新しい年が明け、今年はどんな年にしようかと思いを巡らせている人も多いのではないでしょうか。

昨年は、女優の新垣結衣さんが主演したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、火曜午後10時)がヒットしました。“ムズキュン”なストーリー展開、星野源さんが歌う主題歌「恋」に合わせて出演者が踊る「恋ダンス」など話題には事欠きませんでしたが、ヒロインが独身会社員の家事代行として働くという設定も話題になり、家事代行サービス業への関心も高まっています。

同ドラマの家事を監修した家事代行サービス大手「ベアーズ」によると、ドラマの影響で家事代行スタッフへの応募者が1.5倍、東京都内に限っては2.6倍に急増しているといいます。サービスを利用する側の属性も共働きの子育て世代から、ドラマのような独身の男女までさまざまだそう。とは言え、お金を払って家事をアウトソーシングするということに、まだ後ろめたさを感じる人も多いのではないでしょうか。

「2017年は、“家事代行サービスが日本の暮らしの新しいインフラになる元年”になると思います」と意気込むベアーズの高橋ゆき副社長(酉年)に、家事代行サービスを利用するメリットやひとり暮らしならではの活用法などを聞きました。

「実は酉年なんです」と話す家事代行サービス「ベアーズ」の高橋ゆき副社長

「実は酉年なんです」と話す家事代行サービス「ベアーズ」の高橋ゆき副社長

ひとり暮らしやシニア層も。年20%のペースで増える利用者

——現状、ベアーズのサービスはどのような方々が利用されているのでしょうか?

高橋ゆき副社長(以下、高橋):およそ半分が共働きの子育て世代ですね。その中には、これから子どもをもうけようを考えている方々も含みます。あとの半分は、専業主婦のご家庭と、ひとり暮らしの男女、シニアのご夫婦が同じくらいの割合で利用されています。ひとり暮らしの層は男女がちょうど半々ぐらい。ここ4、5年は、だいたいこの属性と比率のまま、前年比20%以上ずつで伸びているという状況です。家事代行サービスがまだあまり知られていない頃は、共働きの子育て世代が8割、9割を占めていたんです。

——4、5年前から利用者層が変化したきっかけというのは…?

高橋:皆さんから理由をうかがっているわけではないのですが、明らかに2011年の東日本大震災のあとから変わったと思います。自分の価値観や働き方、人生について見つめ直し、「どうやって自分の時間を使ったらいいのか?」「 気持ちをどこに注力したらいいのか?」と考えたとき、「自分でなければできないことに、一生懸命集中したい」と思われた人が多かったのではないでしょうか。それ以外のことで気ぜわしさを感じたり、イライラするのはもったいない。その頃から、本当にさまざまな方がご利用くださるようになりました。

「誰か助けて」と言い合える社会づくりのために

——家事代行サービス業を始めようと思われたのは、同サービスを日本社会のインフラにしたいという思いからだとうかがっています。

高橋:1995年から4年間香港の商社に勤めていた時期があり、その間、27歳の時に妊娠しました。出産後もフルタイムで働いて、それなりのプレッシャーや人間関係も抱えているなかで、子どもがすくすくと育ち、夫とは笑顔で過ごせて、自分も身なりを整えて毎日会社に行けたのは、スーザンというフィリピン人のメイドさんがいてくれたおかげなんです。彼女のおかげで“自分でなければできないこと”に全身全霊を注入することができたので、当時の私の育児は本当に毎日が嬉しくて、楽しくて、幸せでした。だから2人目も欲しい、できたら3人目も欲しいって思えたんです。

——現在の日本の状況は、残念ながらまったく違いますね…。

高橋:日本には「子育てって大変で、孤独で、つらいよね」という空気があって、とても残念だと思います。みんなが当時の私がそうであったように、楽しく笑顔で過ごせる社会になれば、日本はもっと変わるはず。そんな思いで18年前、日本に家事代行サービス産業を作りたくて、ベアーズを立ち上げたんです。

古き良き家庭の習慣を継承するには、家事を教わるというのはとても素晴らしいこと。ですから、本当は、家事は自分でやってほしい。でも、人はロボットではありません。詭弁(きべん)を弄するよりも、自分でできないところは「誰か助けて」と言い合える社会をつくる。そのためのサービスが家事代行だと考えています。

働くシングル女性には、1週間2Hプランがお薦め

——家事代行サービスという存在が知られるようになっても、まだまだお金を払って家事をアウトソーシングすることに後ろめたさを感じている人も多いようです。何が壁になっていると感じますか?

