日本一ちっちゃな働きかた改革 第15回「会社、辞めます」座談会3

独立直後の「退職エントリー」が大事! 仕事に困らない上手なフリー転身

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独立直後の「退職エントリー」が大事! 仕事に困らない上手なフリー転身

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「フリー編集長」と「社畜プロデューサー」というまったく異なる立場から、ウートピ編集部というチームを運営している鈴木円香(33歳)と海野優子(32歳)。脱サラした自営業者とマジメ一筋の会社員が、「心から納得できる働きかた」を見つけるため時にはケンカも辞さず、真剣に繰り広げる日本一ちっちゃな働きかた改革が現在進行中です。

海野P(左)と鈴木編集長(右)

海野P(左)と鈴木編集長(右)

第7回から続けてきた「有識者会議」をおやすみして、夏の番外編として座談会を挟むことに。

テーマは、「私、今まさに会社を辞めようとしています」。会社に縛られずに自分の好きな時間に好きな場所で仕事をしたい。夏休みは、そんな思いが膨らむ時期かもしれませんね。

今回は、「まさに辞めようとしている人」「辞めた直後の人」「やめて1年ほど経過した人」と、3人の脱サラ・フリーランサー志望者を招集。それぞれの「辞める理由」と「辞めてみて感じたこと」を聞いてみました。聞き手は、自分も辞めて2年目の新米フリーランサーの編集長・鈴木です。

第1回第2回に続いて、最終回は「フリーとして生き抜く知恵」について聞いてみました。会社員マインドとフリーマインドはどう違うの?

今回座談会に参加してくださったのは、こちらの3人。

武田さん(仮名):34歳、現在外資系メーカーのPR担当。今年いっぱいで退職して来年からフリーランサーとしてPRの仕事をしていく予定。

七瀬さん(仮名):28歳、大学を卒業後、大手百貨店に勤務。中小企業、ITベンチャーを経て2ヵ月前からフリーランスのコミュニティ・マネジャーとして独立。

光浦さん(仮名):27歳、大学院を卒業後、大手日用品メーカーでSEとして勤務。1年ほど前に退職してフリーライターに転身。現在ライター業一本。

「退職エントリー」はあくまでポジティブに

——ここまでフリーになった経緯や理由について聞いてきましたが、今回はフリーとして生きていくための知恵をいろいろシェアしていただきたいな、と。

会社員からフリーになると、やっぱりマインドの面でも切り替えが必要になってきますよね。最大の違いは「仕事を与えられる」か「仕事を取ってくるか」。会社を辞めれば当然、自力で仕事を獲得してこなきゃいけないわけですが、そのあたりで苦労することはなかったんですか?

七瀬:やっぱり辞めるまでにある程度、下地は準備しておいたほうがいいですよね。それなしに独立すると、当然「仕事がない!」っていう状態になっちゃうので。早め早めに準備はしておくべきです。

武田:でも、どの時点から準備を始めるかは難しくないですか? あまり早い段階からオープンにはできないし。独立後も同じ業界で仕事をするとなると、世間は狭いからすぐに話が回っちゃうじゃないですか。フリーになってからも今の会社の人と仕事をすることになると思うので、「アイツ、仕事を持っていった」みたいに思われたくないし。でも、独立直後から仕事があるようにはしておきたいし、その兼ね合いに今すっごい悩んでます。

光浦:そうですよね、そういうの、かなり気を遣いますよね。やっぱりいい形で辞めて、今の仕事仲間ともいい関係をキープしたいですよね。

七瀬:私の場合、第2回で話したように、フリーになる前に仕事でつながりのある人に散々相談していたから、独立後もすぐに声をかけてもらえました。でも、それとは別にブログでの発信は、次の仕事につながるように意識してやりましたね。

武田:聞きたい! どんなふうに発信したんですか?

七瀬:特に気をつけたのは「退職エントリー」ですね。会社員時代からブログを続けていて、仕事仲間の間でもかなりのファンがついていたんです。そのブログで「辞めます、独立します!」と報告する時に、仕事のオファーが来やすいのはどんな書きかただろう?とよくよく考えましたね。

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——ほう! どういう書きかたがいいんですか?

