もしあの女性(ひと)がオフィスにいたら…? 第8回

女の「品」ってなんだろう 渡辺直美系女子を見て思うこと

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女の「品」ってなんだろう 渡辺直美系女子を見て思うこと

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女の「品」って、なんだろう。逆に、下品な女とは、どういう女のことを言うのだろう。それは、「下品(そう)なことをしてみせる」ことや、ファッションやルックスどうこうとは真には関係がないのかもしれない。そう思ったのは、主演ドラマに挑戦中の渡辺直美さんにマンガの原作者から贈られた「美しくて何をやっても“下品”にならない」との賛辞を目にしたのがきっかけだ。

「逃げない」覚悟

……ある日、独身アラサー編集のY子はしみじみとこう言うのでした。「河崎さん、渡辺直美さん、最近なんだかキレイですよね。前はちょっとチャラいイメージがあって、こんな女性が職場にいたらイライラしそうだなぁと思ったのですが、なぜだろう……」

Y子:人気絶頂の中、単身ニューヨークへの短期留学。その後は、テレビ、雑誌、ブランドプロデューサーと業界も縦横無尽に活動。今年の夏はとうとう『逃げ恥』と同じゴールデンプレミア枠のドラマ『カンナさーん!』(TBS系)で主演。なんか以前に比べてさらにパワーアップした輝きを放っているように思うんです。タレントとしての格が上がったというか……?

私:お笑い芸人という枠にとらわれない活躍ぶりと、迷いのなさが印象的ですよね。留学で、彼女は『自分の良さとかやりたいことは口に出さないとわかってもらえない』と知ったと発言しています。それを迷いなく実践しているのが今の姿なのかな。

Y子:Instagramのフォロワー数も、日本一。今年2月には、アメリカのワシントンポスト*で取り上げられたんですよ。

*『痩せすぎの日本で、ナオミ・ワタナベはぽっちゃりに誇りを持っている

私:もちろん読みましたよ! 女の子は痩せている方が可愛いとか綺麗というプレッシャーが根強く存在する日本で、「自分の体にポジティブなイメージを持とう、好きな服を着よう」という渡辺さんのメッセージは、日本ではこれまで全く存在しなかったわけではないけれど、ほとんど注意を払われず、黙殺されてきた。いま渡辺さんのメッセージに共感する女子がたくさんいるのは、日本が多様な価値観、多様な美しさを認められるようになり始めているからだと思います。

Y子:『和製ビヨンセ』と呼ばれたデビュー以来、実は汚女子(掃除やお風呂が嫌い)だとか、両親が離婚して破天荒なことばかりする母親に引き取られて、今は距離を置いているとか、そういう渡辺直美さん個人としてのエピソードが少しずつ出てきたときも、寛容に受け止められたように思います。

私:それは彼女が堂々としているからでしょうね。自分なりの原則を持っていると、ブレないし、新しい挑戦からも逃げないで済む。そういう風通しの良い心のあり方って、びっくりするほど正直に人に伝わるんですよ。そして人にも影響を与えて、いいサイクルを呼ぶんですよね。本人がところどころ悩みながらも頑張っている姿さえ、見る人が「いいな、私もそうありたいな」と思える渡辺直美さん、いま最強ですね。

本当に怖い「下品さ」の正体

今でこそ、旬の女優が主演を務めるドラマの枠で主演を務めている渡辺直美だが、コメディエンヌとしての彼女はその見た目を時に下品な言葉で揶揄されることもあっただろう。実際テレビに出はじめた頃はあえてそういうイメージを前面に出してキレキレの露骨にセクシーなダンスを得意とした彼女が、分野を超えて大活躍している。しかもその実力と安定感はプロたちもみな信頼を寄せるほど。

当たり役と言われている河東カンナは「イケメンだけど“マザコン&ゲス”な夫… 泣き虫で甘えん坊の4歳児… さらに家事・子育てをこなしつつ、実は地味でガテンなファッションデザイナー業の両立… しかし!どんな困難だって愛と勇気で乗り越える! ポジティブでハッピーな働くスーパーママが登場!」(番組公式HPより)との触れ込みで、毎回シンプルながら力強くポジティブな名言を連発し、ドラマも漫画原作もコアな人気を博す。

そんな中、原作漫画の作者・深谷かほるさんがドラマ化に寄せて前述のコメントをしていたのだ。

「私が『カンナ役は渡辺直美さんしか考えられない』とお願いしましたので、大変嬉しかったです。原作のカンナと渡辺さんは、美しくて何をやっても“下品”にならないところが似ていると思います。」(『カンナさーん!』原作者・深谷かほるさんのドラマ公式HP掲載コメントより)

確かに、最近私たちが渡辺直美さんの弾けっぷりに惚れ惚れとするのは、やはりその感性豊かな表情や自信のある態度に表れた「美しさ」ゆえ……なのだ。自信のある女、やりたいことをストレートに表現して手に入れていく女は、美しい。そして、毅然とした姿には品がある。

私たちが恐れるべき「品のなさ」というのは、ルックスが他人にウケるウケないとか細部のマナーの正誤であるとか、そんな表面的なところではないのかもしれない。感性が錆び付いていたり、融通が効かなかったり、ユーモアを失って卑屈だったり、嘘をついたり、損得ばかり勘定していたり、他人を引きずり下ろしたり、そういう人としての「下品さ」のほうが、本当は私たちを深く蝕んでいくのだ。

職場にいる渡辺直美さん的女性は、自分を知っている。自分のやりたいこともわかっている。だから自分を愛し他人も愛し、天性のコメンディエンヌとして明るく周囲を照らしてくれる。そういう人のいい「気」を受けて、私たちもこれまでやりたかったのに蓋をしてきたようなことや、迷っていることに思い切って挑戦してみようか。

(河崎 環)

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あの女性(ひと)なら、頭の固い上司にガツンと言ってくれたり、優しく悩み相談に乗ってくれたり、時にはライバルとして切磋琢磨しあったりするのかも。ワクワクするような想像を、コラムニストの河崎環さんが鋭い視点で分析していく連載エッセイ。

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