女性AV監督に聞く、業界の実態

かつては男性向けのエンターテイメントであったアダルトビデオ(AV)。ネットで気軽に観られるようになり、女性もAVを楽しむことも増え、イケメンAV男優たちのイベントには女性ファンが押しかけてくる。女性向けに特化したAVもリリースされ、AV業界は女性をもターゲットにしはじめている。そんなAV業界は、“働く場”として女性にとってどうなのだろうか。

「AV業界というと男社会というイメージがあります。女性が働くのは苦労も多いのでは?」という質問を、AV業界15年の女性監督・安藤ボンさん(40)に投げかけると「現場はシステマチックに動くので問題はないですよ」という返事が笑顔と共に返ってきた。そんな安藤監督に、「女性が働く場所としてのAV業界」について伺った。

AV業界はなぜクリーンになったか

――安藤監督自身はどんなきっかけでAV業界に入られたんですか。

安藤ボン監督(以下、安藤):25歳で東京に出てきたんです。とりあえず仕事しなきゃと思って就職したのがビデオの卸問屋の経理事務の仕事でした。そこで働いているうちに映像制作に興味をもって、制作会社を紹介してもらい、助監督として就職しました。そこは緊縛師の雪村春樹さんが主催するAVレーベルで、私は緊縛の世界に魅了されていきました。助監督を1年やった後はプロデューサーを5年やり、その後、監督として独立しました。

映画の世界だと助監督をやって修行して監督になることが多いですが、AVの場合は制作会社で制作スタッフとしてノウハウを学んで監督になるというケースも多いですね。

――性別不明なお名前には何か理由があるのでしょうか。

安藤:私が「安藤ボン」という名前を使っているのは、監督を始めた頃は「女が撮ったAVだと抜けない」と男性ユーザーに敬遠されるかもしれないと考えたからです。今はずいぶんと変わって、AV作品の紹介に「ALL女性スタッフならではの」とキャッチコピーを書くことすらあります。

――女性スタッフは増えているのでしょうか。

安藤:増えましたね。プロデューサー、監督、助監督、ヘアメイクと様々な職種で女性が活躍しています。理由のひとつとしてはAV業界がクリーンになっていることがありますね。現在、AV業界はSOD(ソフトオンデマンド)やDMM、S1などの大手の企業が増えてきていますし、かつてのように1本の作品がたくさん売れる時代ではないので、コツコツと真面目にコンテンツを作って、小さな利益を積み重ねていく、地道なビジネスになっています。

女性スタッフがAV撮影現場でできること

――映像制作は体力を使うので、男性中心になるというイメージがあります。女性が働く場合、体力的に大丈夫かな?と感じますが。

安藤:撮影が何日も続く現場では女性スタッフは体力的につらいと思います。ですが、AVに関しては、撮影の期間が1日ということが増えているので、体力的に女性でもこなせるようになってきていますよ。現場に女性スタッフがいると助かることも多々あります。AVの現場で女性が一番活躍しているのは、ヘアメイクです。稀に男性のヘアメイクが稀に女優に言い寄るなんてトラブルも起きるんですよ。控え室でヘアメイクと女優は二人っきりになりますから、いい雰囲気になってしまうこともあるのかもしれません。その点、女性ヘアメイクならそういうトラブルは起きません。

――女性だからこそ、できる仕事があるということですね。

安藤:助監督にも女性を見かけるようになってきましたが、彼女たちは女優へのちょっとした気配りができるんですよ。お弁当を買ってくる時に、女優のためにヨーグルトやゼリーといったデザートも買ってきたりして。ある女優は、女性助監督がお弁当に添えた「お疲れ様。この後も頑張ってくださいね」と書いたメモに感動していましたよ。現場で女優は強いプレッシャーを受けています。ですから、さりげなく、女優の気持ちをほぐしてくれる女性スタッフがいると、現場の雰囲気もよくなって、撮影もうまく進みます。

AVの助監督という仕事は、もっといろんな方に職業選択のひとつとして興味をもってもらいたいですね。映画の世界だと助監督は監督の見習いという位置づけですが、AVの助監督は「職業助監督」が多いです。監督になりたいとは希望せず、助監督に徹する人たちです。優秀なフリーの助監督たちは本当に貴重な存在で、彼らのスケジュールにあわせて、撮影の日程が決まることもあります。AV業界のメリットとして、助監督もカメラマンもギャラがある程度の額がキチンと支払われる点があります。売れっ子の助監督だと日当3万円。月に20日働けば月収60万円ですからね。監督よりずっと稼げます(笑)。

――助監督の仕事とは具体的にどんなことですか。

安藤:助監督の仕事は荷物を運ぶ、弁当の手配をする、あと、疑似精子を作るのも助監督の仕事です。撮影が進んで男優も何回か射精してもう出なくなると、疑似精子を使います。卵白とコンデンスミルクを混ぜて作ります。たまにココアを入れて色をつける人もいますね。この疑似精子を上手に作るのも助監督の腕の見せどころ。作った疑似精子をスポイトに入れて、撮影で射精するタイミングで男優に手渡すのも助監督の仕事です。撮影の内容をちゃんと抑えている必要がありますよね。気配りが重要な仕事なので、女性に向いているかもしれません。

女優中心に動く現場は女性に優しい

女性AV監督に聞く、業界の実態

――男社会で女性が働くとすると「セクハラ」も心配になりますが。

安藤:AVの業界は、女優ありき、です。特に現場では、女優がモチベーションをあげて撮影に臨んでくれないとよい映像がとれません。ですから、現場は「女優第一」です。食事をデリバリーで頼むときの「中華? それとも和食?」という選択も、女優が食べたいものを選んでみんなでそれを食べるんですよ。撮影の現場は男性が多いけれど、中心は女優。女優は身体を張って仕事をしているわけで、それをいかにケアできるかが、監督はじめスタッフの技量となります。なので、いわゆる男性社会とも違って、女性を大切に思う気持ちが強いんですよ。だから、女性スタッフに対しても敬意を払ってくれるので、女性は働きやすい業種だと思います。他の業種に比べて、セクハラも少ないのではないでしょうか。

――逆に、女性が働く上でマイナスな面はありますか。

安藤:もちろん、AV業界で働くデメリットもあります。ずいぶんとイメージが変化してきたとはいえ、まだまだ、偏見をもたれがちな業界なので、女性スタッフの中には家族にはAVの仕事をしていることを伝えられないという人もいます。あと、たくさんの本番を見ているうちに感覚が麻痺してきて、プライベートでセックスをするときに集中力が落ちるというケースもありますね。ですが、能力があれば男女差なく評価されるフラットな業界です。是非、多くの女性に働く場として「AV業界」に興味をもってもらいたいですね。

(木原友見)

●安藤ボン
官能映像監督。1974年生まれ。鹿児島県鹿児島市出身。AV、Vシネマ、劇場公開映画を手がける。青春と性をテーマにした映画シリーズ“青春H”で『ふきだまりの女』(2012年)、『ボン脳即菩薩』(2013年)を発表。かつての日活ロマンポルノを彷彿とさせるユーモアあふれる映像美で話題になる。『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014』で上演したサスペンスフルな映画『別の顔』は、ストリップを題材に、女性の多面性を描く。現在、監督タイトル数は150を越える。公式HPがコチラ

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