日本一ちっちゃな働きかた改革 第12回 安藤美冬さんインタビュー(後編)

「好きな仕事」なんか探さなくていい。女性に必要なのは「好き」より「自由」

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「好きな仕事」なんか探さなくていい。女性に必要なのは「好き」より「自由」

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「フリー編集長」と「社畜プロデューサー」というまったく異なる立場から、ウートピ編集部というチームを運営している鈴木円香(33歳)と海野優子(32歳)。

脱サラした自営業者とマジメ一筋の会社員が、「心から納得できる働きかた」を見つけるため時にはケンカも辞さず、真剣に繰り広げる日本一ちっちゃな働きかた改革が現在進行中です。

第7回からは「有識者会議」ということで、今、話を聞いてみたいゲストに会いに行くことに。今回のゲストは、旅をしながら仕事をするフリーランサーとして活躍中の安藤美冬(あんどう・みふゆ)さん。

フリーになるにしろ、起業するにしろ、独立系女子といえば、どことなくスーパーウーマンという感じがして「マネできない……」と気おくれしてしまうもの。でも、ミッフィこと、安藤美冬さんはすごく身近な同世代に思える。そんな、ちょっと失礼な理由から、「ぜひ、話を聞いてみたい!」と取材を申し込んでみたふたり。

前編に引き続き、後編でも「はたして“フリー”はフツーの女性にとって本当に選択肢になりうるの?」という問題を考えていきます。

みふぃ2

退職までの1年8ヵ月にやったこと

鈴木:前半では、「独立の種」がなくても、「他人よりちょっと詳しいこと」を3つ掛け合わせればフリーランスとして生きていけるという話を聞いてきました。後半では、安藤さんが独立を決意されてから、実際に独立されるまでの話を聞いていきたい思います。

「フリーになろう」と決めてから会社を辞めるまで、どのくらいの準備期間があったんですか?

安藤美冬さん(以下、安藤):1年8ヵ月かけましたね。その期間に準備したことは3つありました。1つ目はお金。

鈴木:そりゃ、やっぱりお金ですよね。私も一番に準備しました。

安藤:私の場合は、まず「ミニマム・ライフコスト」を計算しました。家賃、交際費、衣食住など、「毎月これだけは絶対に必要なお金」を割り出してみたんです。すると、25万円だった。ちょうど断捨離をした頃でブランド品も買わなくなっていて、1Kでも住めるくらい物を持たない生活を始めていたので、そのくらいあれば十分でした。

鈴木:突っ込んだことを伺いますが……結局いくらくらい準備したんですか?

安藤:一応計画としては、月25万円として年間約300万円、3年間収入ゼロでも生きていけるように900万円貯めようと思ってました。でも、結局貯められなくて退職金を当てにしちゃいましたね(笑)。最終的には目標額を下回る650万円くらいの貯金で会社を辞めました。

鈴木:それにしても3年間収入ゼロってかなり悲観的な見通しですね。

安藤:そうなんです、私、実は結構悲観的なんです。性格は楽観的だけど行動はわりあい慎重。フリーランスとして3年やってダメなら会社員に戻ろうと決めていました。その時33歳だから再就職できるでしょう、と。だから、とりあえず生活費3年分だったんです。

海野P:会社を辞められない理由はいろいろありますけど、やっぱりお金は大きいです。固定収入がなくなるのは怖くて怖くて。

安藤:そういう方は多いですよね。会社を辞められない理由として「お金」を挙げる人は多い。でも、不安の根は本当はもっと別のところにあって、それを「お金」のせいにしちゃってるだけという部分もある気がしますが。

3つの準備の中で一番大事なのは「人」

鈴木:独立に向けた3つの準備のうち、2つ目は?

安藤:「人」ですね。前半で私には「独立の種」がなかったという話をしましたが、だからなおさら「人」は大事だったんです。会社の看板を外した時に仕事が来るのか本当に未知数だったので、とにかく人と繋がろう!と。というのも、すべての仕事は人を介してやってくるし、人と一緒にやっていくものだから。3つの準備の中でこの「人」が一番大事でした。

鈴木:確かに、すべての仕事は「人」が運んできてくれますよね。具体的にどんなふうに人と繋がっていったんですか?