七瀬:ネガティブな要素を書かないことですね。「会社を辞める」って、必ず何かしらネガティブな要素があるはずなんです。やりたい仕事をやらせてもらえないとか、同僚や上司と人間関係がうまくいかないとか、仕事内容がつまらないとか、逆にハードすぎるとか。でも、そういうのは一切匂わせない。それが鉄則。

とにかく前の職場の評判を下げないように細心の注意を払って、心のモヤモヤはいろいろあっても「今の職場は素晴らしいけれど、自分が次のステージに進むタイミングが来たと感じたから」というトーンで書くこと。愚痴っぽいことも含めて言いたいことは山ほどあるけど、あくまでポジティブに

——なるほど、次の仕事を考えても、できるだけポジティブな形で踏み出してる感を演出していきたいですよね。

武田:ホントそれ大事だと思います。数ヵ月後にフリーになる身としてはすっごい参考になります!

七瀬:退職エントリーを書いてみて、やっぱり「辞めます、独立します!」と公にしておくことは大事だな、と痛感しましたね。辞める前も「一緒に仕事しましょうよ」と声をかけてくる人はいたけれど、やっぱり退職エントリーを読んで「コイツ、辞めたんだ。ちょっと声かけてみよう」と連絡をくださった方はたくさんいましたね。直接面識はなくても、業界で結構影響力のある人が見ていてくれる場合もあるので。

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——辞めるまでにブログやSNSでつながりを準備しておいて、独立直後にポジティブな形で退職エントリーを発表するという方法ですね。これなら、今の職場に後ろめたさも感じないし、仕事に困る時期も最低限に抑えられそうです。

生活レベルはとりあえず落としておく

——どうやって仕事を取ってくるかも不安ですが、お給料という定期収入がなくなって本当に生活していけるかどうかも不安だと思います。その点についてはどのくらい準備しているんですか?

武田:今まさに鬼貯金してます(笑)。特に、服、小物、化粧品は買わないようにして、浮いたお金は全部貯金。でも、やってみると、これまで買ったもので十分やっていけるということがわかって、ストレスは全然ないですね。あとは週1くらいはお弁当にしてランチ代を浮かせたり、仕事の空き時間にカフェでお茶するのをやめたり。独立直後の収入が未知数すぎるから、とにかく貯金!

光浦:貯金はある程度してましたね。社員寮に住んでいたので家賃がかからない分、浮いたお金をどんどん貯金に回して。基本向こう見ずでしたけど。半年の無収入は覚悟してました。「あんまりダラダラやっても」と思っていたので、半年フリーをやって何も見えてこなかったら会社員に戻ろう、と。

——無収入の期間があるかもしれないし、もし自分が期待していたほど稼げなかった時に、収入を得るためだけに受けたくない仕事を受けなきゃいけないというプレッシャーにさらされるのもイヤですよね。せっかくやりたい仕事をやるために独立したのに、生活のためにやりたくない仕事をやるのは意味がない。その意味でも、とりあえず生活レベルを下げておくのは大事かもしれません。

七瀬:私も生活レベルはストレスにならない範囲で下げましたね。仕事が回っている時は問題なくても、フリーは傷病手当や休職制度がないからもしもの時のために「ここまで下げても大丈夫」というレベルを把握しておいたほうがいいな、と感じて。まずは、固定費を抑えるためにシェアハウスにひっこしました。部屋を借りるより移動がカンタンだし、横のつながりもできるし。

光浦:私も実は今、シェアハウスに住んでます。固定費を抑えておきたいと理由もあったんですが、実際にフリーになってみると、シェアハウスにしておいて本当によかったと思います。というのも、取材やミーティングで外出の予定がないと、「あれ? 今日一日、誰とも会ってないぞ」ってなっちゃう時があるから(笑)。シェアハウスなら共有スペースで必ず誰かと話せます。

七瀬:それ、新米フリーあるあるですよね(笑)。独立直後って、そんなに仕事がたくさんないから、コンビニの店員さんに「レシート要りますか?」と聞かれて「はい」と答えたのが今日唯一の会話だった……みたいな日もあったりして。

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辞めても「会社の看板」は使える

——仕事の取りかた、生活費のこと、会社を辞めてフリーになるあたり不安なことはいろいろあると思いますが、来年からフリーになろうとしている武田さんは他に不安に感じていることはないんですか?

武田:そうですね、不安はいろいろあるんですが、「会社の看板」が使えなくなっても大丈夫かな?とは思いますね。今はそれなりに名前の知られた会社にいるし、前職も大手だったので、名刺一つあれば会いたい人にはだいたい会えたんです。でも、辞めて会えなくなっちゃったらどうしよう……と。看板があるからこそ持てる人脈って結構あると思うんです。

七瀬:でも、10年もその業界で仕事をすれば、フリーになっても困らないほどの人脈はもうできているのでは?

