代表の糸数温子さん(27)

代表の糸数温子さん(27)

「女性のキャリア」が叫ばれる一方で、そもそも、キャリアを有していない人がいる現状があります。様々な事情で職歴に「空白」がある、アルバイトの面接に行ってみるも「不採用」が続いてしまう……。そんな人たちも少なくありません。最低賃金が全国一低い(664円・平成25年度)沖縄県で、自宅で簡単に始められる仕事を提供しようと取り組む非営利団体「daimon(ダイモン)」代表の糸数温子さん(27)に「時給1,000円の内職づくり」について伺いました。

フットサル大会でコミュニティづくり

――非営利団体「daimon」の活動内容を教えてください。

糸数温子さん(以下、糸数):「daimon」は、趣味などの共通点を持った人たちを繫ぎ、地域の中に居場所をつくることで、社会的に孤立しないような地域コミュニティづくりを目指しています。現在は、「daimonCUP(ダイモンカップ)」というフットサル大会と夏フェスを合わせたようなイベントの主催を中心に活動しています。前回の来場者は約2,000名。女性のコミュニティを維持させるための仕組みとして開催しており、このイベントがNPOや生活困窮者を支援する団体の接点としても機能しています。

6月に第3回大会を予定していて、フットサル大会の他に、企業ブース、キッズブース、飲食ブース、ママさんDJやダンス・パフォーマンス、サポーターのための大抽選会などの企画が満載です。入場料は無料で、来場者プレゼントも沢山あるので、どなたでも楽しめる内容になっています。昨年度は、女性の「働き方」について考えるために、会場内にITお仕事情報ブースを設け、「ハローワーク」に行かなくても気軽に相談ができるブースが話題になりました。

今回からは、県外への広報活動も始めています。是非、この機会にチームメイトと沖縄に遊びに来て欲しいです。フットサルをしたことがなくても楽しめる内容になっています。観光で遊びに来ている方の来場もお待ちしています。

――女性向けフットサル大会では、かなり規模が大きいと思います。資金の工面はどうされているのですか。また「daimonCUP」を開催して気付いたことがあれば教えてください。

糸数:運営費用は企業からの協賛金がほとんどです。大会趣旨に賛同して頂ける企業と一緒に作っていると感じています。年々、規模が大きくなっていることも企業に面白がって頂けている要因かと思います。

営業回りをしていると、予想通り色々な企業から、仕事したいお母さんはいないかと聞かれるようになってきました。実際に仕事を探しているママさんもいました。そこで、そういったママたちやNPOの方々と企業の皆さんをマッチングさせられる仕組みを作りたいと思いました。

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ママのニーズは家の中でできる仕事

――求人と求職のマッチングは、実際にやってみて上手くいきましたか?

糸数:いざ仕事を紹介してみても、なかなか上手くいきませんでした。想像していたより、稼げなかったのだと考えています。「稼げない」原因となる要素があります。「資格やキャリア」「肉体的な健康」「精神的な健康」の3つです。これらの要素の何かが欠けている人ができる仕事は、稼げない仕事に限定されてしまいます。「賃金の安さ」や「外で働いた経験が乏しいのに、いきなり外で働く」ことに対して、抵抗を感じるママさんも少なくありません。企業側は、フルタイムで働く人材を求めています。しかし、あまり外に出たことがない女性は、自分のペースで働ける環境を望んでいます。企業側とママさんの望んでいる「条件」と「働き方」が違うことに気付きました。

――「外に出たことがないから働けない」というのは、どういうケースですか?

糸数:急に外で働くって難しいことです。そもそも、外に出ることに慣れていないし、仕事をすることに慣れていない。例えば、私の母は今50代ですが、アルバイトの面接に行っても落とされる。母は、そんなに身体が丈夫な方ではないので、続けられる仕事にはかなり制限があります。それでも、生活のことを考えると働かないわけにはいかないので、母に「面接落ち続けてるなら、仕事紹介するよ」と話したところ、「長いこと外に出て働くのは体力的に難しい。家の中でできる仕事はないの?」と言われました。

正直、外に出て働く、ということが1つのゴールだと思っていたので驚きました。しかし、その後、子育て中の友人たちや、仕事で連携している子育て支援団体に話を聞いていくと、このことは私の母だけではなく、産後すぐのママたちやその他色々な事情の女性たちから「家の中でできる仕事」のニーズがあることが分かりました。「daimonCUP」と母の言葉がきっかけで、「内職」集めを始めました。

誰もができる内職から社会復帰へ

――内職の内容と、時給1,000円をどうやって実現しようとしているのかを教えてください。

糸数:今年の3月からスタートしたばかりのサービスで、設計事務所と連携して建築模型のパーツを作る仕事をしています。給料は歩合制です。模型によっては簡単な物もあれば、慣れていないと時間がかかってしまう物もあります。そこで、模型の難易度別に数人の作業時間を計り、時給換算すると1,000円になるように単価を調整しています。もちろん、自分のペースでゆっくりやっても大丈夫です。1番早い人で時給1,000円以上の方もいました。慣れるまでは、どうしても時間がかかってしまうのですが、空き時間を利用してできるので問い合わせは非常に多いです。

――内職の現在の規模と、今後どのように展開していきたいかを教えてください

糸数:現在は、3人働いています。もっと内職の仕事を増やすため、企業に「在宅でできる仕事はありませんか?」と聞いて回っています。この内職だけで生活していくことは難しいと思いますが、そこがスタートになって、ママたちが社会復帰していけたらいいと思います。

(取材・文=GrowAsPeople上原ゆか子)

●糸数温子(いとかず・あつこ)
1986年沖縄県那覇市生まれ。琉球大学大学院修了、修士(教育学)。教育社会学専攻。2007年頃から若者と社会の接点作り、貧困・孤立に抗する地域のコミュニティ作りについて活動を開始。在学中に立ち上げた「ダイモンカップ」という全ての母ちゃんに捧げるフットサル大会の主催を中心に活動の幅を広げている。

一般社団法人GrowAsPeople(グロウアズピープル)
性風俗の顕在化しにくい課題の調査、研究を行うだけでなく、夜の世界に関わる女性へのセカンドキャリア支援を行う。