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2014/08/08

90歳現役インドのセックスアドバイザー

インドでは婚前交渉はいまだに許されていない。「カーマスートラ」が存在するこの国ではまだまだセックスのタブーが多くあるのだ。そんなインドで熱狂的な支持を得ているセックスコラムニストがいる。彼の名はドクター・マヒンダー・ワトゥサ。

90歳の彼は50年以上に渡って新聞のコラム上でインド人らの質問に真摯に、そして時にウィットにとんだ答えを投げかけてきた。彼はこう語る。
「セックスは楽しいものです。なのに、他のインド人たちはセックスをシリアスで医学的なものとしてばかり捉えているのです」

深刻な悩みを抱える女性は思い詰めて相談を送ってくる

彼が新聞で質疑応答式のコラムを書き始めたのは医師になった30代の頃。まだまだ経験も浅かった彼は、最初のうちは子供の病気のことなど、ごく一般的な質問が届いていたのだったが、だんだんと深刻な性の悩みについての質問が届くようになったという。

ある女性からこんな深刻な相談が寄せられた。
「実は10代の頃に叔父や年上の男性と関係を持ってしまい、処女ではなくなってしまったこと、そしてそのことで将来の結婚を不安に思い、自殺まで図るほど思い詰めている」という内容だった。

彼女だけではなく、他の女性にも、他人には絶対に相談できない深刻な悩みがあること、またこういう女性は誰にも相談できずに思い詰めて新聞に相談を送ってくることが徐々に分かってきたのだ。

彼はそういう女性たちに「パニックに陥らなくても大丈夫。将来あなたの夫になる人はそれに気づかないし、大惨事は起こりませんよ」とやさしい言葉で答えてきた。

90歳の彼のもとに今でも相談の手紙が絶えない

また彼は、これらの性的問題は性教育が不足していることからくることを感じ始めたのだった。インドでは学校にも家族の中にも、性教育のできる人が存在していなかったのだ。

この事態に使命を感じた彼は、人生を通して性教育に携わることになる。これまでコラムと平行して、インドのファミリー・プランニングの団体を通して、また彼自身が作った団体で、性教育を続けてきたのだ。

90歳になる彼のもとには、今でも相談の手紙が絶えることがない。これまで新聞に掲載された数々の質問の一部をここで紹介しよう。

Q. 私の女の子の友達は「マスターベーションをすると胸が大きくなる」と信じています。それって本当なのでしょうか?

A. いいえ、そんなことはありません。彼女はクリトリスがエアーポンプか何かだと思っているのでしょうか?

Q. 私のペニスは小さくて、ガールフレンドを満足させられていないようなのです。私の占い師は「祈りの間、毎日15分間ペニスを引っ張りなさい」とアドバイスしてくれたのですが1か月経っても効果が現れません。どうしたらよいのでしょうか?

A. もしあなたの占い師の言うことが正しければ、全ての男のペニスが膝に当たるほどの大きさになっているはずですよ。神はそんなインチキを助けてくれるわけもありません。かわいそうに。それよりセックスの専門家を訪ねて、性愛のアートを教えてもらうことをお勧めします。

Q. 私のガールフレンドは22歳です。数か月前にセックスをしたのですが、その後、彼女から出血したあとが見られなかったのです。どうやって彼女が処女かどうかどう信じればよいのでしょうか?

A. あなたは彼女のことを愛していますか? あなたは疑い深い人です。処女膜は、あらゆる方法で裂けることを知っていますか? 例えばスポーツをしただけでも破れてしまうこともあるのですよ。

男性は「処女崇拝」や「マスターベーションは悪」の考えが強い

彼曰く、ここ30年間の間にインドは大きく変わったという。彼がコラムを書き始めた当初、 ほんの少しの女性が手紙を送ってきたのだが、今ではたくさんの女性からのコンタクトがあるというのだ。その内容も、初歩的な「どうやったら子供ができる?」ではなく、より具体的な性の相談が増えたという。

それでも、まだまだインドの伝統的な考え方が性の問題を引き起こしていることが多い。男性の間では「処女崇拝」や「マスターベーションは悪」という考えがまだ根強くあったり、ポルノを真に受けた男性のせいで夫婦関係がこじれ離婚まで引き起こす問題に至ることも少なくないのだ。

90歳になっても、まだまだインド男女に必要とされる セックスアドバイザーの彼に、「退職」という言葉はなさそうだ。

中村綾花