安藤:3000人と会いました。

鈴木:3000人!? 

安藤:はい。3000人と会えば、そのうちの1%に当たる30人と仕事ができるだろう。そうすれば回るだろうと考えて。

鈴木:どうやって計算したんですか?

安藤:いや、計算はしてません、直感です(笑)。1000人の1%の10人じゃ、ちょっと少ないかな、って。

鈴木:どうやって3000人と会うんですか?

安藤:独立しようと決めて会社を辞めるまでの1年8ヵ月の間、月150人を目標に人と会い続けました。「安藤美冬」という個人の名刺を作って、会社の仕事以外の場で3000人と名刺交換をし続けたんです。名刺をいただいたらメールで挨拶をしたり、SNSで繋がったり。貯金は達成できなかったけど、これはちゃんと達成しました。

鈴木:今も安藤さんは、フェイスブックのフォロワーが2万人超、ツイッターが5万人超ですからやっぱりすごいですよね。

安藤:リアルに人と会いながら、同時にSNSの繋がりをどうやったら強みにできるのか勉強を始めていました。辞める1年くらい前からかな。

最初の頃は上司から「おまえ、業務中にツイッターやるな」って怒られてたんですけど、フォロワーが増えてくると、「このキャンペーンのこと、おまえのツイッターでつぶやいてくれ」と頼まれるようになって。気づいたら宣伝部内で一番フォロワー数が多くなってたんです。それからは堂々と業務中にツイートするように(笑)。

鈴木:変わるもんですねえ! 3つ目の準備は?

安藤:3つ目は「強み」ですね。これは私の場合、前半でお話しした「掛け合わせ」です。「世界50ヵ国を旅したことがある」「英語ができる」「人をいっぱい知ってる」の3つを掛け合わせることが、私の「強み」になりました。

ミッフィって、何屋さん?

鈴木:「お金」「人」「強み」の3つが揃って、いよいよ30歳で独立となったわけですが、すぐに仕事は来ましたか? 食えない時期はありませんでしたか?

安藤:ありました、ありました。とりあえず最初の半年は食えなかったですね。無収入が5ヵ月も続いて、6ヵ月目にしてやっと3万円。最初の仕事は、友達がくれたウェブサイトの進行管理でした。

海野P:まさか、ミッフィにも食えない時期があったとは……!

安藤:ゼロが5つ並んで……あの3000人、どこいったって?って感じですよね(笑)。でも、まわりも私にどんな仕事を頼んでいいかわからなかったんだと思います。だって、本人が何をやるか決めてないから。

鈴木:「ミッフィって、何屋さんなの???」って感じだったんですね。

安藤:それにプライドが邪魔して「仕事ください!」とも言えなくて。

海野P:言えないかも……。

安藤:やっぱり30過ぎて大手から独立するとプライドがあったんです。「ミッフィ、最近どうしてる?」と声をかけられるのも怖くて。飲み会に誘われても行けなくて。ツイッターやろうにも、「今日も一日家から出てないから、何も書けないぞ……」ってなっちゃったり。弱いところが見せられなくて、引きこもってましたね。

海野P:せつない……。

安藤:でも、カッコつけても仕方ないや、人間くさいところが安藤美冬なんだと思い直して、「仕事を取りにいくぞ!」と自分に興味を持ってもらえるような情報発信をすることにしました。それからは本当に何でも屋です。企画書を書いたり、友達のメルマガ手伝ったり、イベントを企画したり……声をかけてもらったら何でもやりました。今も基本、何でも屋なんですけど。

鈴木:そこから、メディア関係者の目に止まり、「ニッポンのジレンマ」(NHK)や「情熱大陸」(毎日放送)に出演されて、私たちも知っているミッフィ・フィーバーが始まったと。

安藤:そうですね、2011年の春過ぎから、有名企業から数十万単位の仕事が来て、佐々木俊尚さんはじめメディア関係の方に知られるようになって、そこからやっと……という感じですね。側から見れば、ぽっと出でなんだかミラクルみたいに見えるかもしれないですけど、私にしてみれば、その時点で「やっとスタートラインに立てたな」という感じでした。

「好きなこと」にこだわりすぎじゃない?

