自給自足か、農コンか? 都会で働くのを辞めて田舎で暮らしたいアナタに送る、女性をとりまく“農業事情”

自給自足か、農コンか? 都会で働くのを辞めて田舎で暮らしたいアナタに送る、女性をとりまく“農業事情”

田舎で暮らしたい女性のための農業事情

職場の人間関係、終わらない仕事、混んだ電車での通勤、そんな生活に疲れ切ってふとテレビをつけると、高木美保、工藤夕貴、林マヤの充実した農業生活が……。『ザ!鉄腕!DASH!!』のTOKIOにたくましさを感じ、映画館では美しい自然と対話する『リトル・フォレスト』や『ベニシアさんの四季の庭』にうっとり。

「あたしも自然に抱かれて農業する!」といきなり転職を決意する前に、現実の農業を直視するべく、女性をとりまく農業事情を取材した。

「女性のアイデア」に国が期待。農林水産省の「農業女子PJ」

2009年「農業×ギャル=ノギャル」を提案した農林水産省が、2013年に立ち上げた新たなプロジェクトが「農業女子PJ(プロジェクト)」だ。農業に従事する輝く女性をフィーチャーし、農業女子ならではの視点で企業とコラボ。新しい商品・サービス・情報を社会に広く発信していこうというもの。

農業女子PJでは「レンタルのニッケン」と女子が喜ぶ仮設トイレをプロデュース。9月にダイハツの軽トラ「ハイゼット トラック」のモデルチェンジに参加し、カラフルなボディカラー、フロントガラスのUV強化など、女子がアガる軽トラを発表。10月にはサブウェイで農業女子の農産物を使ったサンドイッチを一部店舗で発売するなど、多岐に渡って活動している。

アベノミクスでは農業の生産・加工・販売まで行う「第6次産業化」を促進。その中で「女性ならではの視点で農業にイノベーションを」とやたらに女性に期待しているが、実際、女性の農業ってどうなんだろう。

【初級】手始めに市民農園から。北海道で自給自足を目指すアラサー女子

結婚を機に、地元・北海道に戻り農業を始めた30代女性は、市民農園から始めて3年目。現在は、知り合いづてに小さな畑を借りている。目指すは自給自足なので、好きなものを好きなだけ育てる生活だ。

「作業もクワとスコップ、体力があればどうにかなります。苦手だった虫も今は足でつぶせるようになりました。困るのは日焼けくらい。自分で育てたものは、種、肥料、育て方、全て知っているし安心感があります。それに、とれたてを食べる喜びに勝るものはありません」

夏に草取りを怠って、土地所有者から「畑が大変なことになっとる!」とお叱りの連絡をもらったりすることもあるが、農業を通じて友達も増え、楽しく規模を拡大しているという。

【中級】長野で20アールを耕すアラサー女子。夢は豆腐を作ること

東京でフリーランスとして働くアラサー女子は、東京郊外の市民農園からスタート。4年目の現在は長野で計20アールの田畑を借りている。週の半分を東京で働き、残りは長野で農業をするという生活スタイルだ。長野では市営の「家庭菜園付き賃貸」に入居。そのほか現地の農家さんから田畑を借りている。

「いずれ自分の大豆で豆腐を作るのが夢です。だから畑で大豆、田んぼで米、あとは家庭菜園で野菜を少し。農機具は土地の所有者に借りています」

しかし、農業を本格的に始めて痛感しているのが収入の問題。

「まだ出荷するまでには至っていませんが、農業だけで生活しようとすると大規模にならざるを得ないし、設備投資にお金がかかる。天候にも左右されるので、ある意味賭けです。それに出荷できない規格外のものを加工して販売しようとすると、それも設備や製造許可が必要になり個人では限界がある」

農産物の加工・販売は、農家の嫁が手掛けていることが多く、道の駅やファーマーズマーケットでオシャレに販売されることも。有志で団体を作れば、自治体が製造許可申請のために設備や資金の面でバックアップしてくれることもある。

「農業をしていると自然と、地域の人とつながりを持って、作物を分け合ったり、情報交換をすることになります。向いている人は、充実感があると思います。ただ土いじりをしているだけじゃないので、会社勤めより忙しいですよ」

市民農園からステップアップするには、田畑を貸してくれる農家が必要だが、実は農地の無断の賃貸は出来ない。自治体が斡旋してくれるのを探したり、“クラインガルテン”という簡易宿泊施設付き菜園も人気があるので、それを利用しながらライフスタイルに合う農業の可能性を探るのもいいかも。

いきなり畑は買えません。本格的農業には覚悟と資金が必要

田舎で暮らしたい女性のための農業事情2

平成25年度の新規就農者数は5万800人(うち女性は1万1,600人)。しかし、完全な新規参入者は2,900人(女性は300人)にとどまる。新規参入するには土地と農機具、設備、そのための資金が必要だ。農地を購入するためには、自治体や企業での農業研修を受け実績を作ったり、自治体からの審査を受けたりする必要がある。お金があれば買えるわけではなく、一生農家を続ける覚悟と、農業経営のビジネスプランが必要なのだ。

本格的に農業を考えるなら、まずは全国新規就農相談センターに相談してみよう。独立経営、農業法人への就職など、ライフプランに合わせた農業の始め方を案内してくれる。

「農家と結婚」も一つの手。農コンは成功率高し!

農業を始めたいけどハードルが高い。となれば、農家の男性と結婚する、というのも一つの選択。

千葉県横芝光町の農業男性との婚活を企画する「田舎de婚活」の事務局によると、年々、女性の申し込みが増えているという。参加女性は、市民農園や農業体験で農作業経験のある女性が多く、「農業」という共通の話題があるため成婚率が高い。過去20回開催した婚活ですでに8組が結婚。現在、交際中のカップルもいるそうだ。

農業体験ができる「農コン」は、共同作業を通じて、早くお互いのことを知ることができる。真剣に結婚を考えている男性ばかりなので、もしかしたら、一生の仕事と運命の相手がセットで見つかるかもしれない。

(穂島秋桜)

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