今から覚悟…!怖いママ友世界の実状

生協の配達員が気になっている恵子、シングルマザーで女医の秋穂、スピリチュアルにハマっている千鶴、特撮俳優のおっかけで元キャバ嬢の綾子、そして不倫をしているセレブ妻の由美。小説『ランチに行きましょう』(徳間書店)では、それぞれに違った境遇の女性5人が、子供を同じ幼稚園に通わせていることで「ママ友」として知り合い、交錯していく姿が描かれています。成城の近くに住む彼女達は、一緒にランチに行くなど表面上は仲良し。だけど時には誰かを皆で無視したり、別の誰かをうらやんだりと、女のドロドロが存分に描かれています。

作者の深沢潮さんも2人の子を持つ、「幼稚園ママ」の経験者。そんな深沢さんに、ウートピ読者がいずれ味わうかもしれない、こわ~い? ママ友の世界について教えて頂きました!

セレブ志向の専業主婦のドラマチック症候群

――なぜ「成城の近く」を舞台にしたのですか?

深沢潮さん(以下、深沢):成城と千歳烏山の間あたりをあえて選んだのは、実体験から本当の富裕層かどうかは別として、セレブ志向の専業主婦が多いことがわかっていたからです。

もう10年以上前の話になりますが、この地域で娘を幼稚園に通わせていた頃、喫茶店の2階を借り切ってママ友同士で茶話会をしたんです。その時に「ご主人の職業は?」とか「お兄ちゃまはどこの学校に通っているの?」とか、私本人ではなく家族のことばかり聞かれてとても驚いて。

当時私はパートタイムで日本語教師をしていたのですが、私の仕事などみんな無関心。でも女医とか客室乗務員みたいな、いわゆる「女性の花形職業」についていたママ友には、嫉妬と羨望の眼差しが集まっていました(苦笑)。一方、母性に反しない料理の先生などには温かい目が向けられていました。キャリア志向の女性だったら、この状況は結構キツイですよね。ちょっと見栄っ張りでセレブぶりたいママ達と、彼女達を外側から見ているママ(秋穂)を描きたかったので、あえて成城の近くを舞台にしました。

――5人の登場人物は、実際のママ友がモデルですか?

深沢:自分の周りにもスピリチュアルにハマっている人はいましたし、韓流スターや歌舞伎俳優のおっかけをしている人もいました。なので実際に見たことを混ぜながら、いかにもいそうなキャラを作りました。

彼女達は自分の幸せに気付いていなかったり、夫に疑いを持ったりと、それぞれに悩みや問題を抱えています。でもそれは多分、女性はドラマがないと生きていけないものだけど、結婚するとほとんどの場合、ドラマが終わってしまい、不満が膨れてしまうことが原因のひとつでもあります。とくに専業主婦はその傾向が強いと思います。だから実際に不倫をしたり、妄想でドラマを疑似体験したりしてしまうのかもしれません。そんな女性のドラマチック症候群傾向を踏まえて、この5人を登場人物にしました。

同級生の家を全部見に行く、他人の連絡帳を盗み見……トンデモママの実態

――ママ友カーストって、実際にあるんですか?

深沢:地域やその時の雰囲気次第だとは思いますが、私の時はありました(苦笑)。今まで深い人間関係を築いてこれなかった分、逆に新しいサークルに期待し、張り切って強引な人とか、上の学年に兄弟がいて、園のことを分かっている先輩が大抵はカーストのトップになります。だからそれ以外の人は、最初は自分を出さずに感じよくふるまうことが求められていました。まさに『ランチに行きましょう』の恵子のようないい人キャラでいることが、カースト下位に行かないコツ。

私の子供が通っていた幼稚園に、最初のうちは皆にチヤホヤされている華やかな職歴を持つママがいました。でも彼女はあまりにもおおげさな話をする人だったので、あっという間にカースト下位に落ち、しまいには仲間はずれになっていました。その幼稚園は家族旅行に行ったら、同じクラスの皆にお土産を買って渡すしきたりがあったんです。でもそのママの子だけ、沖縄みやげのパインハイチュウをもらえてなくて。露骨ですよね~。

――深沢さんが実際に遭遇した、「トンデモママ友」っていますか?

深沢:やっぱり息子の幼稚園で出会ったのですが、そこの園では人数が少なく、今と違って当時は個人情報に神経質でなかったこともあり、住所名簿を入園前に配っていました。ある時1人のお母さんが突然、「深沢さんはどこどこのマンションですよね」って言ってきて。同級生の子達の家を全部見に行ってたんですよ! あとそのお母さん、子供達の行動や友達関係を把握したかったのかわかりませんが、よその子の連絡帳を盗み見たりもしていました。でも普段会うと、とても感じのよい方だったんです。

あとはパパの話ですが、自営業で昼間時間があったのか、子供を幼稚園に迎えに来るパパがいたんです。彼は園の前でタバコを吸って、吸い殻をポイ捨てしていました。汚れるし、子供の目の前でそれもマナーとしてもアウトだし、子供達が拾って遊んだら大変だと思っていたので、なにかの折に「タバコのポイ捨てはまずいよね」と私が言ったら、誰かが告げ口したらしく、その夫婦から無視されるようになりました……。

ママ友には感じよく接しつつ、それ以外の世界を持っておく

――「ママ友の争い」に巻き込まれない方法ってあるんですか?

深沢:まず最初に誰がカースト上位なのかを読むことと、しばらくは自分をあまり出さない。たとえ正義感からだったとしても、本質をつくようなことを言わないことも大事です。仲間にまったく入らないと園や子供の様子などの情報自体が入ってこないので、それはそれでオススメしません。子供の付き合いにも影響します。

だから一番いいのは、ママ友達が世界の中心にならないよう、それこそ1人でできる趣味やほかに没頭できるもの、できれば仲間のいるものを見つけて、違う世界も持っておくことです。今はSNSでつながれるので孤独を感じないで済みますし。そうすれば「ここでうまくいかなくても、別にいいや」と思えるようになります。あと、学生時代や働いていた時の仲間ともつながっておく。外されるのはつらいけれど、自ら離れるのはかえって楽に思えます。

ただしそれでも挨拶は欠かさず、ランチの誘いを断るのは3回に1回程度にしておくこと。日頃感じよく接しておけば、「あの人社交的じゃないのよね」と言われても、争いには巻き込まれませんから。もちろん、短期間と覚悟して、とことん付き合うというのもアリですが、よほどのスキルがないと難しいと思います。

――卒園したらそれっきりだろうし、ママ友なんていなくてもよくないですか?

深沢:それは違います! 私も、今でも付き合いがある幼稚園ママ友がいます。また思春期の息子のことで悩んだ時にアドバイスをくれたのは、彼が幼稚園時代に知り合った、4人の子を持つママでした。

ママ友は「子育て」という共通点を持っているので、自分と合う人を見つけられれば、一生の友達にだってなれるんです。本当はライバルではなく仲間なのだから、もめごとが起きることも確かにあるけど、きっとお互いをわかりあえる人もいるはず。ママになることは辛いばかりではなく、楽しいこともたくさんあるので、どうか怖れず前向きに子育てに取り組んで欲しい。そんな私の思いも、『ランチに行きましょう』には込められているんです。

(久保樹 りん)

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