「カサンドラ脱出プログラム 第3回」レポート

アスペルガー症候群の人と、ほどよい関係を築くための“解決志向”とは?

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アスペルガー症候群の人と、ほどよい関係を築くための“解決志向”とは?

モデルの栗原類さんや書道家の武田双雲さんがカミングアウトし、多くのメディアが取り上げたことで一気に知名度が上がったアスペルガー症候群*。

*現在は、アスペルガー症候群という診断名は使われておらず、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」という名称に統合されています。

と、同時にアスペルガー症候群のパートナーの女性や妻が、パートナーの不可解な言動に日々直面し、その辛さが周囲にも理解されない中で心身共に消耗してうつ状態に陥る“カサンドラ症候群”についても周知されてきたようです。

カサンドラの人々をサポートしている「アスペルガー・アラウンド」代表のSORAさんには、アスペルガー症候群と診断された夫と子どもがいます。1年前にアスペルガー・アラウンドを発足し5回1セットの“カサンドラ脱出プログラム”を立ち上げ、10月から来年の2月にかけて講座を開催しています。

今回は、12月4日に都内で開催された第3回目の講座「自分を知り、戦略を学ぶ」に参加してきました。

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カサンドラ状態って何?

講座には、参加者のカサンドラ状態に合わせた1から3までのステージがあります。ステージ1は、カサンドラ同士の共感を分かちあう場です。今回のカサンドラ脱出プログラムは、ステージ1をクリアした人のためのステージ3のプログラムです。5回1セットで10月から来年の2月にかけて講座を開催しています。

SORAさんは「サンドラ状態の人は、アスペルガーのパートナーから愛情や帰属感を得られないために、自己喪失感に陥り、自己肯定感を損なっていくのです。結果、無気力になって内向的になっていく場合があります」と説明します。

そのカサンドラ状態から一歩足を踏み出すために必要なのが心をニュートラルな状態に持っていくことで、とくに効果的なのが“毒消しの呪文”を作ることだそうです。

これでいいのだ!  “毒消しの呪文”を作る

SORAさんが紹介してくれた毒消しの呪文は「私の呪文は“これでいいのだ!”です。心で唱えるだけでなく、肩に両手を当てて肩にのしかかる重圧を吹き飛ばすようにパーッと両手を広げながら『これでいいのだ!』と声に出すのが大事です。これはおまじないのようなもので、何かマイナス思考に捕らわれた時に身振り手振りしながら叫ぶことで、心が多少なりともスッと軽くなります」

また、SORAさんがカサンドラ状態にある人に身に付けてもらいたいのは「壊れていないものは直そうとしない」という考え方と言います。

アスペルガー症候群は脳の発達に凸凹があり、社会性や想像力に問題を抱える障害。本人が自発的に治せるものではないのはもちろん、現時点で有効な治療法はない障害なのです。そのためSORAさんは「障害を治そうとしたり、変えようとせずに、上手くいっていることにフォーカスすること」が大事で、それが“解決志向(ソリューション・フォーカス)”と言います。

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原因追求はしない

SORAさんに“解決志向”について具体的にお話を聞きました。

−−アスペルガー・アラウンドにおける解決志向って何でしょうか?

SORAさん(以下、SORA):
人は問題に行き当たるとその原因を追及する方向に志向し、「何が悪いのか」「悪いものをどうすればなくせるか」と思考をめぐらせがちです。

しかし自発的に変わることができないアスペルガー症候群のパートナーとの関係においては、アスペルガーを責めるというやり方は関係性を悪化させるだけです。アスペルガーの方は、周囲の方が思っているより、はるかに自分自身が見えていないので、問題になっていることが分かりません。本人が認識できていないために理不尽な責められ方をされていると感じ逆ギレします。解決志向で活路を見出すことを優先した方がよいわけです。

——相手は変わらないのであれば、自分が変わるしかないと。

SORA:アスペルガー症候群は脆弱(ぜいじゃく)でキャパシティーが狭いのです。関係性が悪化してからでは、立て直しは難しくなります。「上手くいかなかった時は別のことをやってみる」「上手くいったことはもっとやる」という解決志向の発想法で、関係性を良好に保つことが、本人の自覚を促すという次のステップのために大前提になります。カサンドラの脱出にアスペルガー側の歩み寄りや協力は不可欠ですが、アスペルガーが自発的に協力を申し出ることはありません。それを促すのは、常にカサンドラ側であることも覚悟が必要です。

自分はどう生きたいかを優先して

——実際に、どのような解決志向がカサンドラ状態から脱出できるのでしょうか。

SORA:私自身も夫と別居状態していますが、これは夫との関係を成立させるためのベストな状態だから。別居を家庭崩壊と考えず発展的スタイルと考え自分を責めないことです。カサンドラさんは愛情深く、自分を後回しにする傾向の方が多いのですが、相手とセットの自分ではなく、自分はどう生きたいかを優先してよいのです。

——ふだん一緒に生活していくなかではどんな解決志向が活かせますか。

SORA:まず大前提として、相手の性質を知ることです。たとえばアスペルガー症候群特有の感覚過敏があります。味にとても敏感で、他の人から好評のメニューを出しても「しょっぱすぎる! オレを殺す気か」と怒る方もいます。妻からしたらひどい責め方をされたと思いますが、アスペルガー症候群の人からしたら食べられないほどしょっぱいと感じているわけです。

カサンドラ症候群以外の人にも有効

——「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」じゃないですが、なんだか解決志向はカサンドラ症候群とは無関係な人にとっても有効な気がします。

SORA :もちろんです。アスペルガー・アラウンドの解決志向の哲学は、私が ソリューショニストとして、活動の根幹においている考え方です。ソリューショニストとは、解決思考をビジネス領域の組織で実践し、成果を求めていく人達です。解決志向を日本に紹介した第一人者である青木安輝氏のセミナーを私が、受講したことがきっかけになっています。解決志向は、 カサンドラだけでなく、煮詰まった会議の中でも家族間で大事な話をする時でも、どんな関係性においても活かせます。

講座を終えて

カサンドラ症候群という性質を考えると、どうしてもアスペルガー症候群が加害者でカサンドラ側が被害者と考えてしまいがちです。また、カサンドラだけに限らず面倒な人間関係においてはとくに「この人はダメ」と排除したり回避したりしてしまいがちです。しかしその人との人間関係の中で、できる部分を探し続けることが必要なのではないか、と学んだ回でした。

(河合桃子)

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