高収入男性より年収300万円男性と結婚すべし

今注目を集める“プア充男子”と結婚することにはどんなメリットがあるのか。提言者である宗教学者の島田裕巳氏に伺いました。

【前編はこちら】年収300万円だからこそいい “プア充”提唱者が語る、女性が本当に幸せになれる結婚とは?

女性が働けない期間は“始末する能力”で乗り切る

――女性が働けるうちは収入が倍になるかもしれませんが、出産すると、働けなくなることもありますよね?

島田:プア充の根底には「安定した収入から得られる幸福」という要素があるんだけど、結婚するってことは、出産や子育てなどが原因でそれが変動する。そこを見込まないといけないよね。それに備えるためにはふたりで協力しないといけなくて、大事なのは生活をコントロールすることができる力。

朝ドラの「ごちそうさん」では関西に嫁いだ主人公が「始末」ってことを言われる。「始末」とは、「少ないお金のなかでやりくりする」こと。これがお嫁さんに必要なことだと。この始末する能力を身につけることは、男も女も基本的に重要なんだよね。若いうちのお金がない状態でこの能力を身につけておかないとダメ。「女性も働き続ける」ってことが状況的に難しくなっても、300万円で「始末して生きること」ができたら、いかなる状況になっても生きられると思う。

「いい大学に入れる」ことに本当にメリットはある?

――でも、やっぱり子育てにはお金がかかるのではないでしょうか?

島田:子育てなんて、実はお金かからないよ。学校は高校まで公立なら実質タダ。いい大学に入れるために私立入れたり塾行かせたりって考えると高くなるけど、親の義務なんて中学までしかない。

――とはいえ、現在の日本では「いい大学を出る」ことが、安定した良い職業につくための条件のひとつではないでしょうか?

島田:今、徐々に薄れてきている学歴主義が、これからもっとなくなっていくと思う。プロ野球のマーくんと斉藤祐樹を比較してみるとわかるけど、人間にとって18~22歳の間にちゃんと成長するような訓練や機会を持つことはとても大事で、その後から取り返すことはものすごく難しい。勉強したくないのなら、高卒で就職して仕事で鍛えられたほうがいい。多分だけど、これから産まれる子どもたちが成人する20年後には、高卒のほうが最終的に出世することも珍しくないと思う。

大学っていうのは「勉強するところ」だから、勉強する気がない子どもを無理に「将来のため」とかいって大学に行かせるのは最悪。たとえばアメリカのように、日本はもっと「自分でお金を稼いでから大学に行く」という子どもが増えてもいいと思う。だから、これから結婚する人たちが、そこまで心配する必要なんてまるでないんだよね。

いもしない高収入男性を求めるより、目の前のプア充男子をつかまえるべし

――しかし、「家庭に入りたい」女性にとっては、ある程度「高収入の男性」と結婚しないと希望が叶えられず、幸せになれないのでは?

島田:悪いけど、年収が高くていい男はもう売れてしまっているんだよ。僕は女子大の教授だったけど、だいたいもういい男は18歳の女子大生が大学に入った時点で唾をつけている。大学のサークルで出会った一発。そいつが将来性があるかどうか見極めるには、社会人経験なんて余計なものがない学生時代のほうが有利。

みんなそこを逃してるからしょうがない。だから大幅に年収を下げる方にシフトチェンジするしかないよね。まだ余ってるのは、年収が安定していて、あまりさえないかもしれないけど安定して生きているプア充。公務員とか、あとは仕事のウデはたいしたことがなくてこれから躍進も期待できないけど、ずっと続いている会社に勤めている男とか。

――そういう女性は、男性に求める希望年収を下げてまで、結婚する意味はあるんですか?

島田:結婚・出産で得られる「人間関係」は、お金よりも将来的にその人を助けてくれることが多いと思う。結婚もそうだけど、女性にとっては「出産」がもたらすプラスは本当に大きい。女の人は本当に、子どもを産むと人間関係が広がる。

子どもを作って、子どもが学校にいくようになると、女の人にはママ友ができるようになる。別に相手との相性とかあんまり関係がなくて、最初のクラスで遭遇した同性の子の母親で、たまたま子どもの名前の順番が近かったとか。その関係ってそのときにしかできなくて、子どもが2年のときにママ友をつくるのって無理なんです。そういう機会ってほかではあまりないし、友だちっていないと大変なんだよ。

それと、今の社会では「一回結婚した人に結婚の資格がある」んだよね。独身というだけで、「この人はめんどくさい人なんだ」って思われてしまう。だから、35歳過ぎて初婚で結婚できる女性は非常に少ない。変な言い方だけど、結婚することによって結婚できる人間になれるんだ。

だから、女性は相手の年収なんか気にしないで、若いうちにプア充男性と結婚するほうが良いんだよ。高収入男性を追って、失敗したり、婚期を逃すリスクを負うよりも、「今、自分の力で確実につかめる幸福」に目を向ける。そのほうが将来も幸福になれる可能性が高いんだから。

(文・取材=編集部)

島田 裕巳 (しまだ・ひろみ)

●島田 裕巳 (しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家、NPO法人 葬送の自由をすすめる会会長、東京女子大学非常勤講師。新宗教の研究からはじまって、日本の仏教や神道にとどまらず、世界の宗教について幅広く研究し、数多くの著作を発表している。
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