外国籍女性DV被害の実態とは?

グローバル化が叫ばれる今、日本でも国際結婚が身近になってきました。しかし、実は、華やかな国際結婚の裏で、外国籍女性の家庭内暴力(以下、DV)被害も社会問題として浮上してきていることはご存知でしょうか。2011年に「移住労働者と連帯する全国ネットワーク・女性プロジェクト」が全国の自治体を対象に実施した調査によれば、DV加害者から被害者が一時的に逃れるための制度である「一時保護」を利用した女性のうち、外国籍の女性は8.6パーセントと、かなりの割合にのぼります。

『ウートピ』では、DV問題の実態が広く知られていない現状を受け、DV被害者支援の専門家やDV加害者更生の専門家などにお話を伺っています。今回は、まだまだ知られていない外国籍女性のDV被害の現状を、非営利活動法人「女性の家サーラー」のスタッフの方に伺います。

移住女性の婚姻や定住化が進み、外国籍DV被害者の支援が中心に

――団体設立の経緯を教えてください。

「女性の家サーラー」スタッフ(以下、サーラー:「女性の家サーラー」は、もともと、人身売買で日本に連れて来られた女性たちの帰国支援を目的に設立された団体です。1980~90年にかけて、タイの方を中心に、日本に連れて来られた人身売買被害者数が急増しました。団体名の“サーラー”は、タイ語で「あずまや」という意味なのですが、帰国までの間、心身を休めてもらえる場、という意味合いを込めて命名されました。

――現在は、どういった活動をされていますか。

サーラー:現在は、外国籍のDV被害者の支援が中心となっています。人身売買被害者の保護が行政主体になってきたことと、平行して移住女性の婚姻や定住化が進んだことが、大きな理由です。

具体的な業務としては、DVなどの暴力を受けて身を守る場が必要になったり、生活困窮に陥って住居を失ってしまった女性を一時的に保護するシェルターの運営と、電話での相談業務を実施しています。

外国籍DV被害者の在留資格が「脅し」の材料に

――外国籍DV被害者特有の問題には、どのようなものがあるのでしょうか。

サーラー:一つ目は、在留資格の問題です。外国籍DV被害者の方は配偶者が日本人であることも多いのですが、この場合の配偶者ビザは、日本人の配偶者の協力がないと延長ができません。こういった場合、在留資格の更新が、加害者が被害者を従わせたり、逃げられなくしたりする「脅し」の材料となることがあります。

日本国籍や、外国籍でも永住権を持つ子どもがいる場合、子どもの養育者として定住ビザが取れるケースが多いですが、そういったすべを持っていない人にとっては、逃げてから日本で暮らすことは非常に難しいです。

――外国籍の方ならではの弱い立場を利用されてしまうのですね。

サーラー:その通りです。ほかにも、情報へのアクセスの問題があります。外国籍DV被害者の方には、日本語が不慣れな方も少なくありません。言葉ができないと、やはり情報にアクセスすることが難しくなってしまい、DVを受けていても、どこにどう相談をしたらいいのかわからない。

これには、コミュニティの問題も関わってきます。日本で暮らしていても、同国人のコミュニティの中で生活している人は、情報へのアクセスが比較的容易なのですが、そうでない方は孤立する傾向があり、なにかあったときにどこに支援を求めればいいのかわからないケースもあります。

子どもがお母さんの文化に劣等感を抱く場合も

――お子さんがいる方の場合、どういった困難があるのでしょうか。

サーラー:そもそも、外国籍の方に限らず、子どもを連れてDV加害者である夫から逃げることは大変です。DVはあっても虐待がない場合、子どもに「このままの生活がいい」と泣かれてしまうこともあります。加えて、加害者のもとを離れることで、生活苦に陥るご家庭も少なくないのですが、子どもの場合はそれをとても敏感に感じますよね。

お母さんが外国籍の方の家庭で、DV加害者である父親が母子間のコミュニケーションの補助や、役所や学校の手続きをやっていたケースもあります。家を出てからはこういった手続きを全部お母さんがやらなければならなくなり、外国籍のお母さんにとってはなかなかハードルが高い。さらに、母子の関係を密にしていかないといけない大変な時期にコミュニケーションがうまく取れなくなると、子どもが不登校になる、非行に走る、などの問題も起こってきます。

――非常に複雑ですね。

サーラー:子どもがお母さんの文化に劣等感を抱いていたりする場合というのは、なおさらです。父親が、母親の文化に対し、日頃から馬鹿にしたような態度を示すケースもありますし、学校の同級生が自分のお母さんが所属している文化をどういうふうに扱うかを見ていく中で、子どもがそういった態度を吸収してしまう面があるんですよね。

自分の身近にもある問題かもしれない

――支援をする上で感じている課題は何ですか?

サーラー:DVから逃げたあとの対応が手薄になりがちなことです。たとえば、DVから逃げるために引っ越ししたあと、新しい地域で助けを求められる場がないことなどが挙げられます。大都市や、集住して外国の方が住んでいる地域でない限り、外国籍DV被害者をサポートするシステムもないし、こちらから探し出すすべもほとんどない。

――行政はこの問題にどのように取り組んでいるのでしょうか?

サーラー:DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)ができたことで、DV被害者に公的支援がおりるようになりました。私たちも、DV防止法ができてからは行政と連携して動くことが多くなりましたし、外国籍DV被害者の問題も、行政が「外国籍であっても市民である」という責任感を持って取り組んでいる姿勢は評価しています。

ただし、DV防止法というのは、言ってしまえば、DV被害者をシェルターで2週間保護しますよ、という法律なんです。生活が困窮している人は生活保護も利用できるし、新たな住居も行政からある程度保証される。しかし、そのような短期間で問題が解決することはあり得ないので、シェルターを出たあとの支援の充実は今後の課題ですね。

――一般の日本人の方は、この問題に対しどう向き合えば良いのでしょうか。

サーラー:身の回りの外国籍の方がいたら、普通に話ができるような関係性を築いていくことや、なにか困ってそうだったら手を差し伸べる、といったことをまずは始めたらいかがでしょうか。

外国籍の女性たちに、「身の回りの日本人はあなたたちの問題について知っているの?」と聞くと、「知らない」ってほとんどの方が答えるんですよね。やはり、問題を抱えていても孤立しがちなんです。「自分の身近にもある問題かもしれない」と心の片隅にでも気に留めることから一歩が始まるのではないでしょうか。

――日本社会全体としては、どのように向き合っていくべきだと思いますか。

サーラー:外国籍女性のDV被害のケースを見ていると、結婚紹介所を介して嫁いできて、そもそも夫婦間にパワーバランスの差があるケースや、夫が妻を「家事使用人としか見ていないケースなどが目につきます。

DVは突き詰めていくと、男性らしさや女性らしさをことさらに強調し、力関係を固定化させようとする問題が根底にあると思います。社会として、そういうところを足下から見直してみるのも、DVを考える上で非常に重要なのではないでしょうか。

ケイヒルエミ

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