「産むこと」にメリットって、本当にあるんですか? 第9回

産んでも「いい親」になれる気がしない…そんな私が育児で学んだこと

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産んでも「いい親」になれる気がしない…そんな私が育児で学んだこと

「産むことにメリットって、本当にあるんですか?」
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「編集長、産むことのメリットとデメリットを教えてください」今年で33歳になるワーカホリックなプロデューサーが、ワーママ編集長に詰め寄ったことからスタートした本企画。今回は、私にとって最大の難問、「善行を教えること」について書いてみることにしました。

海野P(左)と私(右)

海野P(左)と私(右)

「王道のメリット」が知りたい

第8回の原稿を書き終えた時点で、「伝えたいことはだいたい伝えちゃったな」と感じた私。自分の中にネタが見つからないので、海野PにSlack(社内で利用しているコミュニケーションツール)で聞いてみました。私は週1しか編集部に顔を出さないパートタイム編集長なので、コミュニケーションはほぼチャットアプリで行われています。

私:「他に何か知りたいことある?」
P:「そうですねー、デメリットはもう十分わかりましたねえ〜」
私:「そりゃそうだよね、デメリットが知りたいって言われて、デメリットを積極的に書いてたからね」
P:「ですよね、じゃあ、今度はメリットが知りたいです!! 育児したら自分が成長できるとか、そういう王道のメリットを普通に知りたいです!!」

第8回まで読んでくださっている方はすでにお気づきのように、この連載は「産むこと」をかなりネガティブに寄せて書いています。

というのも、「産むこと」は今の日本では十分すぎるくらい肯定的に捉えられていて、ポジティブな部分に関してはもはや書く必要がないと思うからです。でも、本当はネガティブな要素だってある。誰も口にしない、その部分を書いてみようというのが、この企画で私が本当にやりたいことでした。

「産んでいない人」がこれをやるとボコボコにされるのが日本の風潮ですが、「産んだ人」が言うならある程度許される。だから、書いてしまおうと。そういう反抗心もちょっと込められているんです。

善行を教えるのは、難しい?

確かに、「産むこと」をめぐるデメリットというか、ネガティブな要素についてはここまで十分に書いてきたのかもしれません。だから「伝えたいことはだいたい伝えちゃったな」と私自身も感じたのでしょう。

ということで、今回は海野Pが求める「王道のメリット」について考えてみたいと思います(でも、手放しにポジティブには書きませんよ)。

そばで見ていて、「こいつはドMなのか……?」と時に不可解に思えるほど成長意欲旺盛な海野Pにとって、「メリット=自分が成長できる」ということ。したがって、最初にこういう問いを立てることにします。

産み育てることで、私は成長したか?

いいえ、成長していません。

でも、「成長しようと努力している」とは言えるかもしれません。

というのも、育児をするなかで私が一番神経を使わざるをえないのが「善行を教えること」だからです。「帰宅したら靴を靴箱に揃えて入れる」「“ありがとう”と言われたら“どういたしまして”と応える」「食事中にタブレットやスマホをいじらない(これはウートピのせいで反面教師を演じる他ありません)」などなど。とにかく、起きているあいだじゅう、あらゆる場面で善行を教えなくてはなりません。

ところが、これが私には大変ハードルが高いのです。

悪行に手を染めてきたとまでは言わずとも、33年の人生をそれほど善く生きてきたとは思えない私。公立育ちですからカトリック系の学校で教育を受けた人に特有の「神様が見ている」という感覚も持ち合わせていませんし、基本が自己チューな性格なので、どこかで人様を軽視するような態度が露見している可能性もあります。

とにかく自然体で振舞っていて、娘にきちんと善行が伝わる自信がないのです。そのため「善行を教えなくては」と神経を使うことになります。

付け焼刃にすぎない私の善行

ちなみに夫は善人です。

毎朝6時に起きて家の門の前からバス停まで近所の掃き掃除をし、カラスや猫がゴミ置き場を荒らしていたらそれを片付け、仏壇に線香をあげて手をあわせ、6時半からラジオ体操に勤しみます。

2017年の東京にもこんな善人が本当に存在します。

当然ながら、彼は息を吸って吐くように娘に善行を教えられます。彼にとっては「娘と一緒に過ごすこと=善行を教えること」なんです。下町気質の近所の人に対する挨拶のしかた、退屈な長話の相槌の打ちかた、ママ友・パパ友との適切な距離の取りかた、失礼のない話の切り上げかた、プレゼントをいただいた時の喜びかた……彼の一挙手一投足がそのまま「善行のお手本」として娘に伝わっていきます。

彼と娘の姿を見るにつけ、自分の教える善行がいかに付け焼刃であるかを思い知らされます。

自分の“悪行”を突きつけられた瞬間

ある時、娘が書斎の机の引き出しから何代か前の古いiPhoneを見つけてきて、耳に当てながら言いました。

「はいっ! はいっ! はいっ!」

それは、保育園の送り迎えの途中で、ガレージに停めた車の中で、夕飯の支度をしながら、「なんで、このクソ忙しい時に!」と殺気立って仕事の電話をしている私のマネでした。娘の発する「はいっ!」の語気には、「要件は???(怒)」「締め切りは???(怒)」「意図は???(怒)」と私の頭の中で渦巻いている怒りの感情が、そのまんま「イヤな感じ」としてあらわれていました。

私はこんなに不快な印象を相手に与えていたのか……。

それは娘が、私の悪行(というか愚行か……)を教えてくれた瞬間でした。

というわけで、2歳の娘と一緒にゼロから善行を積む日々が続いています。人生、最初からやり直しています。まだ成長は見られませんが、成長しようと私なりに努力しています。これで私や娘が善き人になるかどうかはわかりませんが(なんとなく、娘だけは大丈夫な気がしますが)、娘が成人するまでは続ける所存です。

育児に「成長のチャンス」はあるのか?

善行を教えようと努力していて気づくのは、自分がこれまでどれほど「目的(結果)重視」で生きてきたかということです。

つまり、平たくいえば「結果よければ、すべてよし」「目的のためには手段を選ばない」という発想ですね。この発想で生きている限り、人は善行を積もうとは思いません。人に言えないような手段を用いても、結果さえ出せていれば認められるのですから。

対して、「善行を積む」というのは、完全にプロセス重視の発想です。トクなことなど一つもなくても、コツコツと積み重ねるのが善行です。自分にとってのメリットを瞬時に計算できてしまう頭の持ち主としては、この発想の転換は結構キツかったりします。

海野Pからのリクエストに応じて、次回もっと詳しく書こうと思いますが、自分の子どもを見ていると、本当に自分のダメなところ、人間として足らないところが、まざまざとわかります。そして、それに気づいた瞬間、「ただちに改めなくては!」という圧倒的な強制力が働きます。その効力たるや、上司や仕事仲間から注意された時の比ではありません。これほどの強制力を発動してくれるものは、他にないでしょう。

その意味で、育児にはたっぷり成長のチャンスがあると思いますよ、海野P。

(ウートピ編集長・鈴木円香)

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