武田:そうなのかなあ。

七瀬:それに辞めてからも「会社の看板」は使えますよ。たぶん、一生使える(笑)。私、大学が無名なので、最初に入社した大手の看板で人とつながることはいまだに多いです。仕事をしていて同じ会社出身の人に出会うことも珍しくないですし。辞めても「看板」はなくならないです。

——「看板が外れたから」とかあんまり気にしなくていいかもしれませんね。

七瀬:フリーになったら、もちろん個人名で「自分の看板」も背負っていかなきゃいけないんですけど、同時に前職の「会社の看板」もまだまだ使える。「自分の看板」を守るという意味では、ヘンな失敗はできないし、土日に仕事があればやらなきゃいけないし、大変なことはいろいろありますけどね。

ひとり会社vs.個人事業主

——最後に「フリーのカタチ」について聞いておきたいと思います。武田さんはフリーといっても法人化してひとり会社としてやっていく予定とのことですが、七瀬さんと光浦さんは個人事業主ですよね。

七瀬:ですね。常々疑問なんですけど、会社化ってどのタイミングでやるものなんですか?

武田:私が仕事をしているPRの業界では、個人事業主だと信頼がなくて会社と契約が結べないケースがあるんです。だから大手クライアントと仕事をしていくためにも、ひとり会社とはいえ法人にしておいたほうがいいな、と。

——ひとり会社だと、個人と法人の両方に税金がかかるし得とは言えないけれど、実際には個人だと契約の面でハードルのあるクライアントは少なくないので、会社化しておくメリットはあるかもしれません。

七瀬:でも、会社化したら大変じゃないですか? 私、「社長」にだけは絶対になりたくないんです。ひとりならまだしも、人を雇うなんて、そんな重責には耐えられない。フリーを続けて仕事を増えたら、会社化も選択肢として出てくるかもしれないけれど、その時は自分は社長にならずに代表をやってくれるパートナーを探します。

武田:私も人は雇いたくないですね。ひとり会社でやりたいです。

光浦:私も会社化して人を雇いたくはないですね。ひとりがいい(笑)。

——そうですね、ウートピ世代のフリーランサーをヒアリングしていても、個人事業主とほとんど変わらない「ひとり会社」のまま続けている人は多いですね。チームで仕事をする時も、メンバーはプロジェクトごとに募って月契約にしたり。「人を雇う」というリスクは取りたくないという声は聞きます。

七瀬:まだフリーになって日が浅いのでこの先どうなるかわかりませんが、別に一生ずっとフリーでなくてもいいかな、と思ってます。仲間を見つけて自分が社長にならない形で会社化するのもありだし、もう一回会社員やるのもありだし。ただ一つだけ決まってるのが、「フルタイムはもうなし」ってこと。

光浦:私もそれは「なし」ですね。

七瀬:フルタイムではなくて、週3勤務で「フリーで仕事受けるのもOK」など、パラレルキャリアを許容してもらえるなら、会社員に戻るのも全然ありです。最近はそういうフレキシブルな勤務形態OKの企業も出てきてますしね。

武田:私もそうですね。今はたまたま子供が小さいし、プライベートとのバランスを考えると「ひとり会社」を選びましたが、それを一生続けるかどうかはわからない。また会社員をやる可能性も十分あるな、って思ってます。

——なるほど、今はいろんな状況を考えて「たまたまフリー」をやっているけれど、今後状況が変われば会社員に戻る可能性も残しているんですね。「フリーか会社員か」の二者択一ではない柔軟なスタンスは、すごく今っぽいな、と感じました。

「ウートピ働きかた改革」の夏休み企画として全3回でお送りしてきた「私、今まさに会社を辞めようとしています」座談会、いかがでしたか? 「会社を辞めよっかな?」という気持ちになった時、「フリーか会社員か」の二択から離れて考えてみると、自分でも気づかなかった意外な選択肢が出てくるかもしれません。

(構成:ウートピ編集長・鈴木円香)

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脱サラした自営業者のウートピ編集長・鈴木円香と、社畜プロデューサー海野Pのふたりが、時にはケンカも辞さず本気で持続可能なワークスタイルを模索する連載です。

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