高橋:やはり、「きっかけ」と、自分に対する「大義名分」がないというところでしょうか。ベアーズには「おそうじ美人」という体験型のギフトボックス*があるので、この時期、ちょうど自分への“お年玉”として、「もらったんだ」という大義名分を自作自演していただくのもおすすめです(笑)。そうすると楽しく使っていただけますし、一度ご利用いただいた方からは、「喰わず嫌いをせず、もっと早く使ってみればよかった」という感想を多くいただいています。
*1万2,000円(税抜き)で2.5時間分の家事代行または専門のハウスクリ—ニング1ヵ所

——「ウートピ」読者にはひとり暮らしのシングル女性も多いのですが、働く女性に人気のサービスはどんなプランでしょうか?

高橋:「デラックス」という専任制の家事代行のプランが一番人気ですね。働く女性となると、不在の間に家事が進んでいるという状況がありがたいですよね。定期的に同じスタッフが担当させていただくので、安心してお任せできるプランです。

——利用時間やサイクルのおすすめは?

高橋:週に1回、2時間利用していただくと、お部屋の隅々まで1週間単位でキレイにキープされます。その場合の料金は1時間当たり3,900円(税抜き)。ちょっとしたことでも頼めるような信頼関係をスタッフとの間に築いていくためには、週1回2時間がミニマムでもありますし、気軽かなと思います。毎日来てもらう必要はありません。ひとり暮らしですと、洗濯物もそんなに出ませんし、「月2回くらいでいいや」と思われがちなのですが、汚れというのはやっぱり溜まっているものなので、頻度を減らすとそのぶん1回当たりの利用時間が長くなります。

男性のお客さまには、今の時代らしく、「僕と結婚すると家事代行サービスがついてくるぞ! 君は仕事を続けて」と彼女に言ってあげてほしいですね。家事は2人でできるところをやろう、仕事も2人でやろう、だけど互いに「ホントは面倒……」と思っている部分があれは、我々にぽんと流してくれればいいと思っています。

「自分はどう生きたいのか?」を考えるきっかけに

——家事代行サービスは、主に共働き子育て世代の方々が頼むものだという先入観がありましたが、お話をうかがっていると、シングルにとっても「どう暮らしていきたいか」を見つけるサポートになりそうですね。

高橋:世の中、上を見ればキリがないし、「そんな身分じゃない」などと言って、自分と誰かを比較するものでもありません。 30代ぐらいの皆さんには、「自分はどう生きたいのか?」「どう暮らしたいのか?」を考え、自分ができることにどんどん注力して、社会で輝いてほしい。そこで、もし予算が月に2万円しかないとするなら、「その中でベアーズでは何をしてもらえるのか?」と問い合わせいただければ、いくらでもご案内いたします。

最初から「これをお願いしたい」と伝えられるお客さまって、あまりいらっしゃらないんですよ。「なんとなく、今の暮らしのリズムではこの部分が大変なんです」「では、“もし誰かがやってくれたらいいな”と思うものはどれですか?」というお客さまとの会話のなかから、サービスを考えてご提供します。ご要望を的確に把握するためにも、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。

——家事代行サービスへの注目が高まるなか、競合他社も増えています。ベアーズが目指すところは?

高橋:徹底して、人のぬくもりを感じていただけるサービスの提供を続けたいですね。“幸せ”の付加価値と書いた「幸付加価値サービス」にしていきたいと思います。

来年から、国家戦略特区*制度を活用した海外人材の家事代行スタッフ採用も始まりますし、2013年に設立した業界団体「一般社団法人全国家事代行サービス協会」でも、来年春から事業者の安全性を消費者に保証する規格認証制度が始まります。この年末の『逃げ恥』ブームもあり、じわりじわり時代がミートしてきました。2017年は、「家事代行サービスが日本の暮らしの新しいインフラになる元年」になると思います!

*第二次安部政権が進める、規制改革を総合的かつ集中的に推進し、産業の国際競争力の強化、国際的な経済活動の拠点の形成の促進を図る制度

(新田理恵)

高橋ゆき(たかはし・ゆき)株式会社ベアーズ 取締役副社長。 家事代行サービスのパイオニアでありリーディングカンパニー株式会社ベアーズの取締役副社長。 社内では主にブランディング、マーケティング、新サービス開発、人財育成担当。 同社は2012年テレビ東京「カンブリア宮殿」に出演。 個人としても、日本能率協会「経営・マーケティング戦略コース」をはじめとする、各種ビジネススクールのコメンテーターを務める。家事研究家、日本の暮らし方研究家としても、テレビ・雑誌などで幅広働く活躍中。2015年 には世界初の家事大学設立、学長として新たな挑戦をしている。 1男1女の母でもある。

座右の銘は「人生まるごと愛してる」(by高橋ゆき)