「産むこと」にメリットって、本当にあるんですか? 第5回

仕事がデキる人は育児に向かない。バリキャリ母がドツボに陥る理由

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仕事がデキる人は育児に向かない。バリキャリ母がドツボに陥る理由

「産むことにメリットって、本当にあるんですか?」
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「編集長、産むことのメリットとデメリットをわかりやすく教えてください」今年で33歳になるワーカホリックなプロデューサーが、ワーママ編集長に詰め寄ったことからスタートした本企画。今回のテーマは、「仕事がデキる人は、育児もデキるのか?」です。

私(左)と海野P(右)

私(左)と海野P(右)

「仕事がデキる」とは、どういうことか?

仕事がデキる人は、育児もデキるのか?

仕事をこなす能力と、育児をこなす能力は、どのくらい重なるのか?

仕事がデキる海野Pは何でも結論から知りたがるタイプなので、今回も結論から先に書いてしまえば、「ほとんど重ならない」「むしろ仕事がデキる人ほど育児で苦しむ」となります。

海野Pは典型的なバリキャリゆえ、ここで彼女の能力を分解させていただくと、次のようになります。

・どんなに難解な話もたちまち万人にわかるように図解してくれる抽象的思考力。
・あらゆることを因数分解して箇条書きにしてくれる論理的思考力。
・チームのGoogleカレンダーを細かくアップデートしてくれる管理能力。
・半年後、1年後、3年後とビジョンを描いてくれるリーダーシップ。
・「すぐやります!」と言えば、本当にすぐにやる実行力。
・終わりそうにない会議も上手に切り上げてくれるタイムキーパー力。
・数え切れないほどのタスクをモレなく進行管理してくれるマネジメント力。
・月末ごとに死ぬほど大変な経理と契約書の処理を淡々とやりとげる事務能力。
・学生時代に空手で養われたという驚異の競争心と粘りづよさ。

と書くと、何やら編集長がプロデューサーにゴマを擂(す)っているように見えるかもしれませんが、まあ、とても仕事がデキる方なんです、海野Pは。これに加えて、あれだけ不摂生しても体調一つ崩さない体力と、毎日午前3時まで深酒しても6時間後にはアルコールを完全に分解してくれる肝臓力を兼ね備えているわけですから、東京のIT企業で働くビジネスパーソンとして、海野Pは大変優れていると言えます。

が、しかし、そうした「仕事力」はまったくプラスに働きません、育児に関しては。むしろ、邪魔にさえなります。どういうことか、すでにホコリを被り始めている2年前の記憶を呼び起こしながら、解説してみましょう。

「育児、向いてないわ」と思いながら過ごした日々

産んでから3ヵ月、私は産んだことを後悔していました。

産んでから1年は、「これ、向いてないわ」と思いながら育児をしていました。

つまり、正直つらかったんです。

思い返せば、生後6日目の娘を連れて病院から自宅に戻った日から、そのつらさの予兆は始まっていました。

新生児は海鳥と爬虫類を足したような、独特な声でしょっちゅう泣きます。ウンチをしても泣く、オシッコをしても泣く、空腹でも泣く、毛布が顔に擦れても泣く、便秘でも泣く、触られていないと泣く、触られていても泣く。

寝ている時以外だいたい常に泣いているのですが、なぜ泣いているのか、私にはまったくわからないのです。ところが、初日から夫は、娘が泣き声をあげるたびに「ウンチだね」「ミルクだね」「眠いんだね」とたちまち原因を突き止めて泣き止ませてしまうのでした。

自分が病院で5日間もべったり過ごしてわからなかったことが、この男には一瞬でわかってしまった……。悔しくて、その知恵を伝授してもらおうとする私。

「どんなふうに泣いたらミルクなの? 短く泣いたら、ウンチ?」

「法則性なんてないよ。ただ、わかるんだよ」

「法則性ないの? いや、なんかあるでしょ?」

「ないと思うけど……」

そう、「物事には何らかの法則性があるはず。その法則性を見つければ物事は効率化できるはず」もうこの思考そのものが、育児に関してはちゃんちゃら間違っているのですが、仕事脳のまま育児に突入してしまった私は、そのおかしさにいっこうに気づく気配がないのでした。

こうして、「17時までに昼寝を切り上げれば20時には寝かしつけが終わる」法則、「尾てい骨のあたりをカイロで温めればウンチが出る」法則などなど、次々に仮説を立てては、「きっと法則性があるはず」と検証を続ける日々。

そして、仮説の検証を少しでも邪魔されると(つまり、夫が18時まで昼寝をさせていたりすると)、頭にきてケンカになるのでした。

「粘りづよさ」は裏目に出る

でも、いっこうに法則性が見つからないんです。

「よし!やっと『20時に200mlの熱めのミルクを一気に飲ませればコテンと寝る』法則を発見した!これは使える!」と勝利を噛みしめたかと思えば、翌日にはあっさり覆される。

それでも、私はなかなか諦めませんでした。「絶対に何か法則性はあるはず……」粘りづよくやれば、きっと何か見つかるはず。努力はいつか報われるはず。

悲しいかな、仕事なら評価される「粘りづよさ」も育児では、往々にして裏目に出ます。育児では「諦めのよさ」「忘れやすさ」「飽きっぽさ」の方がよっぽど重要な素質なのです。

こうして法則性を見つけようとしてドツボにはまった私は、「これ、向いてないわ」と思いながらつらい日々を過ごしていたのでした。

「物事をコントロールする力」は邪魔

はい、今となってはわかりますとも、あの頃の私はたいへん愚かでありました。

海野Pもこれを読んで、「編集長、インテリ風で頭よさそうに見えるけど、結構バカだったんだ」と内心嗤(わら)っていることでしょう。

が、仕事脳で育児をやろうとすると、こうなっちゃうんです。

仕事に必要な能力の大半は、「物事をコントロールする力」が占めています。スケジュール、予算、人間関係、タスク、感情、欲求、自分……いろんなものをモレなく適切にコントロールして目標に近づけていく。しかし、その発想が育児ではかなりの確率で裏目に出ます。まったく役に立たないどころか、邪魔になる場合の方が多いというのが私の実感です。

きっと世の中には仕事も育児も上手にこなせる人はいくらでもいるでしょうから、今回書いた話がどこまで普遍性があるのかわかりませんが、海野Pには日々その仕事ぶりを側で見ている人間として「たぶん、育児に向いてないよ」と、この際はっきり伝えてしまいます。

(ウートピ編集長・鈴木円香)

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