うつ病治療中に妊娠をしたら…… 心療内科医に聞いた、中絶する前に考えたい胎児への影響と出産のリスク

うつ病治療中に妊娠をしたら…… 心療内科医に聞いた、中絶する前に考えたい胎児への影響と出産のリスク
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うつ病薬の胎児と出産への影響

仕事、恋愛、結婚など、日々ストレスにさらされるアラサー世代。体とこころの疲れが蓄積すると、「もしかして私って“うつ”?」と心配になってしまうこともあるだろう。

厚生労働省の平成23年度患者調査によると、うつ病患者は70万4,000人(参照:平成23年 患者調査)。カウンセラーなど医療機関外に相談している人も含めるとさらに数は増える。

長期間かけてじっくり治すうつ病の治療中に、予想外の妊娠をしたら……。抑うつ状態では性欲は減退するといわれているが、全く妊娠しないということはない。胎児への薬の影響と出産のリスクについて、パークサイド広尾レディスクリニックの心療内科医、仁王鈴佳医師に聞いた。

    抗うつ薬よりも喫煙や飲酒の方が、はるかに胎児に悪影響

「予想外の妊娠でパニックになってしまうこともありますが、投薬治療中の方は自己判断で薬を中断しないで。妊娠が分かった時点ですぐに医師に相談してください」(仁王医師)

通常の妊娠において、薬剤が胎児の脳、せき髄、身体形成に大きな影響を及ぼすのは、妊娠15週までとされている。その期間に抗うつ薬を飲むと一般に比べ胎児の奇形が増加する、といった明らかな証拠はない。抗うつ薬は「有益性が危険性を上回る場合、服用したほうがよい」とされているものが多いのが現状である。

「受精後2週間までの服薬が影響していた場合、早期流産するなど妊娠が成立しないか、あるいは受けた影響が修復されて健児を出産すると言われています」(仁王医師)

妊娠が発覚した時点で心配するべきは、発覚以前に飲んでいた薬よりも、発覚後にどうするかということだ。

症状が軽い場合は、精神療法やカウンセリングで対応できることがあります。服薬を中断できないような症状の場合でも、より影響の少ない薬剤を使用することを検討できます。ひとりひとりの状態や症状に合わせて、様々な方法で対処ができるので、薬を止めてしまったり、中絶したりせず、医師に相談してください」(仁王医師)

見落とされがちだが、あらためて仕事や生活習慣を見直し、パートナーや周囲の助けを得るこどなども、妊婦の受けるストレスを軽減することに効果があるという。

自己判断で薬を止めてしまって、再発の危険が高まったり、症状がさらに悪化してしまうこともある。自殺への衝動や焦りが高まるほうが、母子ともに命の危険が大きい。

「15週を過ぎれば、大きな奇形に関するリスクは下がります。内臓や神経系の形成や低出生体重などへの影響はゼロとは言い切れませんが、抗うつ薬よりも、喫煙や飲酒の方が、はるかに胎児に悪影響を及ぼします」(仁王医師)

妊娠によって女性のライフプランも家庭環境も大きく変わる。ホルモンバランスが大きく変動する妊娠・出産の時期に、うつ病を発症することも多い。

「以前は、ホルモンの影響で妊娠中はうつ病になりにくいといわれていましたが、現在では、妊婦と一般の女性の発病率は同じくらいだと言われています」(仁王医師)

    出産は産婦人科と心療内科の意見を聞いて

出産そのものは、産婦人科において行うことになる。

「産科と心療内科の連携が取れやすい、大学病院や総合病院を選ぶ方が多いです。妊娠と薬に関する専門外来を設けている病院もあるので、いろいろな立場からの意見を聞いた上で、判断していただきたいです」(仁王医師)

東京では国立成育医療研究センターが「妊娠と薬情報センター」を開設しているので、ここに相談することもできる。

出産自体はうつ病を患っていても、いなくても同じ。うつ病だからリスクが高まるということはない。

では、妊娠前にうつ病だったら、産後にうつ状態がひどくなる可能性は高いのだろうか。

「妊娠前にうつ病を患っていた方が、必ずしも産後うつ病になるということはありません。比較的多くの方が経験するベイビーブルーといった不安定な状態は、出産後のホルモンバランスの変動によるところもあり、数日から1、2週間で落ち着く場合がほとんどです。気持ちが落ち込んで、楽しさを感じないような状態が、出産から2週間以上経過しても続く場合は、産後うつ病を疑って受診したほうがよいでしょう」(仁王医師)

ストレスフルな現代において、真面目な人ほどかかりやすいといわれるうつ病。
理想の形は、うつ病の病状が落ち着いて、服薬を中止している中で、医師と時期を相談しながら妊娠の計画を立てること。

しかし、予定外の妊娠が判明しても、自己判断で突然薬を止めたり、中絶する必要はない。状態を見極めながら、元気な子供を産むことは可能だ。ひとりで抱え込まずに、まずは相談してみよう。

協力:パークサイド広尾レディスクリニック

(編集部)

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