年間100組が利用するタイの代理出産

タイ人女性に代理母を依頼したオーストラリア人夫婦が、生まれた双子のうち、ダウン症だった男の赤ちゃんの引き取りを拒否したことが話題になっている。このタイ人女性は、ダウン症のほか先天性心疾患も患っている赤ちゃんを自ら育てることを決めたが、オーストラリアで手術費を集める募金活動が広がり、21万ドル(約2,200万円)以上集まっているという。

    ビジネスとしての代理出産が大きな議論に

女性は仲介業者を通じ、1万6,000豪ドル(約153万円)で体外受精の卵子の代理出産を引き受けたと報じられている一方で、30万バーツ(約96万円)の報酬全額を受け取っていないという報道もある。さらに、オーストラリア人の父親には過去に性犯罪歴があるという疑惑が浮上し、代理母のタイ人女性が「それが事実なら、双子の女の子のほうも引き取りたい」と発言するなど、世間の関心は高まるばかりだ。

オーストラリアのアボット首相も「非常に悲しい話だ」とコメント。タイとオーストラリアのみならず、世界のメディアで大きく取り上げられており、ビジネスとしての代理出産の是非や規制のあり方について問う議論となっている。

    タイでの代理出産費用は480万円

タイでは、代理出産が法律で禁じられていない。生殖医療技術は進んでおり、ホテルのような高級な病院も整備されている。ちなみに、代理母の女性が会見したサミティヴェート病院シラチャーは、バンコクの東隣のチョンブリ県にあり、工業地帯で働く日本人駐在員も多く利用する高級病院だ。

タイでは代理出産のほか、卵子提供による体外受精、男女産み分けが欧米に比べて安く可能なため、日本からも高度な医療サービスを求めて渡航する利用者が少なくない。日本人が経営するエージェントも複数存在している。

ある業者での自己卵子による代理出産の費用は約480万円、日本人の卵子提供による体外受精は約250万円、男女産み分けは約160万円となっている(渡航費を除く)。

    タイで男女産み分けをする日本人夫婦は年間100組以上

3年ほど前には、タイや韓国へ渡って卵子提供をする日本人ドナーが100人以上おり、60~70万円の謝礼が支払われていると報じられた。また、タイで男女産み分けを利用する日本人夫婦は年々増えており、年間100組以上に上るという。

日本国内では学会の方針や自主規制などで、男女産み分け、代理出産、第三者からの卵子提供は実施されていない。しかし、多くの日本人がタイに渡っているということは、それだけ需要があるということでもある。技術の進歩に法律が追い付いていないのは事実であり、専門家だけでなく、当事者も含めて議論を深め、法律面でも整備していく必要があるのではないだろうか。

(リプトン和子)