ルーマニア映画『私の、息子』

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ルーマニア映画『私の、息子』は30代になっても自立できない息子と母親の共依存関係を描いた作品です。母は息子を過保護に育て、息子はそんな母に甘えながらも、自分が自立できないのは母の責任だと思っている大いなるあまちゃんです。ルーマニアの社会や悪しき慣習も描かれていますが、テーマは普遍的な母と息子の物語。なぜこの息子は自立できないマザコン男に育ったのか……。そこには母親の愛という名の過干渉と束縛があったのです。

    経済的な親の支援は、自立を防ぐ最大悪!?

映画『私の、息子』に登場する母と息子は別々に生活していますが、息子は自立しているわけではなく、金持ちの母親が経済的な支援をしているから生活できるのです。そして息子は母が与えたその家で、恋人と同棲しているという……とんでもない甘ったれです。母親は「いつかきっと働いて立派になってくれる」と思っているのでしょうが、働かなくても親がポンとお金を出してくれる環境で育ってきたら、何歳になってもそのままですよね。芸能人の子供が問題を起こすとその実態が暴かれ、高額なおこづかいを与えてきた事実が発覚することがありますが、それによく似ています。社会の中で親のすねかじりはダメ男の烙印を押されるだけ。この映画の母は息子を愛するあまり、お金で息子を社会不適合者にしてしまったのです。

    息子への過剰な愛と干渉……これって虐待?

映画の息子は交通事故を起こして少年の命を奪ってしまいます。このとき、母親は息子の罪を軽くしようとお金を積んで、不利な証言をもみ消してしまうのです! 息子に罪を償わせようとせず、愛情という名のもとに息子のためなら何をしてもいいとさえ思っている母親……しかし、これらはすべて自分のためなのです。なぜなら息子が自立して離れてしまわないように、何から何まで面倒をみて束縛しているのですから。でもその結果、息子は人殺しをしても母に守ってもらうようなダメ男に……。この育て方はある種の虐待かもしれません。

    息子は夫の身代わりではありません!

ではなぜ母親はこれほど息子に執着してしまうのか。この映画の場合、夫との関係がうまくいかず、本来ならば夫と築くはずの夫婦の関係を息子にゆだねてしまったからです。たぶん娘だったらこうはならなかったはず。異性である息子だったからこその執着です。何不自由のない生活をしている母親ですが、孤独を抱えた彼女にとって息子は最後の恋人なのですね。だから執着してしまったのかもしれません。

これから母になるアラサー女子のみなさん、我が子に愛情を注いでも、心のどこかに距離を置くことが大切です。特に息子の場合、夫とうまくいかなくなっても息子を身代わりにしてはいけません。息子は夫ではないのです。特にお金で甘やかしすぎると息子は『私の、息子』のように間違いなく社会の落伍者になってしまいます。母になる日のためにも『私の、息子』はアラサーの必見映画と言えるでしょう。

●『私の、息子』
Bunkamuraル・シネマにて上映中。全国順次公開
http://www.watashino-musuko.com/

斎藤香