「妊娠がとても悪いことのように思える」 マタハラの過酷な現状と被害に遭った働く女性の苦悩

「妊娠がとても悪いことのように思える」 マタハラの過酷な現状と被害に遭った働く女性の苦悩

妊娠が職場で差別を受けるマタハラ現状

安倍政権が「女性が輝く社会」を掲げている一方、職場では妊娠や出産を理由に嫌がらせを受けたり、最悪の場合解雇されたりするマタニティーハラスメント(通称マタハラ)が後を絶たない。

9月24日にマタハラの被害者たちが厚生労働省に対し、妊娠や出産をする女性への違法な解雇や契約打ち切りをなくすよう求める要望書を出したことが報じられた。

また、妊娠を理由に降格されたのは男女雇用機会均等法に反するとして、理学療法士の女性が勤めていた病院の運営元に対して起こした訴訟の最高裁判決が10月23日に言い渡される。

新聞などではようやく最近になって取り扱うようになったが、マタハラの問題は以前からあり、多くの女性が苦しんでいた。

妊娠が悪いことのように思えて、体力的にも精神的にとてもつらい

「この忙しいのに、よく妊娠したよね」
「妊娠したからって簡単に休めていいね」

正社員として出版社で働いていたYさんは、上司に面と向かってそう言われた。妊娠が発覚し会社に報告しても、連日の徹夜仕事。無理がたたって体調を崩してしまい「流産などの大事にいたらないように休みが欲しい」とお願いしたときに言われたという。

「出産しても時短なんてありえない」「だから女を雇うのは嫌だったんだ」といった耳を疑うようなことを連日のように言われ、結局Yさんは耐えられずに仕事を辞めた。

「妊娠したからといって過去の業績なども全て無視されているようだった。妊娠がとても悪いことのように思えて、体力的にも精神的にとてもつらい状況に追い込まれました」と当時を振り返る。

一度仕事を辞めてしまうと、出産後、子どもを保育園に入れるのも難しくなってしまう。また、マタハラが横行している職場にずっと居続けたとしても、子育てしながらそんな職場で働くのは負担が大きいだろう。

仕事をしているから子どもを諦める。妊娠したから、今の仕事や役職を手放す。なんていうのはあってはならないこと。仕事も子どもも、両方手に入れて幸せになってもいいはずだ。

未婚で子どものいない女性の同僚からの嫌がらせも

もし今後、妊娠した際に、マタハラを受けてしまったらどうすればいいのだろうか。

まずは、出産、子育てを経験している人(先輩でも後輩でも可)に相談にのってもらう。その人も過去に同じようにマタハラを受けていた可能性が高いので、どのように対処していたのか聞いておくのもひとつの手。ことを荒げずに解決できる方法をさぐることもできるだろう。

もちろん、ことを荒げてでもマタハラは是正されないといけない問題だが、それにより会社に居づらくなって結局辞めなくてはならない雰囲気をさらに強めてしまっては、また別の負担が増してしまう。

そもそも、マタハラは上司がしてくる場合もあるが、結婚をしていない、そして子どものいない女性の同僚から嫌がらせを受けるケースも少なくない。「子どもができたからってなんで同じ給料しかもらっていない、私に仕事がおしつけられるわけ?」というようなことを言われるのだという。

実際には、同僚の助けなしに妊娠、出産、そして育児をするのは難しい。そもそも早く帰ることを許してくれる雰囲気が同僚にないと会社に居づらいし、同僚から嫌がらせを受けたら、会社に訴えても意味のないことなので、辞めるしかなくなってしまう。

働く女性のネットワークや女性弁護士に相談を

出産、子育て経験者の対処法を試しても状況が変わらない場合は、安心して妊娠、出産、子育てをしながら働き続ける社会の実現を目指すネットワーク「マタハラNet」などに相談するのも効果的だ。ここでは様々な体験談が寄せられているので、体験を共有し被害者同士で連携をとることができる。また、サイトには問い合わせフォームが用意されているので、そこから問い合わせれば法律のアドバイスをしてくれる。

日本労働弁護団でも「女性弁護士による働く女性のためのホットライン」(03-3251-5363・毎月第2水曜日 午後3時~午後5時)で無料電話相談を行っているので、話を聞いてもらい解決策を提示してもらうのもいいだろう。

仕事だって大切なアイデンティティーの一つ。理解のない人のせいでそれを失うなんてもったいない。小さな命を守りながら、仕事を続けるのは全女性の当たり前の権利。まだ一般的に広く認知されていないマタハラを、社会の問題としていくためには、被害に遭った女性たちが泣き寝入りをしてしまうのではなく、声を上げて権利を主張していく必要があるだろう。

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