パリジェンヌのオシャレやライフスタイルをつづったイラストエッセイが人気を博しているイラストレーターの米澤よう子さん。4年間、パリに滞在してパリジェンヌを観察し続けたからこそ見えてきた彼女たちの恋愛観をつづります。何かに縛られることをもっとも嫌う彼女たちの生き方から恋愛や人生のヒントが見つかるかも?
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恋人になったらシビアに彼を見る

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前回、アバンチュールは相性をはかるバロメーターのひとつとお伝えしました。パリジェンヌたちが最優先するのは相手との相性。

付き合うまでの段階でフルに働かせた「直感」ですが、恋人同士になったらスイッチが「現実を見る」ほうへ切り替わります。

それまでひとりでしていたあれこれを、2人一緒にします。仕事をする大人のカップルで、自由になる時間は夜と週末。アペリティフ(ディナーの前にお酒を飲みながらするおしゃべり)、夜食(遅い時間に食べる食事)や散歩、ショッピングなどで同じ経験を重ねるのが基本。そうすれば、相手の生活感、価値観、金銭感覚などが透けて見えてきます。

ほかは、行き先を決めた「デート」。だからと言って「アミューズメント施設にでかけ、刺激的なアトラクションで楽しんだ」という話を私は今まで聞いたことがありません。代わりの「刺激的な場所」に当たるのは、たとえば美術館の特別展示。日ごろから、期間限定エクスポやイベントの口コミが多いのも、パリの特徴です。

ふだん見られないものを一緒に見たり、特別な体験を一緒にしたりと、盛り上がりたいという気持ちは日仏一緒。「面白そうだから行ってみよう」というデートのきっかけは、私たちのアミューズメントと同じ感覚だと思います。

“いい男”の条件は…?

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カフェでは、会話の少ないカップルはゼロと言ってもいいくらいに、しゃべっています。内容はささいな「身の回りを報告しあっている」レベルなのが私には不思議ですが、逆に刺激的な話題でないと盛り上がれないのは、相性として違うということだと思います。

美術を生業(なりわい)としている私の目には、(まるで彫刻のような美男の)「イケメン」でもセンスが「おしゃれ」でもなく映る男性とパリジェンヌのカップルは、失礼ながら、不釣り合いに思えることもしばしば! しかし彼女らは恋人を横に誇らしげです。

それは外面でなく、内面を見ているから。おしゃべりが続くのは、互いの自然で会話が成り立ち、退屈しない人。その証拠は、パリジェンヌの表情の豊かさに現れています。彼女側が無理しないでいられ、女性の潜在的魅力を引き立たせるのが上手な男性。それがパリでの“いい男”の条件です。

パリジェンヌが「コケティッシュ」と言われる理由

以下は暮らしてみて実感したことで、私個人の考えです。

男女平等とは言え、どうしても体力的な部分で女性が男性に劣ってしまうのは事実。

荷物を男性が率先して持つ。家族で食べる丸ごとチキンを切り分けられるのが男性ならば、重いワインのフルボトルを持って注ぐのも男性が係。女性への助けを率先する、レディファーストの文化は、理にかなっているとつくづく思いました。

何でも自力でできるつもりで渡仏した私には、苦い思い出があります。重い荷物を持っている私に、当然のように男性が手を差し伸べてくれた際、「大丈夫」と持ち上げ、力自慢したつもりが、「それは悲しい」と引かれてしまいました。

パリジェンヌの様子を見渡すと、(人にもよるけれど)堂々としたふるまいで強い面を見せる一方、か弱さも見せるコントラストがはっきりとしています。いわゆる「ツンデレ」。それは意図的というよりも、女性優先の習慣がもたらすものとも知りました。

恋するパリジェンヌ的コケティッシュさは、世界の女性の憧れ。でも、それは女性だけの努力のみでは完成しない。男性の役割が大きいことを、私はパリで学びました。

レディファーストが100パーセント定着していない日本では、無理があるかも。でもあなたの目で、彼をしっかりチェックしてください。たとえ10パーセントでもパリジャン的レディファーストを持つ人は安心できる上、あなたを引き立ててくれる、最高のパートナーになるに違いありません。

米澤よう子(よねざわ・ようこ)
東京生まれ。女子美術短期大学卒業。大手企業広告のグラフィックデザイナーとして勤務したのち、イラストレーターとして独立。化粧品パッケージや広告キャンペーン、女性ファッション誌、CMなどで多数の女性イラストレーションを手がけたのち渡仏。パリの高級百貨店、LE BON MARCHÉでの個展を開催するなど、パリでの4年間の活動を経て現在に至る。新刊「パリジェンヌのように少ないモノでスッキリ暮らす」(SBクリエイティブ)が好評発売中。 公式ブログ:パリ流ダイアリー(Petit journal de YOKO)