「産むこと」にメリットって、本当にあるんですか? 第3回

「育児経験が仕事に活きる」という幻想 “今できないこと”は産んでもできない

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「育児経験が仕事に活きる」という幻想 “今できないこと”は産んでもできない

「産むことにメリットって、本当にあるんですか?」
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「編集長、産むことのメリットとデメリットを教えてください」今年33歳になるワーカホリックなプロデューサーが、ワーママ編集長に詰め寄ったことからスタートした本企画。第3回のテーマは「育児は仕事の役に立つのか?」です。

私(左)と海野P(右)

私(左)と海野P(右)

産まなくても、「デキる人」はできる

海野Pが落胆することを最初に言ってしまいましょう。

妊娠・出産・育児の経験は、仕事にはそれほど役に立ちません。

確かに、つわりの時期に仕事を続けるのがどれほどしんどいかとか、時短勤務であっても乳幼児を抱えながらフルタイムで働くのがどれほど大変かとか、周囲に対するそういう理解度はかなり上がりました。だから、仕事仲間に妊婦さんやワーママがいれば、自然に気遣ったり、適切にフォローしたりできるようにもなりました。

前回書いたように、常に時間に追われる生活をすることになるので、時間の使いかたも自然と上手になりましたし、集中力もアップしました。

ですが、そういうことは、デキる人は別に産まなくても普通にできるんです。子供がいなくても気遣える人はいるし、何でもテキパキ効率よくこなせる人もいます。逆に、ワーママでも無神経な人はいるし、ちんたら仕事をやる人もいます。

妊娠中に上司から教えられたこと

娘を妊娠した頃、私はある出版社で書籍の編集者をしていました。

妊娠初期だったでしょうか、面談で上司からこんな質問をされました。

「鈴木さんはこれからどんな企画をやっていきたいですか?」

その上司は40歳を過ぎた女性でとても仕事ができる人でした。これまで数え切れないほどのベストセラーを世に出してきた、まさにスター編集者。シングルで出産の経験もない人でしたが、妊娠を伝えた時から出産後に私が退職を決意するまで、彼女の温かく細やかな気づかいには驚かされてばかりでした。

人間としても、社会人としても心から尊敬できる人だったのです。その彼女からの質問に私はこう答えました。

「子供が生まれたら、親に向けた教育ジャンルの企画も手がけてみたいです」

今から思えば、本当に軽はずみな発言だったと思います。思い出すたびに、自分が恥ずかしくなります。上司はほほえみながら次のように続けました。

「鈴木さん、そんなに甘いものじゃないですよ。子供を産んだら、親向けの本が作れるようになるわけじゃないんですよ」

本当にその通りです。ママになったら、ママ向けのコンテンツが作れるようになるなんて、そんな単純な話ではないんです。「ママであること」はマイナスにはならないにしろ、それだけでは十分条件になりません。

センスがあればママでなくても、ヒットするママ向けコンテンツは作れます。反対に、ママであっても、的外れなコンテンツしか作れない人もいます。つまり、コンテンツを作るという意味では、「ママであること」とか、「女性であること」とか、そういう属性よりも、「センスがあること」の方が重要なのです。

「今できないこと」は産んでもできない

よくインタビュー記事で、商品企画などをやっているワーママが、「ママ目線で思いついたアイデアからヒット商品が生まれました」みたいな話をしているのを目にします。

あれは、その方が「ママであること(属性)」に加えてセンスを備えていたがゆえ。その方はきっと、ママという属性を手に入れなくても、ヒット商品を生み出していたはずです。

つまり、私が海野Pに伝えたいのは、「今できないことが、産んだらできるようになる」と考えるのは間違いだってことです。

今できないことは、産んでもできるようにはなりません。むしろ、時間的・物理的制限は確実に増えるので、自分の成長のために費やせる時間とエネルギーは格段に減ります。

人間、そんなに簡単には変わらないんです。子供を一人産んだくらいじゃ、そんなに成長しません。「ちょっと気遣いができるようになる」「ちょっと手早く仕事ができるようになる」っていう程度です。

「結婚したら変わるかも」「子供を産んだら変わるかも」「離婚したら変わるかも」……「◯◯したら変わるかも」っていう誘惑は、女の人生にはつきもの。でも、そんなに変わりはしませんから。今、やれることを全力でやる。それが海野Pにとっても、私にとっても一番大事なことかなって思います。

(ウートピ編集長・鈴木円香)

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