元サヤで前よりいい関係を築ける人は?カギは相手と自分の「微少の変化」

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元サヤで前よりいい関係を築ける人は?カギは相手と自分の「微少の変化」

いろいろと事情があって、一度別れた相手ともう一度やり直すことに……。

世に言う「元サヤ」というやつですが、この「元サヤ」には「妥協した」「情に流された」「意志が弱い」「押し切られた」……と、とかくネガティブなイメージがつきまといます。

でも、イヤというほどおたがいのことを知り尽くしているからこそ、「もう一度」となった時には、新しい恋愛にはないプラス面もあるのでは? 心の持ちようによっては、前よりもいい関係が築ける可能性もあるのでは?

ということで、今回は、一度は別れたパートナーと結婚してふたたび一緒に生きていくことを決めたライターの吉田潮(よしだ・うしお)さんに、「元サヤの美学」というテーマで書いていただきました。

「別れた男は死ねばいい」と思っていた

別れた男は死ねばいい。そう思っていた。連絡先、一緒に撮った写真、もらったものから思い出まで、すべてを棄てて自分の歴史から抹消。付き合っていた頃の楽しさや高揚感も否定し、一切合切を棄てた。フラれた率が高かったからかもしれない。

フラれた直後は泣きまくって、女友達に傷口を舐めてもらっていた。傷口に粗塩を擦りこむ頼もしい女友達もいて、カラオケでは、中島みゆき→杏里→竹内まりや→研ナオコメドレーを浴びせてくれたものだ。

精神的に殴打されても、立ち上がるのは比較的早いほうだったと思う。食欲が失せることも一切なかった。泣きながらご飯を食べたことがある人は生きていけるという名言もある(ドラマ『カルテット』で松たか子が言っていた)。そして、愁(うれ)いを身につけて浮かれ街あたりで名をあげるべく、超速攻、次へ行くスタンスだった。

だから、「元の鞘に収まる」、通称・元サヤなんて、ありえないと思っていた。一度別れた人と復縁するという意味自体がわからなかった。元サヤ現象否定派だったのだ。

居酒屋でレモンサワーを飲みながらの告白

ところが、男女関係は本当に誰にもわからないもの。まさか、と思うことがうっかり起こる。謎の化学反応も起こるし、想定外の相殺作用や相乗作用も起こってしまうのだ。自分自身にもこの「まさか」が起きたのである。

私は彼の子供が欲しくて、一緒に住みたかったのだが、彼自身はそこに踏み切れなかった。次第にエスカレートして、視野狭窄になった私が、彼を追い詰めてしまった。3年近く付き合ってきたのだが、人生の方向性が違うのは大きな溝だと思い、別れることになった。その男と、1年後、元サヤに収まったのである。

細かい経緯は忘れてしまったのだが、当時、彼は芝居をやっていて、それを観に行く機会があった。観た後で「感想を聞かせてほしい」と言われ、そこで彼の芝居に超絶ダメ出しを食らわせたのだった。

彼は酒を煽りながら、重箱の隅をつつくような私のダメ出しとイチャモンに近い意見を真摯に聞き続けた。最終的にはへべれけに酔っ払いながら、「こういうことを正直に言ってくれるのは、あなたしかいない」「もし結婚するんだったら、あなたしかいない」的なことを口走ったのだ(後で聞いたら本人まったく覚えていないと言うのだが、確かに言ったのだ。安い居酒屋でレモンサワーを飲みながら)。

相手にちょっとでも変わる気があるなら

「子供をもつ」「一緒に住む」という点で、お互いの方向性や生活指針が異なることで別れたはずだが、この1年間でなんとなく彼が変わった(弱った?)ように感じた。あきらかに変化を遂げた気がしたのだ。

これは、よりを戻せという神の思し召しなのか? といっても、信心深くはないので、女性誌編集者で恋愛相談の達人でもある女友達にこの案件を相談してみた。

すると、彼女は私の状況を非常にわかりやすく解説してくれた。

「もともとふたりは進む速度が違う乗り物に乗っていたんだよ。潮は新幹線で、元彼は自転車。でも元彼はスクーターに乗り換えて再び現れたわけだ。もうその変化だけでもすごいことだよ。男の変化の一歩は女からすれば小さいけれど、彼らにとってはとてつもなく大きな一歩なわけで、そこは評価してあげないとね」と。

はぁ。そうだとしても、まだ依然としてすごい速度差があるんですけど……。

「だから新幹線を降りて、東海道本線に乗り換えるくらい、あんたも変わればいいんじゃない?」と。
 
相手を変えようとするのではなく、相手に変化を強要するのでもなく、自分がちょっと変わればいい。さらには、相手に変わろうという意思があり、実際に少しでも変わったと感じるなら、よりを戻してもよいのではないかと。そうか、そうだよね。

「変わってはいけない」という無言の圧力

元サヤ現象を「意志が弱いだけ」「判断力が低下した」と、どこかで蔑んでいた自分を恥じた。元サヤに収まるのは、お互いに微少でも変化して、それを受け入れたということなのだ。もちろん、暴力や借金の癖がある男は「元サヤ、ダメ、ゼッタイ」なのだが、そうした負の性質は一切なかったのだから。
 
初志貫徹、一生変わらないことは素晴らしいと思う。特に日本では、不変の美学が根強い。外見も心根も変わることなく、芯を貫くことが礼賛される。「変わってはいけない」という無言の圧力に、不本意ながら屈している人も多いのではないか。

でもさ、人間変わるよ。変わらない人もいるけれど、変わる人もいるよ。他人が変えようとしても変わらないけれど、自分で変わろうと思ったら変わる。変われる。あるいは見方を変える。角度を変えると、見えてくるものがあるはずだ。

オスとしての魅力は低いが、家庭を運営するには向いている男。責任は背負わないがいつまでも男女の仲を続けられそうな男。自分にとっては一番じゃないけれど、自分を一番に思ってくれる男。別れた男を別の角度から見てみると、意外なメリットが見えてくるかもしれない。たぶん、これは妥協ではない。シフトチェンジとも言える。

「シフトチェンジも決して悪くないよ」

というわけで、元サヤ現象については多少優しい気持ちを持つようになった。否定派ではなく、かといって推進派でもない。容認派といったところか。元サヤに戻ろうか否か迷っている人には、シフトチェンジも決して悪くないよ、と伝えたい。

ちなみに、27歳の女友達に「元サヤについて原稿を書くんだけど、別れた男をどう思うか」と聞いたところ、名言が返ってきたので紹介しておく。

「別れた男は死ねばいい、とまでは思わないけど、うんこ踏めばいいと思ってます」

適量の愛と憎しみを含む、いいさじ加減の言葉だ。心に記しておきたい。

(吉田潮)

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