高齢化社会が進むなか、ますます介護サービスの需要が高まっています。一方、メディアで報じられる介護業界の話題といえば、入居者への虐待や、介護スタッフの待遇の悪さなどネガティブなものばかり。現場で働く介護士の方はどんな思いなのでしょうか?

後編では前編に引き続き、介護職の人材紹介事業「介護のお仕事」(株式会社ウェルクス)協力のもと、介護業界で働く清水さんと田中さんに、介護サービス利用者が気をつけるべきことを伺いました。

利用者と家族のズレが大きい

――介護には利用者のご家族の協力も必要とお聞きしました。やはりご家族の方とのトラブルは多いものなんでしょうか?

田中義望さん(以下、田中):トラブルというか、ご家族の側からの要望と、利用者の方の要望がズレていることはよくあります。

清水翔太さん(以下、清水):僕の勤めている施設では、入居させて以降、面会に来ない家族もいます。それぐらい、いざ身内が介護を受ける段になった時、“どういうところで”“どう暮らしたいのか”を共有できていない家族が多いんです。ですから、ご家族が元気なうちに話し合っていて欲しいですね。僕自分自身もこれまでまったく意識していなかったんですが(笑)。介護士として働いているからこそ、重要さに気づかされました。

田中:特に、「看取り」の部分で意見が食い違うと厳しいですね……。ある末期がんの方は「吸入器」(酸素吸入器)での延命を希望していませんでした。でも、ご家族は延命して欲しい。

結局、ご家族の要望を優先したんですが、本人は意識が朦朧としている状況でも、最後の意識を振り絞って吸引器を外そうとするんです。外されて、またつけての繰り返しで……心苦しかったですね。

ご家族の要望も、介護が進むにつれ変わっていきます。死が近づいてくると、できる限りのことをしてあげたいという願うようになるのでしょう。

田中:利用者本人とご家族の要望のズレは、入居を決めた時点から存在します。本人はデイサービスになんか行きたくない。でもご家族としては日中心配だからとか、服薬の管理のために行かせたい。実のところ、本人より、ご家族の要望が優先されることが多いんです。本人の声が届いていない。それは在宅介護でも同じです。

清水:施設でも、ご家族が利用者の方に嘘をついて入居させていることも多いですね。検査入院と称してそのまま長期間入居させたり。

田中:認知症だからどうせ忘れるだろう、という魂胆もあるようです。でも、認知症になっても、一気に忘れる訳じゃないんです。記憶力が停滞して、だんだんと薄れていく。だから、認知症に対する理解不足もあるのかな、と。

前回、「介護士は勉強すればするほど、できることが増える」と話しましたが、それはご家族にも言えること。介護が必要になってから知るのではなく、あらかじめ学んでおいたり、専門職の人に聞いたりしておくことで、本人とのズレもなく介護を始められるのではないでしょうか。

「エンディングノート」ならぬ「シルバーノート」

――介護する家族がしておいた方がいいことはありますか?

清水:以前「終活」の一環として「エンディングノート」が話題になりましたね。そのもう少し前の段階、いわば「シルバーノート」を作り、介護が必要になったらどうするか?など介護への希望をまとめておくとスムーズになると思います。

田中:「シルバーノート」には、在宅介護がいいのか? それとも施設がいいのか?も記して欲しいですね。僕自身の祖母が認知症で、一人でいると危険なことも多々あります。でも、最近は「いつ火を使ったか」「いつお風呂に入ったか」ということを教えてくれるサービスを利用することで安全に過ごせています。施設に入れなくても、要所要所で見ることができれば、在宅でも介護は可能なんです。

ニュースでは、よく「老後のために何千万円も蓄えがなければいけない」という報道がされますが、選択肢はいくらでもあります。「親が認知症になったら施設に入れる」という方もいらっしゃいますが、いきなり「施設に入る」という究極の選択を選ぶ前に、ご家族でしっかり相談してみてくださいね。

誰しもがいつかは直面しなければならない介護の現実。まさにその時になって後悔しないよう、家族間で腹を割った話をしておくことが鍵と言えそうです。

小泉ちはる