燃え殻さんインタビュー第2回

「今の自分より少しだけ無茶な勝負をしてみる」燃え殻さんインタビュー

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「今の自分より少しだけ無茶な勝負をしてみる」燃え殻さんインタビュー

ツイッターで約8万人のフォロワーがいる燃え殻さん(43)。テレビの美術制作という“一般人”ながら、“140字”のつぶやきが多くの人の心をつかみ、共感を呼んでいます。今年になってウェブサイト『cakes』で連載された小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』も話題になり、ついに来年には新潮社から書籍化することも決定しました。

“140字の世界”からはみ出しつつある燃え殻さんとはどんな人なのか? 3回にわたり燃え殻さんにお話を伺います。

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変形した気持ちは戻らなかった

ーー前回おっしゃっていた「生きづらさ」って具体的にいうと何なんでしょうか?

燃え殻:小学校低学年の時に、脱毛症のひどいのにかかったんです。原因はわからないんですけど、髪の毛も眉毛もまつ毛も一時はほとんど抜けて。学校の行き帰りに、知らない大人が寄ってきて「なんの病気?」とか言われたり。その時に「生きてて申し訳ないなぁ」って気持ちになることが毎日のようにあって。その記憶の一つ一つが世間ってものに接する時の自分の中のベースにあるんです。

数年で、ほぼ髪の毛は生えてきたんですが、変形した気持ちは戻らなくて。自分ってものを少しずつ認めてもらったり、慣れてもらうしかないなって気持ちが抜けずに生きてきました。社会に出ても、同じ場所で少しずつ居場所を作っていって、結果を積み上げていかないと弾き出されるっていう強迫観念にかられてしまって。ほんと最近です、世の中に対して余計な力が入らなくなってきたのは。

世の中のルールがやっとわかりかけてきた

ーー「余計な力」ですか。

燃え殻:同じ仕事場に21年いて、馴染みの場所と仲間を作ることができて、とりあえず自分が立ち上げた新規事業も軌道に乗って、『cakes』で連載した小説も自分にとってはめちゃくちゃ多くの人が読んでくれて、「よい」「悪い」の感想をいただけた。

やっと「そこにいてよし!」って言われた気がしてホッとできました。するとだんだん余計な力が抜けて物事がスムーズに進むようになってきて「あぁこんなもんかなぁ」って。だから申し訳ないけど、今が一番楽しいです。

世の中のルールがやっとわかりかけてきたというか。力を入れて作ったものがあっさりスルーされたり、ヤバイなぁと思いながら臨んだのに自分以外だれもヤバイなんて思ってなかったり。すごいと思って見ていた人に会ってみたらそうでもなかったとか、あこがれていた人と仕事をしてみたらスーッと冷めてく自分がいる、みたいな。あぁ、自分が思ってるよりも全体的にそんなじゃねえなぁって思えて……て、なんの話だったかまったく見失ってるんですが大丈夫ですか? これ……。

どこにいるかわからなくて迷子だから嘆いてる

ーー大丈夫です。生きづらい人が生きるために何が必要だと思いますか?

燃え殻:「これだ!」とか言われた瞬間にシャッター閉じたくなる派なんで、人にも「これだ!」とは言いたくないです。個人的に思うことは「これをやってみたい!」と、こちらから他人に懇願した場合、だいたい“予算”つけてくれないんですよ。別に技術があるわけでも、やりたいことが革新的なわけでもないという状態なら、自分としては信用を勝ち取るまで同じ場所でがんばることぐらいしか選択肢は思いつかなかった。

「で、お前なにしたいの?」って言ってもらえるまでとりあえず一生懸命がんばろうぐらいの話で。その時まで、温めておこう、磨いておこうぐらいの持久戦でした。本番がいつかなんて、自分で日程は組めなかったので。

今の自分より少しだけ無茶な勝負をしてみる、しつづけてみると嫌でも社会で自分が「X軸」「Y軸」でどこにいるかわかってくるとは思うんです。「あ、自分はここには求めらているけれど、ここは箸にも棒にもかからないんだなぁ」とか。自分の領域というか可動域がわからないで夢語ったり、絶望しても的外れで時間がもったいないと個人的には感じていて。大体の場合、夢が叶わなくて嘆いているんじゃなくて、自分が今どこにいるかわからなくて迷子だから嘆いているって時期があったんで。

ーーわかります。迷子のひと、きっとたくさんいますよ。

燃え殻:「今ココ」がわかったら「じゃあ南に行ってみよう」みたいな大胆になれるじゃないですか。どこにいるかわからない時は、一歩踏み出したら崖かもしれないと思って、なかなかその一歩が踏み出せないけれど、崖なんて先にはなくて、後ろから迫ってくるものだと気づいてからは常に行動するようになりました。結果は他人が絡むので、「絶対」はないですけど。

年齢は「人を驚かす」ためにある?

ーー40代、50代と、もっと楽しいことが待っているかもしれないですね。

燃え殻:この前、とっても聡明な女性と飲んだんですよ。彼女は、その場にいたまわりの人たち全員を魅了していて。そしたら彼女が「でもやんなっちゃう私、81歳よ」って最後に言ったんです。すごくびっくりしました。年齢が何のためにあるのか?って聞かれたら、人を驚かせるためにあるんじゃないかって思うんです。

「40歳だからこうしなきゃ」とか「50歳なんだから」とか誰がいつ決めたんでしたっけ? 年齢なんて酒の肴で余興みたいなもんでいいと思うんですけど。そういうふうに歳を重ねると、もちろん肉体的な稼働率は低くなるけれど、人間関係や行動範囲は広がる気がします。全然それで補(おぎな)えますよ、きっと。

調子が出てきたのは40年ぶり

ーー20歳の頃の自分に声をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?

燃え殻:なんだろう、ノイローゼ気味の童貞になんて声をかける言葉もないですが(笑)「いくらなんでもそのエロ本の量は、それ多すぎだろ?」かなぁ(笑)……じゃなくて「お前の予想に反して将来明るいよ」かなぁ。40代の自分が楽しいなんて若い頃は絶対想像しなかった現実なんで。だから、「お前が馬鹿みたいに悩んで試行錯誤して失敗しまくって行動してくれたおかげで今楽しいわ」って言ってあげたいですね。

それと同じように、50歳、60歳の僕からしたら、今の自分が七転八倒して試行錯誤しなきゃ「悪いけど、今の俺の方が楽しいぜ」って言えないと思うんです。だから今、むやみやたらにがんばらなきゃなぁと思ってるんです。最近やっと調子出てきたんで。まわりが結構わがまま聞いてくれる3歳のとき以来ですから40年ぶりです、調子が戻ってきたの(笑)

次回は12月21日更新予定です。(聞き手:編集部・堀池沙知子、カメラマン:竹内洋平)

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