30代から考えたい親の「遠距離介護」

総務省が今月発表した統計によると、日本国内における65歳以上の高齢者人口は過去最多の3,296万人にのぼり、総人口の約4割を占めることが分かりました。このうち、8人に1人は75歳以上の後期高齢者となり、高齢化に拍車が掛かっています。

こうした現状において読者の皆さんのなかにも、すでに親の介護をしているという人もいるのではないでしょうか。親が近くに住んでいればまだしも、遠くに住んでいる場合になにかあったとき、子供はどうすればいいのか、誰を頼りにできるのか……。漠然とした不安を抱いている人も多いかもしれません。そこで、離れて暮らす親のケアのひとつである「遠距離介護」という手段について、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として2005年にNPO法人「パオッコ」を立ち上げた太田差惠子さんにお話を伺いました。

親はいつ病気になるか分かりません

――「遠距離介護」とは、どのようなものなのでしょうか?

太田差惠子さん(以下、太田)
:言葉だけみると遠いところから通いながら、オムツを交換したり食事の介助をしに行くというイメージを持つ方もいらっしゃいますが、そうではなく離れた場所に暮らしながら介護サービスなどをとことん使ってサポートしようという主旨のものです。

――太田さんは「遠距離介護」という言葉を日本で初めて発信されました。遠距離介護の必要性を考えることになったきっかけを教えてください。

太田:私はパオッコを始める前まで、ライターをしていたのですが、介護の現場を取材する機会が多くありました。そのなかで、色々な問題や課題を感じることがありました。なかでも、親と離れて暮らす子供にとって親の介護の難しさです。同居もしくは施設入居、どちらか2択しかないような気がしていて、お互いがそれまでの生活をなるべく変えず、負担が少なくて済む介護方法はないものかと考えました。それが遠距離介護です。

――親の介護というと、子供にとっては「今までの生活を犠牲にして面倒をみる」というイメージから、ネガティブな印象を抱く人も少なくない気がします。そうした意味で、遠距離介護の利点はどのようなところにあると思われますか?

太田:実際にあった話ですが、新卒で企業に就職が決まった23歳の男性の母親がうつ病になってしまい、目が離せないということで、彼は仕事を辞めてお母さんの看護をすることになりました。これは、稀な例かも知れませんが、親の介護はまだまだ先のことだと思っていても、いつ病気になるか分かりません。若年性アルツハイマーや脳梗塞など介護が必要になってくる病気は60代からじょじょに増えていきます。

パオッコでは定期的にサロンを開催していますが、子世代の20代や30代の参加者も少なからずいます。40代から50代あたりになると介護をしている友達も増えて、相談できる人も増えていくのですが、20代30代は結婚や子育てが中心の世代ですので、親の介護の話はいつから考えればいいのかを含め情報が少ないですよね。孤独になってしまいます。

自治体や介護事業所など、頼れる人やサービスを把握しておきたい

――子供の負担を軽減するという意味でも、遠距離介護という方法は有効ということでしょうか?

太田:仕事や自分の生活と、介護をどうやって両立させるかを考えてもらいたい。自分の生活や人生設計を忘れないで頂きたいですんですね。親からすると自分のために、子供が色々なことを諦めるなんてことはして欲しくないわけです。また、親を呼び寄せて介護をするのも、上手くいくとは限りません。

介護は子育てと違って、目途がつきにくいんです。20年以上、親の介護をしている人はざらにいます。あまり近くにいても、お互いにストレスが溜まってしまいます。その点、遠距離介護は気持ちもリセットできます。

また、遠くにいながらも介護の専門職であるケアマネジャーに状況を確認しながら遠距離介護を行うことは不可能ではありません。

――子供は遠距離介護においてどのような役割を担うことが求められるでしょうか?

太田:情報収集は大きな役割となります。まずは、親が何に困っているのか、それを改善できる機関やサービスを知るところから介護は始まります。介護はある意味、情報戦です。金銭と労力の両面で、家族だけではなく自治体や介護事業所など、頼れる人やサービスを把握しておきたいです。

例えば、介護をスタートするとき、様々な情報を提供してくれる窓口が地域包括支援センターになります。まず、こちらに相談をして、介護サービス、ボランティアなど、親の住む地域にどういった社会資源があるのか調べてみましょう。

介護のお金は親のお金でプランニングが基本

――介護に掛かる費用も考えなくてはいけないですよね。

太田:介護のお金は親のお金でプランニングが基本だと思います。20代30代の方は自分の世帯の家計もやりくりしながら、親の介護費用を負担するのは厳しいと思います。自分たちの生活で精一杯のはずですから。

父親と母親どちらの介護をするかにもよりますが、専業主婦をしていた母親の場合、年金や生活費も限られてきます。そのためにも、親がどのくらいお金を蓄えているか、民間の入院保険等に入っているかなど、元気なうちにコミュニケーションをとっておくといいかもしれません。

――介護が必要な親を持つ人のなかには、やはり近くで面倒をみたいと希望される方もいると思います。親の介護と自分の人生の両立を図るには何が必要でしょうか?

太田:100人いれば100通りの介護の方法があります。大切なのは自分だけで抱え込まずに、経験者から話を聞いたり、介護についての情報を得ることです。判断材料を十分に揃え、親と自分の関わり方を踏まえた状態で決められるといいと思います。

あとは、やはり社会の理解と介護サービスの充実は欠かせないと思います。いま、企業などでも介護が理由の離職を止めるべく、介護施策を充実する動きがあります。育児休暇は子供のいる人だけのものですが、介護は全員に訪れることですよね。なので、自分が働く会社に、どのような介護施策があるか人事や総務にヒアリングしてしっかり調べた方がいいでしょう。

末吉陽子

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