海野:ここまで話を伺ってきて、フリーランスって、大変そうだけどすごく楽しそうだな、って改めて思ってしまいました。好きなことを仕事にしているのは、本当に憧れます。

安藤:フリーになってから「フリーを辞めたい」と思ったことは一度もないし、確かにすごく楽しいです。でも「好きなこと」を仕事にしているかといえば、そうでもないんですよ。

海野:というと?

安藤:私、「好きなこと」にはあまり意味がないと思っているんです。「好きなこと」って探し始めると、いっぱいありすぎるか、全然ないかのどちらか。むしろ、仕事でも、人でも、物事でも、何でも好きになれる才能の方が大事じゃないかな。私は10代の頃からずっと「好きな人」と「好きな場所」で「好きな仕事」をしたいと思っていたけれど、「好きな仕事」には一番比重を置いてなかったんです。

海野:私、「好きなこと」をやらなきゃダメだと思い込んでたかも……。

安藤:大学生の頃、本当にいろんなバイトやってたんです。チラシ100枚ごとに黄色の紙を挟むバイトとか、所得通知の内容が見えないように紙を貼るバイトとか……。仕事そのものはきつくて単調なんだけど、「1時間で何枚やるぞ!」と決めて隣のおばちゃんと一緒に仕事を楽しんじゃってた。そういう経験もあって「好きなこと」より「楽しむこと」を大事にしてきました。

鈴木:確かに、今ってみんな「好きなこと」にこだわりすぎるあまり苦しんでるところがあるかもしれないですね。

キャリア・アップは嫌いな言葉

安藤:私たち女性の働きかたを考える時、「好きなこと」より「自由」の方が大事だと思うんです。「好きなこと」って、気分によってコロコロ変わるじゃないですか。今日まで好きだったことも、明日になれば飽きちゃうかもしれないし。その逆もあるし。

海野:確かにー!!! 

安藤:だから、「私の好きなことって何???」って探し続けるよりも、気分に合わせて働きかたを変えられる「自由」を獲得すべきなんです。ライフステージとか、その時々の興味・関心に応じて、柔軟にワークスタイルを変えられる自由。日本社会よりも、経済状況よりも、世界情勢よりも、何よりも私たち女性の気分は一番変わりやすいですから。

海野:(いや、ほんとそう…)

鈴木:(ほんまにそう!)

安藤:女性の場合、「山歩き」的なキャリア観を持ってる人が多いなあ、って感じます。気分に合わせて散策したりお弁当食べたりお昼寝したり……そんなふうに山そのものを楽しむイメージです。それに対して男性に多いキャリア観は「山登り」。「今年は5合目まで登るぞ」「来年は8合目まで登るぞ」という感じで、今より高い収入・スキル・ポジションを目指して直線的に進んでいく。まさに“キャリア・アップ”ですよね。

鈴木:私自身も「上に行こう」という気持ちは全然ないですね。心地よく働けたら、それでいいや、って感じです。

安藤:私個人は「キャリア・アップ」という言葉が嫌いなんです。別にアップしなくてもいいじゃんって思っちゃう。山に来て裾野を歩くだけでもいいし、気分が乗らなければ家に帰ってもいいと思うんです。だから、最近は代わりに「キャリア・スライディング」という言葉を提案していて。気分に合わせて、働きかたをスライドしていくという横方向のキャリア観です。

海野P:横方向かあ……考えたことなかった。縦方向しか見えてなかったです。

安藤:横もアリなんですよ。

海野P:いやー、安藤さんのお話聞いてると、これまで自分が感じていた不安って、そんなに重要じゃないのかも、と思えてきました。「専門性がない」や「好きなことがない」って、働きかたを変えようとした時にぶつかりがちな壁ですが、そもそも壁じゃなかったのか、と。お話、聞けてよかったです。ありがとうございました!

(構成:ウートピ編集長・鈴木円香)

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