恋愛では治らない摂食障害の克服方法

前編に引き続き、多くの女性が悩んでいる摂食障害とその治し方について、心理カウンセラーの福山裕康さんにお話を伺いました。

>>【前編】摂食障害は「ありのままの私で愛されたい」心の叫び 自力で治すのは難しい女性の病を心理カウンセラーが解説

恋愛に期待すると、むしろ悪化してしまうケースも多い

――親にもらいたかった愛情を、「恋愛」に求めていく女性も多いと聞きました。

福山:たくさんいます。パートナーの方が症状を理解し、本人の話を聞いて応えてあげると、治っていくケースもあります。しかし残念ながら、恋愛がむしろ症状を悪化させてしまうケースも多くあります。自分の気持ちを言えず、嫌われまいと恋人の望むように行動してしまう。つまり親と同じく、恋人の前でも「いい子」でいようとするのですね。結婚しても本当のことを言えずに我慢し続け、悪化してしまうケースもあります。恋人の愛情で治すのが難しいのは、男性にはこの病気が真に理解しがたいからだと思います。食や見た目に囚われる気持ちも、いい子でいようとしてしまう気持ちもなかなか理解しづらいようです。男性の場合、精神的に辛くなるとアルコールやギャンブルなどに向かいますし。

快復には 「家庭の理解」が何より大事

――そうすると、治療にはやはり「家族」が一番適していると。

福山:そう思います。とにかくまずは、親に病気を正しく理解してもらうことが大切です。この病は「食べる、食べない」の問題ではないこと、本人の心の不安やもやもやを取り除いてあげなければならないことを知ってもらいます。「食やスタイルのことを本人に言わないようにして、ただただ、よく話を聞いてあげてください」とお願いします。詳しい本などを渡して、病への理解を促すこともあります。

――どうやって治っていくケースが多いのでしょうか。

福山:人それぞれなので一概には言えませんが、家族の理解が得られるとすんなりと治るケースもあります。拒食の場合は特にそうですね。とにかく、この病には「家族のありかた」が何よりも大事です。家族にどうしても言えないという場合は、一緒にカウンセリングに来てもらって、第三者から伝える、という方法を取ることもあります。どうやっても親に向き合ってもらうことを期待できない場合は、「再養育法」といった方法で、愛されて育つイメージを擬似体験させることで、完治を目指すケースもあります。

――遠野なぎこさんも告白していますが、「きょうだい関係」も発症に関連がありますか?

福山:きょうだいによって加速するとは思います。摂食障害になるのは、長女が一番多いです。2〜3歳違いの、しかも同性の妹がいる方が特に多いですね。幼い頃に下の子に親の愛情を取られる上に、「お姉ちゃんなんだから」と自立を促されるからですね。ひとりっ子の患者さんは少ないです。

――自分が親になるときは、どんなことに気をつければいいでしょうか。

福山:干渉しすぎ、甘やかしすぎで、何でもやってあげてしまうような親は依存関係を作りがちですし、かといって逆に、「好きにしたら」と無関心になるのも全くよくありません。とにかく本人をそのままで認めてあげる。しかも「結果」でなくて「プロセス」を褒めるようにして、「よくがんばったね」とたくさん声をかけてあげることが大切だと思います。

ただ生きているだけで「自信」を持てるように

――「自信を持てること」が立ち直る鍵と感じましたが、そうした自信はどう培っていけばいいのでしょうか。

福山:「基本的なOK」とでもいいますか、「私は存在しているだけでOK」「ありのままでいい」と思えるようになるといいですね。それこそ、生まれた瞬間のように。いつのまにか沢山の条件がついて、「結果が出ないと褒められない」「何かしていないとダメな人間なのだ」という気持ちになってしまっている自分に気付いてください。自信には「Being(存在している)の自信」と、「Doing(やって結果を残せたこと)の自信」がありますが、現代社会は「Doing」に非常に偏っています。「結果を出せない奴はダメだ」という雰囲気です。順調なときはいいけれど、何か挫折を感じたときに、「Beingの自信」がなければ人間は潰れてしまう。心の基礎、土台として「Beingの自信」も持っておくことが大切ではないでしょうか。

 

(取材後記)
「ありのままの自分」というと『アナと雪の女王』を思い出しましたが、映画の製作者も、もしかしたらこのように自分を追い込んで生きている女性がとても多いことを知って、作品に取り込んだのかもしれない、などと思い及びました。結果を出さなければ「自信」を持ちにくい時代。もちろん努力は必要ですが、たとえ失敗しても、「大丈夫よ、あなたはここにいるだけでいいの」と温かく迎えてくれる“家族”という場所の偉大さを思うと共に、社会の成長と引き換えに失われてきたものがあるのだろうと感じました(愛情ある近隣コミュニティや、生へのおおらかさ等)。親はもちろん、多くの皆で子どもをただ愛していける社会になるように。そして、うつや多くの病と同様、摂食障害への理解も進んでいけばと願います。

 

●福山裕康(ふくやま ひろやす)氏/心理カウンセラー・コーチ・コンサルティング
1961年生まれ。上場会社の管理職・経営企画を経験後に独立。ヘルスカウンセリング学会公認心理カウンセラー・ソーシャルスキルトレーナー。NLP(神経言語プログラミング)プラクティショナー。NGH(米国催眠士協会 National Guild of Hypnotists)認定ヒプノセラピスト終了。日本認知療法学会会員。日本トランスパーソナル学会会員。潜在意識へのアプローチから現実の問題(対人関係や様々なストレスなど)を解決する、確実なカウンセリングを提供している。臨床経験は2,000件を超える。特に摂食障害を専門分野とし、克服のための相談、勉強会やセミナー、ワークショップ等も多数開催している。

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外山ゆひら