「辞める。」 episode3

最初から「辞める日」を決めていた がむしゃら女子の仕事論

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最初から「辞める日」を決めていた がむしゃら女子の仕事論

「辞める。」
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現在、転職サービス「DODA」やアルバイト求人情報サービス「an」などを運営する、総合人材サービス会社・インテリジェンスで、『しごとの相談室』のプロデューサーを務める橋本貴代(はしもと・たかよ)さん(29)。

「会社を辞めたい」「今の仕事がしんどい」など、働くことに対して思い悩む人たちを応援する情報メディアのプロデューサーである橋本さんもまた、たくさんの葛藤と向き合いながら、2度の「辞める。」を経験してきた人のひとりです。

最初から「辞める。」ことを決めて入社したというビジネスキャリアの出発点から、2度の転職を経て、今考える橋本さん独自の「辞め論」を伺います。

<橋本さんの「辞める。」ヒストリー>

22歳 web制作会社に新卒入社
26歳 web制作会社を退職。大手人材広告企業に転職。
29歳 大手人材広告企業を退職。(株)インテリジェンスに転職。

タイムリミットは3年。最初から「辞め日」を決めて新卒入社

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「3年は絶対に続ける。そこまでは何があってもやり遂げる」

大学の工学部を卒業した22歳の春、そんな固い決心を胸に、あえて激務で知られる某web制作会社をビジネスキャリアの出発点に選んだ橋本さん。

「もともと自分に自信がない、飽きっぽい、長く続けられるものが見つからない……とコンプレックスが多いタイプの人間なんです。ただ、自分の力で一生食べていけるスキルを身につけたい、という独立願望のようなものは人一倍強かったので、大変さは覚悟の上で『1年で3年分の成長スピード』という社是を掲げる会社を選びました。もともと3年で辞めると決意して入った会社だったので、関われる仕事には何でも関わり、すべて吸収していくという気持ちでがむしゃらに働く毎日でした」

1年目からデザインやコーディングといったweb制作の実務に携わりつつ、全体を指揮統括するディレクション業務を並行。昼夜の区別なく、大手クライアントの案件を何本も掛け持ちながら全力疾走したのち、自身で取り決めた“約束”通り、3年目の3月に会社を退職しました。

1年目が過ぎ、「違う」と感じた2社目の会社

2社目の大手人材広告企業に移ったのは25歳のとき。ゼロベースから新しいサービスを生み出せる事業主側を志望し、転職活動をしました。ここでは、自社の転職サイトの集客を目的としたコンテンツ企画を行う部署に配属されます。

「希望通りコンテンツの企画立案をするところから携わることができ、大きなユーザー視点というものを学べました。ただ、1社目のときは人手が足りないから全部自分でやるしかないという感じだったんですが、ここは組織が大きい分、コンテンツ制作だったら企画を作るところだけ……というように業務が細分化されていました。

入社して1年くらい経ったころでしょうか。このままずっと同じ部署で業務内容となると、自分のスキルの幅や経験値がそれ以上広がらないような気がして、自分の目指したいところとは違うのかなと考えるようになったんです」

「転職」か「起業」か、大きな決断を迫られて

再び転職してステップアップをはかるのか、はたまた起業して事業を一から手がけていくことにチャレンジするのか――橋本さんの心は大きく揺れ動きます。

「心配症なんですよね。自分でお金を生み出したい、世の中に新たな価値やサービスを生み出したいという強い思いはありましたが、一方で独立への不安もあって…。それは自分のスキル不足、経験値不足からくるものなのですが、はたして自分ひとりでやっていけるのか、そこまで踏み切れる勇気が当時はありませんでした」

仕事がしんどい、辞めたいと思う人たちの数はとてつもなく多い

悩んだ末に橋本さんが選んだ道は、新規事業に携わるという夢を会社員の立場で実現できる企業“インテリジェンス”の新規事業部への転職でした。同社の中でも、次の事業の軸となるものを生み出す先進的な部署です。橋本さんは、2016年8月に立ち上がったばかりの『しごとの相談室』に配属されます。

社内スタッフは、プロデューサーである橋本さんとディレクターの2名。営業からコンテンツの企画立案、システムの仕様やアプリの開発など、業務内容は幅広く、現在は仕事の悩みを解決するコラムや新しいワークスタイルを提案するコンテンツなど、ビジネスパーソンがより自分らしく働くためのきっかけやヒントを発信する情報メディアとしての地位を確立させることに力を注いでいます。

「仕事、辛い、辞めたいというネット検索のボリュームがすごいんですよ。仕事=楽しいというものがほぼなくて、『しごとの相談室』はそういう状況にある人たちを何かしらのカタチで救いたいというところから生まれたサービスなんです」

通ってこなければよかった道はひとつもない

橋本さん自身のことを振り返ると、これまでの仕事人生の中で、大変だった、辛かった、逃げ出したいという思いにかられた経験はあるのでしょうか?

「もちろんありますよ(苦笑)。1社目は本当に過酷でしたが、現状の忙しさ、しんどさというネガティブな感情に支配されてしまうと、自分で自分をコントロールできなくなるというか、仕事をやらされている感がつのっていきます。そして、どんどん仕事がつまらなくなっていくんです。だからしんどいときこそ、『私は自分でこの環境を選んでここにいる』と思い直すようにしてきました。

でも案外、大変だったという意識って薄れていくんですよね。私は今まで2回会社を辞めていますが、『ああ、通ってこなければよかった』なんていう道はないんですよ。今やっている仕事は新しいことだらけで、次にどうなっているかわからない……というまったくの手探り状態の中で進んでいるんですが、ふと気づくとこれまでに培った経験は確実に活かされていて。

たとえば1社目で身に着けたプロとしての仕事への責任感、あらゆる仕事に線を引かないというマインド、2社目で学んだユーザー視点の追求……こういったものが今の私になければ、きっとここまでこられなかったと思います」

「辞める。」=自分に似合うものを選んでいくために必要なプロセス

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最後に、橋本さんにとって「会社を辞める。」とは――

「私自身も『辞める』ということに対して、ネガティブな要素がひとつもなかったわけではないです。何か現状に不満があって、『次はこうしたい、こうなりたい』という思いがあるから、辞めるという選択肢が出てくるわけで。

たとえば、ファッションなども自分の好みが年を重ねるごとに変わっていくじゃないですか。それってごく自然なことですよね。そこで働いて2~3年経ち、自分の考えやスキル、経験値も変わってくる中で、最初は自分にぴったりフィットしていると思って入った会社も、徐々にカラーやサイズが似合わなくなってくることがあるのかもしれない。そういう意味で、会社を辞めるというのは、もっと自分に似合うものを選んでいくために必要なプロセスなのかなと思うんです」

(江川知里)

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辞める。

辞めるのは決して逃げでも挫折でもない――。転職が珍しくない世の中になっているものの「辞める」というと、ネガティブなイメージもあることは事実。しかし「辞めた」ということは、新しい世界への一歩を踏み出したということ。一見、キラキラして見える人にも、必ず何かを辞めてきたヒストリーがあります。彼女たちが何を選択し、どんな道を歩んできたのかに迫ります。

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