夏木マリさん『One of Love』

6月21日は「世界音楽の日」。夏木マリさんはこの日、今年で5回目になる支援ライブを行います。その母体となっているのは、夏木さんがパートナーである斉藤ノヴさんと共に取り組んでいる「One of Love」というプロジェクト。なぜお二人は自分たちの手で組織を立ち上げ、貧困国の子どもや女性たちを支援し始めるに至ったのか。ウートピ読者世代女性への貴重なメッセージも含めて、夏木さんにお話を伺ってきました。

旅行をきっかけに友人中心で始まった

――「One of Love」の活動を始められたきっかけは?

夏木マリさん(以下、夏木):きっかけは2008年、パートナーの斉藤ノヴと一緒に、子どもたちに音楽を届ける旅に出たことです。選んだ国はバングラディシュとエチオピア。特にエチオピアは大好きなバラがたくさん咲いている国で、そこでの人々と触れ合ううちに、私たちは今までにないようなハッピーな気持ちになりました。「これは1回来てサヨナラ、ではいけないね」と二人で話し、帰国後、現地で感じた疑問や問題を周囲にも相談してみました。すると、仲間たちにも同じく「人のために働きたい」という気持ちがあることがわかり、どんどん話が膨らんでいきました。だから本当に“友人中心”で始まったプロジェクトなのです。今もその感覚ですけれどね。

――貧困国の子どもや女性たちを支援しようと思ったのはなぜ?

夏木:私たちくらいの年齢になると、人のために何かしたい、と思うものです。でも人のために、なんて言うと語弊があるかもしれませんね。私たちは、上から目線ではなく、現地の人々と同じ目線で関わりたいといつも思っています。

支援を始めた理由は、シンプルに私たち自身がハッピーになるから。幼くして、学校よりも働くことを選ばざるを得ない環境の子どもたちに出会い、「彼らに未来を贈りたい」と思いました。エチオピアは農業国で、女性の多くはバラ園で働いているのですが、ほとんどが文字も読めず、仕事はすべて「絵」で指示されているような状態。本当に驚きました。

また、そうして働いている間にレイプされ、望まない出産をしている若いシングルマザーたちにもたくさん出会いました。母親と言っても、皆まだ10代の若い女の子ですよ。彼女たちにも、なんでもいいから「人生を頑張っていこう」と思えるようなチャンスを作りたい。そして少しでも雇用環境がよくなるようにと思い、教科書やパソコンを贈ったりしています。最近は離職率が減った、子どもたちも学力テストで優秀な成績を収めた、といった報告も届いていて、本当に嬉しく思っています。

「バラ」と「音楽」という2つの軸

621ライブ会場で販売する One of Love MARRY box

6/21ライブ会場で販売する One of Love MARRY box

――どこの団体にも属さず、自分たちでプロジェクトを立ち上げた理由は?

夏木:実は、それまでにもいろいろな団体からのお誘いがありました。でも私は広告塔になるのが嫌だったし、最後まで責任を持てる自信がなかった。まだ“その時期”ではなかったのだと思います。ボランティア精神はそもそもキリスト教に基づくものなので、日本やアジアでその感覚を自然に身に付けるのはなかなか難しいですよね。でも私には、自分からやりたいと思う時期がやって来た。そして実際にやってみたら、こんなにハッピーになれるものなのだと気付きました。

「どうせやるなら、自分たちらしい支援を」とも考えまして、私たちが大好きな「バラ」と「音楽」という2つの軸で、友人たちと一緒にやっていくことにしました。1からプロジェクトを立ち上げるのは、本当に、かなり大変でしたけれどね(笑)。

――夏木さんの名前のついたバラも誕生したとお聞きしました。

夏木:「One of Love」は、毎年6月21日のライブの収益と、賛同してくださる日本の花屋さんでのバラの寄付金で成り立っています。皆さんにたくさんバラを買っていただきたい気持ちもあって、私が種から選んで、品種改良に取り組みました。「マリルージュ」と名付けています。

>>【後編はコチラ】「安定したらブスになる」 夏木マリさんが若い女性に語る、自分らしい人生の見つけ方


●ライブ情報

『One of LoveプロジェクトGIG vol.5』
-途上国の子供たちに未来の仕事を贈るプロジェクト-
日時 2014年6月21日(土) 開場 17:30 開演 18:00/会場 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
【詳細はコチラ】http://natsukirock.com/archives/11098

●夏木マリ / MARI NATSUKI
73年デビュー。80年代から演劇にも活動の場を広げ、芸術選奨文部大臣新人賞などを受賞。93年からコンセプチュアルアートシアター「印象派」で、身体能力を極めた芸術表現を確立。09年パフォーマンス集団MNT(マリ ナツキ テロワール)を立上げ主宰。ワークショップを通じて後進の指導にも力を入れ、またその功績に対しモンブラン国際文化賞を受章。同年、バラと音楽の支援活動「One of Loveプロジェクト」を設立。13年エッセイ「私たちは美しさを見つけるために生まれてきた」(幻冬舎)を出版。夏フェスへの参加など勢力的なライブ活動で反響を呼び、さらに「夏木マリ 丈夫も芸のうち」(NHKラジオ第1毎週火曜20:05〜20:55)ではパーソナリティ、WEBマガジン「NATSUKI ROCK(natsukirock.com)」では編集長、音楽トーク番組「夏木スタイルOne of Love」(MXTV 毎週月曜23:00-23:30)ではナビゲーターを務めるなど、多方面で幅広く活躍。本年6月12日-15日 世田谷パブリックシアターにて自身の演出である舞台「印象派NEO vol.2-灰かぶりのシンデレラ-」を上演した。

外山ゆひら