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2013/11/19

パリで「男性ヌード」がタブー視されるワケ

芸術の都として知られる、フランス・パリ。その中心部にあるオルセー美術館で開催中の展覧会が、話題を呼んでいる。この展覧会、展示されている70点の絵画、約20点の彫刻、そして多数の写真はすべて「ヌード」がテーマの作品。サブタイトルの通り、ヌードはヌードでも、史上初となる「男性ヌード」の展覧会なのである。

ヌードに寛容なパリでも「初」の男性ヌード展!

日本に比べ、基本的にヌードや性的表現に寛容な国、フランス。美術館での展示に、男性のヌード作品が含まれていることも少なくない。しかし、そんなパリでも男性ヌ―ドのみを扱う展覧会が大々的に開催されるのは初めてのこと。さらに、オルセー美術館といえば、印象派の作品を数多く所蔵することで知られる、由緒正しき国立美術館。ともすればお堅いイメージのある国立美術館における男性ヌード展は、フランス人にとってかなり「先進的な試み」なのだ。実はこの企画、2008年から同館の館長を務めるコジヴァル氏が、まだモントリオール美術館(The Montreal Museum of Fine Arts)のディレクターだった頃から15年もの間温めてやっと実現したという点からも、そのハードルの高さが伺える。

男性ヌードがヨーロッパで「スキャンダラス」になったワケ

ヨーロッパにおいて、男性ヌードにはどんなイメージがあるのか。古代ギリシャでは、男性の裸体こそが神聖で美しいという思想があり、古代オリンピックでも、男性が全裸で競技を行った。ギリシャ彫刻には多数の男性ヌード作品が残り、『ダビデ像』を制作したダヴィンチをはじめ、芸術の世界では「男性のヌード」は女性のヌードと同様に、ひとつの普遍的なテーマとして扱われてきた。

しかしながら、1960年代~70年代中盤にかけて、世界各地で同性愛者解放運動が湧きあがる。男女問わず、ヌード芸術はしばしば、同性愛や解放運動のアイコン的な扱いを受けるようになった。その内に「男性のヌード=ゲイ文化の象徴」という構図が出来上がり、芸術界においても男性ヌードは、スキャンダラスな存在へと変化を遂げたのだ。また、男性ヌードをテーマに扱うヘテロセクシュアルの作家が少ないというのも、この偏見に拍車をかけた。同性婚が合法化し、日本に比べてゲイ文化が市民権を得ている現代フランス社会においてさえもまだ、ゲイにはどこか、マイノリティの影がつきまとっている。

「ゲイ文化」ではなく「芸術」として

そうした現状の中で開催されたこのヌード展には、男性ヌードをゲイカルチャーとしてではなく、「芸術」としてとらえ直す、という意味合いが込められている。男性が男性ヌード作品を鑑賞することについて、フランス人男性はこう語る。

「ゲイ文化の象徴としての男性ヌードなら躊躇するけれど、芸術的作品の中に男性ヌードが含まれているのは、ごく自然なこと。特に気にしないよ。男女平等が浸透している現代フランスにおいて、今までこの類の展覧会がなかったことが不思議なくらいだ」

女性も堂々と男性ヌードを楽しめるように

ヨーロッパでじわじわと広がる、男性ヌード・アートの波。同じく芸術の都として名高いオーストリア・ウィーンでも昨年、男性ヌードをテーマとした展覧会「Naked Men(裸の男)」が評判となったが、期間中は通常よりも、女性来館者が増加したという実績がある。芸術としての男性ヌードを堂々と楽しむことは、多くのヨーロッパ女性が待ち望んでいたことなのかもしれない。

(文=Yuka TAKAHASHI)

<詳細情報>
展覧会/Masculin / Masculin. L’homme nu dans l’art de 1800 a nos jours.
会期/2014年1月2日まで
開館時間/9:30~18:00、木~21:45、月休
会場/オルセー美術館(Musee d’Orsay)
62 rue de Lille, Paris, France
詳細/http://www.musee-orsay.fr/