」がしたいと思ったんですよね。

——キャリアの現在地と目的地で迷う。自分だからできることを見つけたい……。わかります……!

ウエキ:それで、もともと持っている技術に対して、何か掛け合わせるものを探してみたら料理がしっくりきた感じです。

——なるほど。デザインのお仕事をされているだけあって、盛り付けや写真、文字の入れ方などが素敵ですよね。

ウエキ:ありがとうございます。そこが僕の一番の強みだったと思います。「グラフィックデザイン出身の男性が料理の盛りつけに関する本を出した」というのが。

——「だった」? 今は別の強みが?

ウエキ:はい。最近は、盛り付けを見せるだけでなく、レシピや作り方の工程も説明するようにしていて。もう一歩料理に踏み込めるようになったというか……。

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名前のない料理の可能性は無限大

——盛り付けはデザインの経験が生きたかもしれませんが、レシピは勝手が違ったのでは?

ウエキ:そうですね。でも、レシピの開発をしながら気づいたことがあって。レシピもデザイン時代に培った経験と繋がっていたんです。たとえば、デザインを受注したときに、まずは案を何パターンも提出するんですけど、A案、B案だけじゃなくて、それこそI案、J案とかまで出すんですよ。さらに、A‘(エーダッシュ)、A’‘(エーダッシュ2)みたいなものも作るし……。一つのデザインに対してコピーが5案ある……みたいなことも当たり前にあって。

——想像以上に細かい。

ウエキ:いろんな組み合わせを試行錯誤しながら新しい可能性を探していく。僕としては、デザイナー時代からしていたことの延長の感覚なので、数を出すのが苦じゃないんですよね。

——具体的にはどんな組み合わせを?

ウエキ:この夏に見つけたのは「粒マスタード酢のブロッコリー冷しゃぶ」です。


ウエキさんのインスタグラムより)

——美味しそうです。粒マスタードって、ソーセージに添えるくらいしか思い浮かばなくて冷蔵庫の中で余りがちの調味料なので、アレンジレシピがあるとうれしい。

ウエキ:ありがとうございます。もともと、マスタードと酢が合うというのを知っていたので、じゃあ粒マスタードでもできるんじゃないかと。

料理をするというと、レシピを検索してしっかり材料を集めて、工程通りにきっちりというイメージを持つ方も多くいますが、僕としてはちょっと違った組み合わせを試してみるってだけでもいいと思うんですよね。

たくさんの材料を使って、たくさんの料理を作るのも楽しいけれど、一つの食材でいろいろと試して、バリエーションを探してみるのも楽しいですよと伝えたい。名前のない料理には無限の可能性があるので、そういうところを楽しむコツを届けていきたいなと思っています。

後編は12月9日(水)公開です。次回は料理のジェンダーフリーについても語っていただきます。
(取材・文:安次富陽子、撮影:大澤妹)

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