“プア充”提唱者が語る女性の幸せな結婚とは

今、注目を集めている“プア充”という新ワード。「高収入を目指さない。年収300万円だからこそ、豊かで幸せな日々を送ることができる」という考え方で、宗教学者の島田裕巳氏が著書『プア充 -高収入は、要らない-』で提唱しています。

しかし一方で、明治安田生活福祉研究所が2013年2月に実施した調査によると、30代未婚女性が結婚相手に求める最低年収は「400万円~500万円未満」が最多で34.8%。次いで「300~400万円」が22.5%と、「年収300万円」を基本とするプア充と、未婚女性がお相手の男性に求める年収とには、微妙なズレがみてとれます。

プア充に対する共感の声も多くあがっていますが、果たして“結婚相手”として見たプア充は、女性を幸せにできるのか。島田氏にインタビューしました。

年収が下がっても、生活水準は下がっていない

――今の日本社会で、「年収300万円」で本当に生活していけるんですか?

島田裕巳さん(以下、島田):まあ、だいだい今の日本の平均年収は、男も女も300万円くらい。「なかなか300万円では大変だ」って人はいるけど、現在の日本ではなんとか生活できるレベルではないですか。

まず社会が昔とは根本的に変わったって認識が必要だよね。男女ともに、今の20~30代は給料が上がらなくて「親の世代の収入が稼げない」という不安があると思うけど、「昔は給料が高いから幸せ」ってイメージは違う。日本は豊かさの限界まできている。昔は社会が豊かじゃなくて「給料が高くないと生活できなかった」から給料が高かったけれど、今は社会が豊かになって暮らしにお金がかからないから、給料が安いんだよ。本当に生活に困ったら生活保護がある。

それに、都会にいる限り、お金をかけないで楽しめることなんてたくさんある。たとえば図書館、美術館などの公共施設、映画も今は100円レンタル。家にテレビがあってWOWOWに入っていれば、2500円で観切れないほど観られる。スポーツクラブも1か月1万いくら。これをシャワー代わりに使う人も結構いる。お金をかけないで生きられる環境があるのだから、これを利用するのが一番いい。

「高収入」はリスクが大きい 平均所得こそが安定した幸せをつかめる

――「年収300万円でなんとか暮らせる」とはいえ、それでも年収は高いほうが幸せなのでは?

島田:金額自体よりも、収入が「安定している」ってことがプア充には重要。多いときもあれば少ないときもあるのではなくて、安定的な収入がある。それが生活の基盤を作る上で重要なんだよ。それに、一回高いところを経験しちゃうと、下げるのは大変だしね。

逆に、高収入になると「安定している」ということが難しくなる。たとえば1千万円収入を得るためにはものすごく働かないといけないし、そうするとストレスがたまる。ストレスを解消するためにまたお金がかかる。病気になりやすい。あらゆるリスクが大きくなる。

なまじお金があると、ヤバイんだよね。お金があると、周りの人が「有効に使いましょう」と言ってくる。変な人にお金を貸す、変なところに投資する、そういう誘惑がたくさんある。芸能人がお店を出すのが典型的な例だけど、つぶれると何千万っていう借金ができてダメージがでかい。年収300万円の人は誰も誘惑しないよね。社会から誘惑されないというのは大事なこと。心穏やかに生きられる。

――「安定している」ほかに、高収入の人よりも年収300万円のほうが有利な点はありますか?

島田:税金・健康保険の負担が少ないということもある。この差はものすごく大きい。国民健康保険(国保)料の年間上限額も来年から年間81万円に引き上げられるし、高収入になるほど国から搾取される、という社会になっている。

お金がない人こそ、結婚したほうが独身時代よりも豊かな生活が送れる

――たしかに、1人で生きていくぶんには、「年収300万円」でもなんとかなるのかもしれません。でも「結婚」となると、300万円程度の収入ではやっていけないのではないでしょうか?

島田: まず、300万円同士が結婚すれば、収入が倍になる。それに結婚したほうが国からの援助が受けられるから、それだけでも独身よりもお得だし安心できる。国や地方自治体は、単身者を援助してくれない。子どもがいれば児童手当は出るけど、独身に対してはゼロ。こんなにお金がかからなくて都合がいい人たちはいないよね。みんなこの高度資本主義社会にだまされているんだよ。独身でいても何の恩恵もない。ちゃんと結婚したシングルマザーの方が都営住宅なんかも優先的に入れるし、ハッキリ言って、シングルマザーは得ですよ。

そもそも昔は、「お金がない」から結婚したんだよね。もちろん、収入が増えるというのもあるけど、それだけじゃなくて、親戚とか自分を助けてくれる人の数が倍になる。たとえ年収が低い人が相手でも、結婚したほうが確実なメリットがあるんだよ。

【後編につづく】年収300万円だからこそいい “プア充”提唱者が語る、女性が本当に幸せになれる結婚とは?

島田 裕巳 (しまだ・ひろみ)

●島田 裕巳 (しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家、NPO法人 葬送の自由をすすめる会会長、東京女子大学非常勤講師。新宗教の研究からはじまって、日本の仏教や神道にとどまらず、世界の宗教について幅広く研究し、数多くの著作を発表している。
『島田裕巳』公式ホームページ