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2014/08/01
『思い出のマーニー』が教えてくれること

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少女時代に読んだ児童書をときどき思い出すことはありませんか。『赤毛のアン』『若草物語』『足ながおじさん』『長くつ下のピッピ』……。大ヒット中のジブリの最新作『思い出のマーニー』の原作もジョーン・G・ロビンソンの同名児童小説です。みなさんにも夢中になった児童書があるでしょう。それらに描かれる世界は、まだ社会にもまれていない純粋だった頃の自分を思い出させ、かつ、今現在の悩みを浄化してくれたり、自身を解放してくれたりする場合もあるのです。『思い出のマーニー』は、まさにそういう映画なんですよ。ではその魅力を探ってみましょう!

    「大好き」という言葉が傷ついた心を癒してくれる

『思い出のマーニー』のヒロイン杏奈は体が弱く、夏休み、北海道で療養することになります。彼女は両親を亡くし、養母に育てられていますが、愛されていないと孤独な気持ちを抱え、自分の殻に閉じこもる杏奈……。そんなとき、療養先で古びた洋館を見つけた彼女は、そこでマーニーという金髪の少女と出会うのです。

杏奈のように孤独に陥った経験は誰にでもあるはず。そんなときに救ってくれるのは、誰かに愛される実感です。杏奈にとってマーニーは初めて自分のことを「大好き!」と言ってくれた人。好きという気持ちを共有できるということが、どんなに幸福なことかこの映画は教えてくれます。

アラサーになったら、友だち同士の間で「大好き」なんて言わないけど、だからこそ、杏奈とマーニーが「大好き」と言い合う姿に何気に感動。愛されることが、杏奈の閉じた心の扉を開け放ち、杏奈はやがて傷ついたときの気持ちや胸の奥にしまった真実を吐露し、徐々に楽になっていくのです。

    妄想力が自分を苦しみから解放してくれる

『思い出のマーニー』は、幼い頃、海外の児童文学を読んで、海外の生活や習慣など、まだ見ぬ世界に憧れを抱いた気持ちを思い出させてくれます。まだ何も知らなかった頃の純粋な妄想ワールドが甦るのです。大人になって社会にもまれると、現実を知っているだけに、美しい妄想ワールドを抱けなくなりますが『思い出のマーニー』の杏奈が様々な想いを巡らせて、マーニーの存在によって再生していく姿を見ると、もう一度、幼い頃に読んだ児童文学を読み直して、その世界に浸るのもいいかも……なんて思います。

大人になると子供の頃は本当にちっぽけで些細なことに悩んでいたなあと思うけど、よく考えて見れば、今も変わらぬ悩みだったりしませんか。場所が学校から会社に変わっただけ……という場合もあるでしょう。『思い出のマーニー』を見たり、同じような児童文学を読んだりすると、少女の頃に戻ると同時に、もう一度、人生のスタートラインに立たせてくれる感じがするのです。

    過去と向き合うことも大事

アラサーともなると様々な経験を積んで、いっぱい傷ついてきたでしょう。できれば過去の古傷に触れたくないとか「私は振り返らない女よ!」と前を向いて強気で生きている人もいるでしょう。でも何かにつまずいて転んだら、ちょっと振り返ってみた方がいいときもあります。

『思い出のマーニー』の杏奈は傷ついた過去と向き合うことで、勘違いしていたことに気付いたり、新たな真実を知ることになったりして、笑顔を取り戻します。杏奈は十代の少女ですが、大人の女性にもあてはまるはず。まずはこの映画を見て、少女時代に戻って、自分が夢見ていたこと、大好きだったことから思い出してみてはいかがでしょうか?

思い出のマーニー』(公開中)

斎藤香