“女性向けアダルト業界”の仕事とは

アダルトDVDを制作している会社として、多くの人が最初に思い浮かべるのがソフト・オン・デマンド(SOD)。AVについてよく知らないという女性でも、会社名だけは聞いたことがあるのではないだろうか。最近では同社グループの女性向けAVメーカー「SILK LABO」が爆発的大ヒット。エロメンと呼ばれるイケメン男優が出演するイベントチケットは即完売するほどだ。

今、女性が興味を持ち始めているAV。その多くは男性向けに作られていることから、AVメーカーで働いているのは男性だけだと思っている方もいるのでは? ところがどっこい、アダルト業界でバリバリ働く女性もいるのだ。

そこで、ソフト・オン・デマンドの女性社員、田口桃子さん(入社8年目)に、その仕事やプライベートについてお話をうかがった。

    男性とは文化が違う「女性向けアダルトサイト」の運営

――田口さんは具体的に、どのようなお仕事をされているんですか?

田口桃子さん(以下、田口):女性向けアダルト動画サイト『GIRL’S CH』(ガールズシーエッチ)に、2年前の立ち上げの頃から現在まで携わっています。サイトでは、男性向けに発売されているAVを女性が見やすいように編集し、さらに女性がグッとくるような画像の切り出しやタイトル付けをし、ジャンル名を工夫して配信しています。もともとは、それらに関わる業務すべてを行っていました。

現在はスタッフが増え、私は運営責任者という立場で全体のバランスを見ながら、ユーザーにどのように動画を見せるかや、サイトのことを知らない人にどのようにアピールしていくかということを考えて実行しています。

それでも、オリジナル動画を撮る際は、現場に足を運ぶこともあります。「女性はこういうカットを好むので、こんな画を多めにお願いします」と口出ししたり、レポーターとして参加したりすることもあります。

女性が何を求めているかは同じ女性でないと分かりません。慣れ親しんできている文化や道が、男性と女性では違うので、そこに共感できる・できないっていうのは女性じゃなきゃ判断できない仕事なのではないでしょうか。

――GIRL’S CHを担当する前はどんな業務をされていたんですか?

田口:ずっと営業関係の業務をしていました。入社当時はいわゆる飛び込み営業です。私たちが「セル店」と呼んでいるアダルトDVD専門店以外の、まだお取引のない書店やゲームショップなどに、うちの商品を置いてくださいと営業に行きました。最初の1年間は新規営業やルート営業の補助をし、その後はマーケティングや営業事務などをやってきました。

営業をやっているときは、女性であることを不利に感じることもありました。セル店にはほとんど男性客しかいないですし、だからこそ安心してDVDを選んでいるという状況で、ぽっと女性社員が入っていくと、男の人はびっくりしちゃいますよね。だから、「お客さんが逃げちゃう」って言われるんです。もちろん、歓迎してくれるお店もあるのですが、中には「お客さんが嫌がるから外で話してくれ」と言われることもあり、そういう場合は非常にやりづらかったです。

    合コンのときは、最初のうちはSODの社員であることを言わない

――なぜAV業界に就職したのですか?

田口:私がこの会社を受けたのは偶然なんです。もともと映画監督になりたいと思って上京し、大学では映画について学んでいました。そんなある日、瀬々敬久監督の『ユダ』というエロスをメインに描いている作品に出会って衝撃を受けまして。

瀬々監督は、かつて「ピンク四天王」と呼ばれたピンク映画の監督です。ピンク映画というジャンルがあって、こんなに面白い作品を撮る人がいるんだと感銘を受け、そこからピンク映画や日活ロマンポルノにハマっていき、卒論もピンク映画をテーマに執筆しました。

就活ですが、大学に入る前から映像関係の職に就きたいと思っていたので、テレビ局や映像制作会社を受けていました。その中で、たまたまソフト・オン・デマンドという会社を見つけ、卒論で書いている内容とも方向性が同じだし、良いなと思って。説明会の雰囲気がとても活気があって、ここにしようと決めました。

――ソフト・オン・デマンドは、入社の際、親の承諾書が必要と聞いたことがあるのですが、田口さんは親御さんとスムーズに話が進みましたか?

田口:親に「この会社に決めたよ」と連絡したところ、ネットで会社名を調べたみたいなんです。そしたら、うちのホームページに『SOD女子社員シリーズ』(女子社員と名乗るAV女優が出演する企画物シリーズのAV)が出てきて、「これ、出ないよね?」と心配されました。ですが、「出るわけないじゃん」ときっぱり伝えて、それ以降、特に何か聞かれることはありませんでしたね。

SODで働いていることは親と弟は知っているんですが、祖父母には伝えていません。世代間のギャップというか、このような会社があること自体が理解できないだろうと思うので、余計な心配をさせたくなくて。

――お友達や合コンなどで出会う男性からはどんな反応をされますか?

田口:大学時代の友達は、私の好みの映画や卒論の内容を知っているので全くびっくりしませんでした。私は愛知出身なのですが、東京とは少し文化や考え方が違うこともあり、地元の友人には驚かれましたね。でも、それで疎遠になったりということはありません。

合コンは、最初からSODの社員ということが分かった上で申し込んでくる男性もいます。その人たちは、AV会社の女性に興味があるだけなので、お付き合いに発展することはなく、仕事のことをおもしろおかしく話して、「はい、さようなら」って感じです。

逆に、会社のことを知らない男性との合コンのときは、最初のうちはSODの社員であることを言わないでおいていますね。言ってしまうとやはりAVのことに話がいきがちで、お互いのプライベートな話にまでいかないことが多いので。

    女性が性に対して罪悪感を持たなくていい環境を作りたい

“女性向けアダルト業界”の仕事とは

――大学時代に映像関係について勉強されたとのことですが、監督になりたいという希望はなかったのですか?

田口:大学のとき自主映画を撮っていたので、監督として独立したいという気持ちはありました。しかし、コンテストに応募しても箸にも棒にもかからず……。だから、私には表現することや主張をすることは向いてないんだなと悟り、企業に就職しようと。入社して3年間はがむしゃらに働いていたので、やりたいことをやれているかどうかということで悩む暇すらありませんでした。4年目あたりからは仕事も落ち着いたので、そういうことを考える時間ができ、転職を考えたこともありました。

でも、そんなときに今の事業の立ち上げを手伝ってほしいという話をいただきまして。今の仕事はユーザーから反応がダイレクトに返ってくるのがおもしろく、やりがいを感じています。現在は、サイトの責任者としてある程度任せてもらえているのですが、だからこそ再び、自分には主張がないという壁にぶつかりました。

それを社主の高橋がなりに相談したら「それでいいんだよ」と言っていただいて。私の立場というのは、ユーザーが求めていることをキャッチし、それを実現するという仕事なので、主張がないほうがうまくいくかもしれない、と。なので、私自身は今でも主張はありません。もしかしたら、主張がないと自覚している人は、ユーザーの望みを叶える仕事が向いているのかもしれませんね。

――田口さんの今後の目標を教えてください

田口:GIRL’S CHを継続し、大きくしていくことが目標です。GIRL’S CHを誰でも知っているサイトにしたいと思っています。自分が偉くなりたいというより、みんなが知っていて使っていて当たり前のサイトになれば、ユーザーの方がもっと堂々と「見てるよ!」と言えるかもしれないと思っているので。女性が性に対して罪悪感を持たなくていい環境を作りたいです。

姫野ケイ

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