ブスの社会学 第4回 ブスのパートナー問題(前編)

男性が求める理想のパートナーは「自分の心をざわつかせない女性」その真意は?

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「でもブスだよね?」——仕事で評価されても地位を得ても、私たち女性はその一言で突き落とされてきました。それほど強く根付いた“ブス”という価値観が、近年のCMや企業動画の炎上を経て、少しずつ変わり始めているようです。それでも、いまだ“美人“であることを求められる現代社会。私たちはどうサバイブしていくべきなのでしょうか?

著書『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)などで女性を論じてきた稲田豊史さんと、数回にわたり紐解いていく連載です。

結婚する「ブス」と結婚できない「美人」

前回は、かつては“ブス”枠入りだった女性お笑い芸人の結婚問題について述べた。今回はそれに関連する、“ブス”のパートナー問題について考えたい。

古来から、あたかも公理のように言われてきた「美人は引く手あまた、“ブス”はニーズがない」は、果たして注釈なしの真実なのだろうか?

美人は不特定多数からモテる、チヤホヤもされる。それは真実だ。しかし結婚願望のある絶世の美女が生涯の伴侶探しに難航したり、どの交際相手とも長続きしなかったり……というケースは珍しくない。一方で、容姿がビハインド気味の女性が、年若くして最愛の伴侶を見つけ、瞬速で結婚するケースも見受けられる。

念のために言い添えておくと、「美人は性格ブスで、ブスは性格美人」とか、「美人は容姿にあぐらをかいているから自己研鑽を怠っている。ブスは容姿の欠落をバネに自助努力を怠らないから中身がある」などと決めつけるつもりは、毛頭ない。賢く気立てのよい美人も、愚かで心が醜い不美人も、たくさんいるからだ。

「ブス」は誰とマッチングする?

美人が――無意識的にせよ――自分の容姿と釣り合う高スペック男性を伴侶として狙いがちなために、お眼鏡にかなう相手となかなか巡り会えない、という傾向はあるだろう。

要は、もし「私の容姿と釣り合うのは年収2000万円以上のイケメン」と最初から決めて婚活に挑めば、おのずと候補男性の数は減り、マッチングの確率は下がるということだ。

そして“ブス”が――こちらも無意識的にせよ――自分の容姿と釣り合う「そこそこスペック」の男性で「まあいいか」と胸をなでおろしがちなのだとすれば、候補男性の数は増え、マッチングの確率は上がる。むろん男性側からの「俺には彼女(くらいの容姿の子がちょうど)かな」という納得もカップル成立を後押しするだろう。

ちなみに、若い女性の早婚志向が強まっているという報告もある*。

結婚紹介サービスの楽天オーネットが2017年の新成人を対象に行った調査によると、「結婚意向あり」の女性の45.1%は25 歳までの結婚を希望しており、2016年の39.7%から5ポイント以上増加しているという。

*2017年新成人の恋愛・結婚意識調査( 結婚相手紹介サービス「楽天オーネット」調査)
https://onet.rakuten.co.jp/company/release/2017/20170105.html

早婚志向の理由はさまざまあるだろうし、早婚希望者が全員“ブス自認者”だと断定するつもりもないが、「そこそこの相手で、早いとこ手を打とう」派の女子が増えているとは言えそうだ。さすが、高望みをしない現実主義者「さとり世代」である。

ただし、ある女性の容姿が“ブス”かどうかという判断は、主観的なものだ。ある女性が多くの人間から“ブス”と陰口を叩かれようが、その容貌を心から「愛おしい」と感じる人間がいないとは限らない。逆も然りだ。

男性の皆が皆、北川景子や菜々緒のご尊顔が最高だと思っているわけではない。女性の皆が皆、ジャニーズタレントや堺雅人や西島秀俊の顔を最高だと思っていないのと、同様に。

と、ここまで思いつくまま、美人と“ブス”のマッチングについて論点を挙げてみたが、実は本稿で言いたいのはただ一点だけ。「“ブス”は男を萎縮させない」である。

「女、怖い」女子トークに萎縮する男たち

「草食系男子」という概念が死語だろうがそうでなかろうが、2017年現在、恋愛や結婚に対して多大なるプレッシャーを感じている未婚男性が多いのは事実である。

全女性人口のコンマ何%でしか存在しないであろう「ニコタマーゼ」「VERY妻」的な思考をWEB版「東京カレンダー」*で見かけてはおそれおののき、「ハイスペ婚」なる超特殊事例をNHK Eテレの『ねほりんぱほりん』**で目の当たりにして、「自分は完全に蚊帳の外……」と、被害者意識まんまんで溜め息をつく。

それが今の男たちである。

*東京カレンダー 連載「二子玉川の妻たちは」

**NHK Eテレ「ねほりんぱほりん」 2016年11月5日放送「ハイスペ婚の女」まとめ

また、かつては女子会や女性誌の中でのみ語られていた女性のオトコ品定めトークやシビアな結婚観の披露は、ネットメディアの登場によって、われわれ男性も普通に目にするようになった。

「ウートピ」も含めた女性向けメディアで発信される「女性のホンネ」は、男たちも毎日のように目にしているのだ。その内容はおおむね辛辣で、ショッキングで、的を射ているだけに、われわれ男性を大いに萎縮させる。「女、怖い」と。

別に、世の女性の皆が皆、居酒屋で「タラレバ」とクダを巻いているわけでも毒づいているわけでもないはずだが、WEBの煽り記事を通せば実際そう見えてしまうのだから仕方ない。インターネッツ、怖い。

こうして萎縮した男――後編でも言及するが、おおむね30代後半以降――は、なんなら具体的な恋愛対象が目の前にいないうちから先回りして疲弊し、やがて「自分の心をざわつかせない」ことを理想のパートナー条件に設定しはじめる。

そんな彼らは一様に地味顔の、“親に紹介しやすそうな”容貌の女性を好みがちだ。

理由は、(事実かどうかは別として)合コン慣れしてなさそう、自分を別の男性と比べて品定めしなさそう――だから。波風を立てない、自分に面倒ごとを運んでこなそうな、倹約家っぽい……とも言い換えられよう。それが彼らの言う「自分の心をざわつかせない」の意味だ。

そしてここが大事なポイントだが、「地味顔」とは、“ブス”の一支流でもある。

このような強引な言い換え、無理のある連想ゲームを経て、男たちはまったくもってノーエビデンスな、しかしそれなりに説得力のある結論を導き出す。

「“ブス”は男を萎縮させない」

……異論反論は承知の上。次回は彼らの浅はかな思考と「ブス」の獲得しうる(まさかの)優位性について、もう少し材料を提示したい。

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いまだ“美人“であることを求められる現代社会。私たちはどうサバイブしていくべきなのでしょうか? 稲田豊史さんと紐解いていきます。

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